読書録

シリアル番号 750

書名

社交する人間 ホモ・ソシアビリス

著者

山崎正和

出版社

中央公論新社

ジャンル

社会学

発行日

2003/4/10初版
2005/4/10第3版

購入日

2006/1/31

評価

妻の蔵書

横帯の「グローバル化によって衰退する組織原理。国家や企業をはなれ、茫漠として「地球社会」の中に曝される現代人に、はたして心の居場所はあるのか」に目を止めて読み始める。

1997年シカゴで開催されたプロジェクトマネジメントの年次大会で、基調講演者が「これから国際社会はグローバリゼーションにより国境が希薄になる。そして中世のように北京、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリなどが都市国家のように点在することになろう」と予言した言葉と重なったためである。

第一章から「意識は最初の決意の瞬間にだけ能動的に働き、あとは慣性に乗せられてうわ滑りして行く。そして意識がこのように時間の上を上滑りし、何ものかにさらわれて行く状態こそ、人が感情に身を任せるということにほかならない」などと分かったことを別の表現で言われるとなるほどともう一度確認する作業が延々と続く。

「社交とは本来、いっさいの清教徒的な禁欲とは無縁の営みである」とか「社交はあらゆる道徳的な命令に対して中立的であり、むしろ倫理への反抗を内側から逆転させて野蛮を防ぐ奸智だ」ともいえると。

第二章入ると ゲオルグ・ジンメルが1917年に書いた「社会学の根本問題」で展開したコケットリー理論を「こうして生まれた社交世界のなかに生きると、人間はさまざまな幸福に恵まれることになる。功利的な目的や信条にもとづく衝動から解放されて、人々はおのずから中和された穏やかな感情に包まれる。個人が集団を自分の手段にしたり、逆に個人が集団の手段にされたりする関係からも解放され。他人を手段化する目的がなくなり、集まることそれ自体が目的になった以上、そこでは人々は互いに利用価値がないという意味で平等になる。一人一人が尊厳と自由を回復し、自分自身の主人となって対等に他人と協調することができるであろう」と紹介する。

そして「学問とは知るという活動が内容を失い、その形式だけが独立した姿だと見ることができる」とか「芸術はまさに内容と形式の意味を逆転し、形式を独立させた時に誕生する」という ジンメルの言葉を紹介している。けだし名言。

第三章は「工業以前の社会では人間は自然をあいてに働き、工業社会では機械をあいてに働き、ポスト工業社会では人間は人間を相手に働く」というダニエル・ベルの言葉を紹介して始まる。


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