読書録

シリアル番号 702

書名

日露戦争史

著者

横手慎二

出版社

中央公論新社

ジャンル

歴史

発行日

2005/4/25発行

購入日

2005/6/19

評価

まえじま氏の推奨で読む

鎌倉図書館蔵

公的文書を直接引用して書いているので信頼度の高い歴史書である。司馬遼太郎の「坂の上の雲」では描かれなかた全貌をしることができる。

二国間には「セキュリティ・ジレンマ」(Pradox Serial No.32)が存在するため、日露戦争に至った。セキュリティ・ジレンマがある場合は多国関係を上手く構築して安定を維持する工夫が必要。このような仕組みを構築するにはその必要性を理解する国民教育が重要となるのではないかと思った。

この本は今まで読んだ日露戦争史の中では推測がすくなく、ロシア側のスヴェーチンの著作も渉猟して事実をならべて全貌を俯瞰しているため、全体像をつかむことができる。外交・軍事がバランスよく機能し、 ロシアは帝政で内部はバラバラ、勝つべくして勝ったということが理解できる。特にアジア近隣諸国と欧米強国との同盟関係の構築は見事である。

太平洋戦争後、日本はソ連が北方領土を不法に占拠したというが、日露戦争の停戦後、休戦協定にロシアが同意しないことをいいことに、樺太全土を占領し、停戦協定で半分割譲させた歴史をみればおあいこという感じがする。

この戦争は第一次世界大戦に先駆ける、双方合わせて200万人以上の兵力を動員した巨大戦争であった。結果ロシア帝政は崩壊し、日本指導部は勝ったがゆえにこの戦争から学ばず、「愚昧な民」に政治をゆだねてはならないとし地位のたかまった軍部は山県を筆頭に民主化を押さえ込んだ。こうして独善的になった日本指導部は日華事変から太平洋戦争 に突入し、間違った同盟関係を結び、負けるべくして負けたのだ。


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