読書録

シリアル番号 509

書名

世界を不幸にしたグローバリズムの正体

著者

ジョセフ・E・スティングリッツ

出版社

徳間書店

ジャンル

経済学

発行日

2002/5/31第1刷
2002/6/20第2刷

購入日

2002/06/30

評価

原題:Globalization and its Discontents by Joseph E. Stinglitz

朝日の書評欄で山形浩生の書評が刺激的だったため求める。

グリーンウッド氏が評価している山形浩生が酷評した巻末の某エコノミストが誰かというのも買った興味の一つ。その人とはリチャード・クーであった。たしかにリチャード・クーの自慢話は鼻につくが、スティングリッツの論法を借りて小泉政権批判しているわけだ。ひょっとして山形浩生は慶応竹中平蔵の弟子と思ったが、実は東大卒であった。山形浩生もクル−グマンもリチャード・クーも景気対策優先論者で同じであるが、山形浩生もクル−グマンも金融政策、緊縮財政派であるところが意見を異にするためであろうか。

スティングリッツの主張を始めて知ったのはシアトルの首脳会議でグローバリゼーション反対の運動が荒れた後の1999/12/9にRonが送ってくれたJAMES FLANIGANの記事が初めてだった。

スティングリッツはノーベル経済学賞を受賞した学者であるが、世銀のチーフエコノミストで副総裁を務めた実務経験豊かな人である。IMF,米国財務省の官僚が繰り出す政策がアジアの経済危機、ロシアの自由化失敗、中南米、アフリカの混迷に直接責任があるとはげしく告発している。世銀でのインサイダー情報を駆使し、最新の経済理論を駆使してIMF,米国財務省が信じている経済理論は間違っていると説明する。IMFに従わなかった、マレーシア、中国、韓国が好調なのに、IMFに従順だった、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、インドネシア、タイ、ソ連、アフリカ諸国の経済は破壊さて、貧富の差も大きい。世界の経済を救うためとケインズが提唱した世銀とIMFという2つの官僚機構のうち、IMFがなぜおかしくなったかは説明責任をもっていない官僚組織は独善に陥るためだとしている。米国財務省はむろん米国民に説明責任をもつが、この巨大な官僚機構はその米国民への説明責任を果たさず、ウォール街の利益を代表していると告発している。すなわち米国財務省がクローニーキャピタリズムに堕落していると。IMF、財務省で成功した人例えばロバート・ルービン財務長官はシティーグループの会長に、IMFの副専務理事のスタンリー・フィッシャーは副会長になったように金融界のトップに迎えられるので、自ずと共通の利害が生じやすいということ。商務省もダンピング査定を乱発する不公正な公正取引法を引っさげて生産性でおとる国内産業を保護して米国民の利益を損ねていると告発している。

世銀もIMFもケインズがブレトンウッズで提唱してできたものだが、時の流れとともに一部利害集団の奴隷となってしまった。カムドウシュが腕組みをしている写真が有名になったが、IMFの体質を顕していたわけだ。

この本では当然日本についてはふれていないが、小泉改革は危険ではないか?我々もIMF流のあやまてるというより金融界の利益を代弁する者のレトリックにはまってしまっているのではないかという疑念がフツフツと湧いてくる。


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