読書録

シリアル番号 815

書名

著者

沢木耕太郎

出版社

新潮社

ジャンル

小説

発行日

2005/9/30

購入日

2006/11/26

評価

Y夫妻蔵書

ノンフィクション小説。

世界でも第一級の登山家、山野井夫妻がヒマラヤのチョモランマの隣にある8,000mに一寸欠けるギャチュンカン(Gyachung Kang 7,922m)に挑み、その東北壁を世界初でアタック にでかけるが、岩盤が逆層のため断念、北壁を世界で2度目に挑戦。雪崩で中吊りになった妻の頭上で生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とは・・・

途中の1ヶ月に15冊を読んだため、まだ未読。スキポールから成田に飛ぶKLMの機中で読むが、7,000mの岩棚も無いところで日本のロープに人で座ってビバークする場面など機体がグラッとする ととても読み続けられたものではない。

カトマンズのコスモトレック(社長大津二三子)という旅行代理店 に中国のビザ取得、カトマンズからチベット国境への送迎、ネパールまでの航空運賃、コック兼チベット語通訳1人の50日間の賃金、チベット山岳会への支払い、食料と燃料 の調達を依頼し2人で150万円を支払う。

バンコク経由、タイ航空でカトマンズ入り。持ってゆく荷物は3人分で300kg。カトマンズの標高1,300m。チベットとの国境の町コダリ、ここで谷にかかる国境の橋を歩いて渡り。チベット 山岳会の四駆で国境の町ザンムーにむかう。 ネパール(尼泊爾)とチベットのラサを結ぶ国際道路、中尼公路でニェラム(ニラム3,700m)に向かう。ローカルタイムは中央集権国家の中国らしく北京標準時とおなじ。ヤルレ・シュンラ峠(5,100m)からエベレストから流れてくるロンブク氷河とギャチュンカン氷河の合流点 に車で移動。ここからからギャチュンカン氷河の脇をヤクで遡行する。荷物を運ぶヤクを待つ間、高度順化の登山を行う。ヤクは一人につき3頭。

帰国してからようやく読破した。雪崩で中吊りになった妻の頭上で生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とはどのようなものだったのかここでバラシテしまってはまずい のだろうが、借りた本なので要旨を記録する。

声をかけても妻の妙子は死んでいるかどうかわからない。死んでいてもロープを切れない。ロープを切ったら自分も懸垂下降できなくなったしまう。残された方策は唯一つ、別のスリングを使ってロープと支点を結ぶ。そしてロープを自分とちかいところで切断し、妙子の体重を支点に移した。そして妙子のところまで降りて生死を確かめ、死んでいたらロープと妙子の死体を切り離して、ロープを回収し、もう一度支点まで登り直してローブ2本で懸垂下降するという手順だ。

一方50m程落ちて中釣りになった妻の妙子の方はロープが岩にすれて切れそうになっていることを夫に伝えることができない。やむを得ず振り子のように体を振って2メートル程右手の70度程の雪の壁にバイルとピッケルを叩き込み、左足を移して切れそうになったロープをカラビナからはずすことに成功したのである。このため、喜んだ松野井はロープを支点にのこしたままダブルアックスで妙子のところに降りてくるというヘマをしてしまった。まだ懸垂下降しなければならないのだ。やむを得ず50m登り直してロープを回収しなければならなかった。

この後も擦り切れそうになった部分を使わないで2本のロープを回収しつつ懸垂下降し、7,000mの岩棚も無いところで日本のロープに人で座ってビバークするなどの苦難が続くのである。

とに兎に角、一つ手順を間違えば一環の終わりになる手順をただしく決断し、間違えずにやりとおす冷静さと、無論体力がなければできないことだ。そのために発達した脳と平衡感覚と筋肉と循環系が備わっていなければ出来ないことで一般人には無理。

二人は無事生還するが手足の指を殆ど失った。


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