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シリアル番号 表題 日付

1075

社会心理学実験

2006/10/03

北海道大学山岸俊男教授の社会心理学実験の成果。

日本人は集団主義的で、米国人は個人主義的だという常識は間違っている。人工的な環境の実験室でひとがどう行動するかを比較すると、米国人の方が集団に協力的で、日本人の方が一匹オオカミ的に行動する傾向がつよい。つまり日本人は集団志向な「心の性質」をもともと持っているわけではない。相互監視、規制、しがらみや圧力といった「社会の仕組み」に促されて、そう行動しているにすぎない。監視も圧力もない実験室の環境が、そのことを明るみにだした。

おなじく「思いやりの心が失われたから、いじめがはびこる」という常識も間違っている。ある子がいじめをやめさせようと立ち上がった。ところが、加勢する同級生はいなかった。彼は返り討ちにあい、いじめはさらに続いた・・こんな結果を招くなら、彼としては見ぬふりをするか、いっそいじめに加担する方が合理的な行動ということになる。かくして教室は「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という行動原理に左右される。人の心というミクロ構造は社会というマクロ構造と連動し、循環している。思いやりを持てと説教しても無意味。いじめはよくないと思っている子は実は少なくない。その認識を教室のみんなで共有することが大切。

警察は手を抜かずにことに当たる。そんな基本的な信頼が、住民を地域の秩序を守る自発的行動に向かわせる。その結果、すべて警察にお任せの監視社会化が、かえって避けられるという好循環を生む。

朝日新聞根本清樹編集委員


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