読書録

シリアル番号 1301

書名

米中もし戦わば  戦争の地政学

著者

ピーター・ナヴァロ

出版社

文芸春秋社

ジャンル

政治

発行日

2016/11/30第1刷
2017/2/20第6刷

購入日

2017/04/8

評価



Crouching Tiger   What China's Militarism Means for the World   by Peter Navarro 2015

著者ピーター・ナヴァロは経済学者・公共政策学者。カリフォルニア大学アーヴァイン校ポール・メレージ・ビジネススクール教授にしてドナルド・ト ランプ政権の国家通商会議の委員長。ただトランプ政権は貿易重視の副大統領マイク・ペンスに代表されるネオコンに取り込まれ、ナヴァロの意見は採用されなくなるかもしれ ない。ナヴァロはDeath By ChinaCrouching Tiger Episode 1という映画までつくた。

ネオコンの創始者は東欧系ユダヤ人アーヴィング・クリストルでディック・チェイニー、ヒラリー・クリントン、リチャード・アーミテージなどの政治家が信奉 者。彼らの多くは、アメリカの公立大学の中で最も歴史のある大学の一つ、ニューヨーク市立大学シティカレッジ(CCNY)に学んでいる。CCNYは、高度 に選択的な承認基準と自由教育により、20世紀初頭から中期にかけて「プロレタリアのハーヴァード」(“Harvard of the Proletariat”)と称されていた。それは当時、ハーヴァード大学をはじめとするアイビー・リーグの私立学校が、大多数のユダヤ系アメリカ人や有 色人種たちに関し排他的な入試制度を持っていたから。

ベストセラーだと知り、藤沢まで出向いて購入。たまたまシリアはロシアに任せるといっていたトランプが変心して、シリア空港にクルーズミサイル59発ぶち 込み、安倍首相が森本スキャンダルで苦しんでいたタコツボから救出された時に重なる。外務省は韓国への渡航を要注意にし、TVはもし米国が北朝鮮への先制 攻撃すると38度線に沿って配置された砲撃陣地からの砲撃でソウルでの死者は80万人に達すると報道されている。北朝鮮に対応するために原子力空母カール ビンソンが急遽南半球から北上中だとされているが、真相は横須賀のロナルドレーガンが毎年12月から4月末まで定期修理中のためだ。終われば相模湾で試運転するからわかる。これを読んで、万一横須賀基地が攻撃されることを想定して缶詰1ダース備蓄する。

私はいままで「エネルギーと戦争 第三次世界大戦という考察」を継続加筆してきたが、この本にはまだまだ知らないことが盛りだくさんであった。

例えば;米中戦争は「トゥキュディスの罠」によって始まる。「トゥキュディスの罠」とはアテネの勃興がスパルタに引き起こした恐怖心のことである。歴史を 見ると、既成の大国(米国、スパルタ)が新興勢力(アテネ、中国)と対峙すしたとき発生するとした。「トゥキュディスの罠」とはハーバード大のグラハム・ アリソンの命名で15例を調べて戦争発生確率は70%とした。アテネの勃興の結果がペロポネス戦争、ドイツ勃興が第一次大戦、日本の勃興が第二次大戦とい うわけ。

塩野七生の「ギリシア人の物語 II 民主制の成熟と崩壊」を読んでもトゥキュディスが賞賛したアテネのリーダーであるテミストクレスの天賦の才の重要性はわかっらが、敵側のスパルタの恐怖心である「トゥキュディスの罠」はこの本ではよくわからなかった。グラハム・アリソンの「米中戦争前夜」に詳しく書いてあるらしい。

中国は台湾略取を企てて、米空母艦隊に邪魔されて対艦巡航ミサイルや対艦弾道ミサイル(東風21号)を開発している。これらは日本のイージス艦船および米機動部隊を無力化 する目的を 持った安価な非対称兵器だ。これで海上封鎖するオフショアコントロールが無力化された。

また尖閣列島を日本にある米軍基地は中国沿岸部発射型対艦巡航ミサイルの射程範囲に入っている。

また制空権確保のため、第五世代戦闘機を開発し、その製造機数は中 国の方が多い。中国の実力が米国のそれを上回るのは時間の問題。こうして中国本土攻撃を行うエアシーバトルが難しくなった。米国は張り子のトラとなった空 母依存をやめ、潜水艦と機雷を重視してオフショアコントロールするしか手はない。ただしでき ていない。

第一列島線上の米軍基地である佐世保、横須賀、横田、嘉手納、読谷村のトリイステーション,オサン、テグおよび第二列島線上のグアム基地は遮蔽もなく裸の まま放置され、グーグルで丸見えのため、中国側はミサイルの照準をすでに合わせている。中国側の基地は4,000kmの地下長城、海南島の潜水艦基地は皆 地下にかくれている。これら基地は分散し、コンクリート擁壁などで遮蔽すべきであり、滑走路の修復能力を高める必要がある。

機雷は領域侵犯防止のための貧者の武器。対中国には有効だが、日本防衛には自殺行為。日本の無条件降伏は原爆の故ではなく機雷で自分が飢餓に陥ったため。

米国の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦14隻がもっとも有効な核兵器。中国はこれに対抗して2014年普級弾道ミサイル潜水艦5隻を進水させた。これで中国 はアメリカに300発の原爆を打ち込める能力を持ったことになる。普級弾道ミサイル潜水艦の弱みはその騒音と、第一列島線のチョークポイントを通過すると きに発見されること。液体水素・酸素燃料電池使用の非大気依存潜水艦は接近拒否・領域拒否に有効。

「安定ー不安定のパラドックス」により核兵器は核攻撃は防げるが、普通兵器の戦争は防げない。

中国が北朝鮮を支え続けるのは、もし支援を止めて北朝鮮が崩壊すれば合体した朝鮮半島は米国側に着くからである。中国産の物品を購入すれば、中国の軍備を助けるようなものだ。

アジアは世界人口の60%で、米国はこれなしには経済は成立しない。だからアジアを捨てることはありえない。またアメリカのプレゼンスがアジア諸国間の歴史 的憎悪や怨恨を抑えている。アメリカが引けばこれが再燃する。韓国や日本はアメリカの核の傘がなくなれば核武装するだろう。これは危険。だからアメリカは 手を引けない。

中国共産党の目標は中国の存続ではなく、共産党支配の存続である。中国本土を爆撃すれば中国共産党が祖国防衛の英雄になってしまう。

弱さは侵略への招待状。結局パワーバランスを計って戦争を防止するしかない。これは生物に免疫が必要なのと同じ。



グロバリゼ―ションの原理はリカードの適地生産と世界貿易により皆がハピーになるである。しかしこのドグマはいまや神話となり、世界で貧富の差が拡大し、英国でBREXIT、米国でトランプ政権をもたらした。

PVもバッテリーも日本が初めて商品開発したものだが、自国産ならエネルギー自立国家になれたのに、世界分業で中国に製造拠点を奪われ、石油と同じく輸入 する機器となってしまった。これから日本でもPVが普及し、バッテリーパリティーも達成されるけれど、輸入機器依存となり、エネルギー自立のできない脆弱 国家に成り下がる。

中国の産業構造は日米の製造業をそのまま引っ越しただけのものでエネルギー依存が大きい。ところが中国の石油エネルギー資源量は少なく、ほとんど中東依存 でマラッカジレンマを抱える脆弱なものである。EU主導で再生可能エネルギーへのシフトをうちだしたのもこの中国の弱点をつくという秘めたる目的があっ た。しかし中国がいち早くPV製造業で成功して以来、人為的温暖化説はむしろ先進国に逆風となっている。かてて加えて中国がもし内陸部のシェールガス開発 に成功すれば、これをバランシング電力とし完全自給自足の世界最強の帝国になる可能性がある。幸い四川の地質が深く複雑でいまだ成功していない。

代わりに軍事力でマラッカジレンマを解決しようとしている。結果、南沙諸島、東シナ海で周辺国を威圧している。こうして第一次大戦前に工業力が急伸したド イツ帝国と同じ状況になっている。日本が再生可能エネルギーのために中国製品を購入すれば中国はますます軍事大国となり、軍事バランスは非対称となり、日 米は拡大する軍事費で疲弊し、パワーバランスが中国有利となれば、世界大戦という悪夢の再来だ。対策は「防衛関税」である。

世界はエネルギー流通網を電力網だけで整備するのではなく、パイプラインを含め、エネルギー・インフラを総合的に認識し、構成している。天然ガスの低コス ト流通のため、パイプライン網を整備し、これをそのまま圧縮したCNGを燃料にする自動車が最も効率がよく、資源を保全し、持続的社会を構築できる。(つ いでに人為的温暖化説にもかなう。たとえ無意味であっても)しかし日本にはそのような考えも組織も欠落している。そして人為的温暖化説をとる国際社会に媚 びて水素自動車を開発するなど姑息な対応をして墓穴を掘っている。他にも二酸化炭素隔離型石炭火力、木質バイオ発電所建設など愚かな政策の目白押し。バイ オ木質発電が機能するためには日本の林業の近代化が必須なのにそれをせず輸入外材をつかうハメになっている。農水省は米の自給率40%を死守するために TPP交渉しているが、国民に白米を食べさせて、国民を血糖スパイクに陥らせ、寿命を短くさせている。

Rev. October 30, 2018


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