読書録

シリアル番号 981

書名

暴走する資本主義

著者

ロバート・B・ライシュ

出版社

東洋経済新報社

ジャンル

経済学

発行日

2008/6/26第1刷
2008/9/12第5刷

購入日

2008/9/16

評価

原題:Supercapitalism  The Transformation of Business, Democracy, and Everyday Life by Robert B. Reich

カリフォルニア大学バークレー校のロバート・B・ライシュ教授はクリントン政権の労働長官を務め、現在はバラク・オバマ民主党大統領候補のブレーンの一人。

村上龍がこれを読んで「この数年間に読んだ経済本の中で一二を争う圧倒的な面白さでした。ライシュは、歴史的事実のディテールを積み上げることで自説を展開するという緻密な方法をとっています。説得力が抜群だと思いました。たとえば、どうやってグローバル化は始まったのか。ライシュによれば、その重要な要因の一つは鋼鉄製コンテナです。コンテナの開発・普及はベトナム戦争によって本格化します。当時の米軍は東南アジアのジャングルでの戦闘用に膨大な物資を運ぶ必要に駆られていました。従来は木箱を使っていたそうですが、小さい上に耐久性もなく、なにより積み荷の出し入れが非効率でした。アメリカ海軍はカムラン湾にコンテナ港を建設し、自国の港湾もコンテナ輸送に対応できるように改造しました。港の水深を深くし特別設計のクレーンと巨大な積み出しデッキを設置したのです。コンテナによる物資輸送は、結果的に、日本からアメリカへの輸出を急増させることになります。アジアから空のコンテナをアメリカに戻すより、途中日本に立ち寄って時計や家電、それに台所用品などを積み込んで帰る方が合理的だったからです。1967年には日本とアメリカを結ぶコンテナサービスは存在しませんでしたが、1年後には7社がそのビジネスに参入しました。コンテナ貿易はそうやって開始され、2005年には3,500隻の貨物船が太平洋を行き来し1,500万個のコンテナが運ばれました。グローバル化はイデオロギーによって引き起こされたわけではなく、冷戦時に開発された輸送・通信技術の数々が、地球上を行き来する人と金とモノのコストを劇的に引き下げたことで起こったのだと、よくわかりました」と彼が主催するJMM [Japan Mail Media] No.497 Monday Editionに書いている。

これを読んで、コンテナ輸送の起源を初めて理解したし、日本の製造業がアメリカ市場を席捲した理由がわかった。読んで見る価値はありそう。ネットで書評を見ると評価は非常に高い。藤沢の書店に行って購入。

「1970年以降、資本主義が暴走して超資本主義になった。この結果、消費者と投資家は強くなったが公共の利益を追求する市民とか労働者としての力はほとんど失われた。労働組合も監督官庁の力も弱くなり、民主主義は危機に瀕している」というのが趣旨。

解決策はまことに意外で企業は法的擬制であり人でない法人資格を剥奪すべきである。税金は人間だけが支払うべきである。法人税は撤廃する。代わりに配当を受け取った個人が所得税として支払う。現に株主配当は法人課税所得から控除されないのに、債務の支払い金利は控除されるから配当するより利益を保留して別の企業を買収したり、発行済み株式を買い戻したりしている。利益の再投資先を数人の企業経営者が決めるより株主に任せたほうが賢い選択をするはずである。また株主が税負担するほうが累進税率が生きて金の社会的再配分がより公平になる。MITのレスターサローはこの企業が所得を保留するかまたは配当するするかにかかわらず、企業が収益全体についてまとめて株主個人がそれぞれの課税率にしたがて支払うべき所得税を源泉徴収するという案を提案している。同じように企業には刑事責任を問わない。あくまで企業内で犯罪にかかわった個人だけが刑事責任を負う。米国企業の研究に政府補助金をだすことも筋が通らなくなる。政府の目標は米国人の競争力を強化するために税金を使うべきである。


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