読書録

シリアル番号 428

書名

日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク

著者

赤池学、江本央、金谷年展

出版社

TBSブリタニカ

ジャンル

建築学

発行日

1999/7/8初版

購入日

1999/07/01

評価

1970年代のオイルショック後、コンクリート造りの建物にも断熱材を用いて省エネルギーすることになった。

欧米では科学者を総動員して研究し、コンクリート壁外面に断熱材をつけることにした。冬季にコンクリート温度が下がらず、コンクリート内で水分の露 点にならないため、カビ、ダニが発生しない。また厚いコンクリートが水分移動抵抗を持っているため、外壁の断熱ガラス繊維層に露点は充分下がり、結露は生 じない。さらにコンクリートが蓄熱効果を持っているので就寝前暖房を止めても朝まで暖気が残り快適。ヨーロッバのレンガ壁に組み込んだ暖炉もそうである が、壁が畜熱体となり夜間室温変化が少なく、クオリティーオブライフが向上する。夏の冷房対策としてはコンクリート外壁と断熱ガラス繊維層の間に防湿シー トを付ける必要がある。ベランダは独立支柱とし、コンクリート矩体との間は断熱構造としている。

日本では建築家だけで研究したため、露点問題に気がつかないまま、コンクリート壁内面に防湿層なしでウレタン断熱材をつけることにしてしまった。冬 に外気温が下がると日本方式ではコンクリート温度が下がり、ウレタン内壁断熱層も長期間に渡っては水分移動抵抗を充分持っていないため、断熱層およびコン クリートが結露領域に入る。カビ、ダニは関係湿度80%から発生しやすくなるため、日本ではカビ、ダニによる肺炎、ぜん息、アトピー湿疹の被害が多い。日 本のアパートのベランダは独立支柱がない。コンクリート矩体と一体となった片持ちカンティレバー構造のため、断熱が不可能で建物の寿命も短い。200兆円 の損失といわれている。

この本に書いてあること欧米の常識。ただ著者の説明はもっとうまくできたはず。私の理解では海外で採用されている外断熱の長所は水分バリヤとなる層内部 (コンクリート矩体)に温度勾配をつけずに水分移動を止めるというところにある。水分は温度の高いところから低いところへ浸透するからである。外断熱のメ リットは結露防止よりコンクリートの蓄熱効果の方がおおきい。木造または鉄骨では蓄熱効果は小さいため外断熱にするメリット残念ながらすくない。

レンガ造りの家はレンガの外に保温すれば煉瓦製の躯体が蓄熱体になって内部は快適な住空間になる。大昔だが3年間英国にに住んだ。そのときレンガ壁 躯体の蓄熱効果には感嘆した。寝る前に暖炉の火を消す。ドラフトで熱がにげないように暖炉の空気口を閉じてベッドにはいるとレンガ壁からの放熱で石炭をく べなくても一晩中、安眠できる。日本でもコンクリート製のマンションならこの効果は多少あります。特に下の住人の熱が有効である。しかし外断熱はしていな い。内部だって保温層もない安建築だ。

日本は地震国、コンクリート製は金がかかるから戸建ては伝統的な木製の家を建てる。そして薄い内断熱。これに大金かけて外断熱しても蓄熱体がせいぜい木柱 しかないから、さしたる蓄熱は期待できない。断熱層を 厚くくすることくらいだろう。現在の日本の住宅は5cm程度の保温材しかないが、アクティブ・ソーラーハウスであるスェーデン式無暖房住宅の概念に従い45cm厚を採用することだが、これもツーバイフォー方式にしないとでき ないし、コストが かかる。

Rev. 2012/4/21


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