読書録

シリアル番号 979

書名

下山事件

著者

森達也

出版社

新潮社

ジャンル

ノンフィクション

発行日

2004/2/20発行
2004/6/5第8刷

購入日

2008/9/7

評価

息子の蔵書。

前から積んでおいたが、2年がかりの論文グローバル・ヒーティングの黙示録の改定に一応区切りがついたので読み始める。読み始めたら止まらない。 一気に読破した。

著者はオーム真理教を取材して「A」というテレビを製作した独立のテレビディレクターでセンセーショナルではなく、本質を捉えようとして調査し、書いている。

戦後、マッカーサー進駐軍の主導権をにぎったニューディール派将校群がそだてた左翼政権をつぶし、吉田茂を政権につけるべく、ウィロビーが謀略組織としてキャノン機関を設立した。このキャノンに協力して下山事件、松川事件、三鷹事件など一連の偽装左翼テロに絡んだのではないかと目されたこともあるのが元特務機関員の矢板玄である。矢板玄は栃木県矢板の名家の出身。この矢板玄の後ろ盾となったのが昭和電工や昭和火薬など森コンツェルンの創設者の森矗昶(のぶてる)と書いてある。

森コンツェルンは戦後の財閥解体で解散。系列企業のうち、昭和電工のみが存続している。しかし森一族は今でも健在で華麗なる係累を政財界と皇室に張り巡らせている。

下山事件、松川事件、三鷹事件を引き起こしたのはだれかは特定できないが、この一連の偽装テロは左翼がしたものと思い込まされた日本国民の意識を右にまげることができた。そして日本の今があり、親米を国是とする日本がある。この日本国民の心を左から右に変えたことを著者は「スタンピード現象」と分析している。 このスタンピード現象が生じるのは共同体への帰属意識が強い場合だという。


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