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シリアル番号 表題 日付

1070

アスピリンジレンマ

2006/08/27

アスピリンは現在は解熱鎮痛剤としてより血栓予防剤としてのほうが重要視されている。

●解熱メカニズム:体内での発熱は感染、組織破壊、炎症などの病的状態の結果として起きる。この時プロスタグランジン(prostaglandin; PG)の一種であるPGE2の生合成が視床下部内で促進され、PGE2がcyclicAMPに媒介される過程を活性化して体温が上昇する。アスピリンはPGE2の鍵生合成酵素であるシクロオキシナーゼ(cyclooxygenase)を阻害することで解熱作用を示す。

●鎮痛メカニズム:プロスタグランジンは機械的あるいは化学的刺激に対する疼痛受容体を感作させる働きがある。アスピリンはこのプロスタグランジンの生合成阻害をする。

●抗血栓メカニズム:アスピリンは血小板の作用を抑制して血栓の生成を抑制して心筋梗塞および脳梗塞再発予防を行う。血栓防止はアスピリンの少量投与でもっとも効率よく抑制され、大量投与ではむしろその効果は減弱する。これはいわゆる”アスピリンジレンマ”と呼ばれるものである。ただ止血という観点で注意を要する。外科手術や歯科での抜歯を受ける場合は、直ちにアスピリンの服用をとめる必要がある。アスピリンによるシクロオキシゲナーゼの阻害作用は非可逆的であるので服用をとめてもすぐにアスピリンの作用から抜け出ることはできず、新たに生成する血小板で置き換えられるまで待たねばならない。一般に、その期間は9日とされているので、出血を伴う手術を受ける場合、アスピリンの服用停止から9日以上待たねばならないことになる。

●具体的医薬品:解熱鎮痛薬としてアスピリンを服用する場合、一日最大で2〜3gであり、その錠剤も250〜330mgと用量が大きい。しかし、抗血栓薬としては1日80〜160mgが適当とされるので、解熱鎮痛薬用の錠剤は服用できない。抗血小板薬「バファリン81mg錠」が発売されている。


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