読書録

シリアル番号 414

書名

文明の衝突

著者

サミュエル・ハンチントン

出版社

集英社

ジャンル

歴史

発行日

1998/6/30第1刷
1999/2/17第6刷

購入日

1999/02/26

評価

原題:The Clash of Civilizations and The Remaking of World Order by Samuel P. Huntington

家人の求めたものを横取りして読む。

俗説と思われることをくどくどと解説していて読む気にならず、投げ出す。エマニュエル・トッド は「帝国以降」で本書をアヤトラ・ホメイニの見解を裏返したものにすぎないと批判。

でもここでキグリー(Carrol Quigley)がThe Evolution of Civilizationで述べた「文明は拡大するための道具を備えているから成長する。・・・文明が衰退するときには、新しい方法に余剰分をあてなくなる。」という言葉を引用しているのはよかった。

中国の勃興に関しては読む価値がある。諸国家が新興勢力に対処するに2通りの方法がある。

(1)バランシング(勢力均衡モデル)、ヨーロッパ:自国のみで、あるいは他の国と提携して、新興勢力に対して勢力の均衡を維持して、自己の安全を守り、その力を封じ込め、必要とあれば戦争して相手を負かそうとする。

(2)バンドワゴニング(階層的権力構造モデル)、東洋:階層性を受け入れ、新興勢力に追従して、それに順応し、新興勢力にとって二次的なあるいは従属的な立場をとり、自国の基本的な利害が守られることを期待する。

東南アジアとヨーロッパはつねにバランシング戦略をとった。アメリカは中国に対しバランシング戦略で臨む。日本は急速な軍拡と核兵器を開発して中国に対しバランシング戦略をとるとは考えにくい。そしてアメリカが日本の二次的なバランシングを好まないことも確か。日本がバンドワゴニングに追い込まれる可能性は大だが、ヨーロッパの世界がさけてきた官僚主義的な帝国、東洋的な専制政治に取り込まれてしまうおそれがある。

したがって日本はアメリカが超大国でなくなるリスク、膨大な資源を浪費する戦争のリスクをとって日米同盟を維持し、バランシング戦力をとるしか手はない。これは一見バランシングのように見えてバンドワゴニングなのだ。すなわちバ ランシングは横の関係だがバンドワゴニングは強きものにクリンチする縦の関係なのだ。長い日中の進貢システムで血となり肉となった考えである。これにも どってはアジアの進歩はない。そのためには中国に中国に安定した多元的なシステムが望ましいのだが、そのようには見えない。

Rev. January 27, 2014


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