読書録

シリアル番号 707

書名

マンハッタンの怪人

著者

フレデリック・フォーサイス

出版社

角川書店

ジャンル

小説

発行日

2000/2/25初版

購入日

評価

2005/7/9

The Phantom of Manhattan by Frederick Forsyth

妻の友人の推薦。藤沢市民病院図書室蔵。

作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーの名作「オペラ座の怪人」の原作はガストン・ルルーの手になるものである。しかし原作は粗雑な作で読者は虚実のハザマでなやむことになる。アンドリュー・ロイド・ウェバーはストーリーの粗雑な部分を削除して優れた音楽の効果もあって成功をおさめた。

しかしガストン・ルルーが実際に流布されていたパリのオペラ座にまつわる怪談にインスピレーションを得て原作をものにしたことは事実である。

1875年ナポレオンIII世が当時のオペラ座にオペラを見に行ってオルシーニというテロリストに爆弾を投げられ急死に一生を得たことが契機となり、もっと立派なオペラ座を作れとの命令を発した。設計を公募して選ばれたのがシャルル・ガルニエであった。

ガルニエが工事を始めると、地下水脈があることが発見されたが、都市計画の専門家バロン・オスマンは場所を変えることはしなかった。そこでガルニエは巨大な蒸気ポンプで排水しながら工事を続行した。戦争で中断することはあってもオルシーニが爆弾を投げてから17年後に完成した。だが防水工事も空しく地下最下層の7階は水没し、地底湖を形成し 、今に至っている。いまでも定期的に地底湖の水位を下げて基礎の健全性は点検しているとのことだ。

ガルニエのオペラ座

ガストン・ルルーは1910年にここを訪問し、色々の噂を耳にして想像力を飛躍させたのである。地底湖はフィクションと思っていたが、地底湖こそ「オペラ座の怪人」のお話の発端であったわけだ。

さて本「マンハッタンの怪人」はアンドリュー・ロイド・ウェバーが「オペラ座の怪人」のその後として発想し、フレデリック・フォーサイスが完成させたものである。

パリのオペラ座を追われた怪人が監督アントワネット・ジリーの助けでニューヨークに渡り、13年後に大成功してマンハッタンに新しいオペラ座を建設する。アントワネット・ジリーが臨終の間際にプリマのクリスティーヌ・ド・シャニーとその夫ラウル・ド・シャニー子爵の秘密の関係を怪人に伝えたことから怪人がおぞましくも甘美な過去へと引き戻され、運命の輪は大円団に向かってゆっくりと回り始めるというその後の話である。

フレデリック・フォーサイス作「ジャッカルの日」、「オデッサ・ファイル」を愛読した。とくに「オデッサ・ファイル」は「セブンマイル・ビーチ・ファイル」のネーミングのヒントにさせてもらったものである。


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