読書録

シリアル番号 1288

書名

やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人

著者

ケント・ギルバート

出版社

PHP研究所

ジャンル

政治学・地政学・行政学

発行日

2016/2/10第1刷
2016/3/2第2刷

購入日

2016/09/04

評価




矢部宏治の「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」を見つけに近くの書店にえかけたが見つからない。そこで似たような主張の本書を手に入れた。

いきなりネットウヨ、またの名を便衣兵がでてくる。わからない人は「ぱよぱよちーん」で検索せよというので検索したところ、新潟県のシェア60%近くを占 める地方紙の報道部長(しばき隊所属)が自身のTwitterで、自らの思想にそぐわない人に対して極めて自分勝手な基準で「ネトウヨ」と認定した上、 「死ね。それとも、殺されたいのか?」「お前の赤ん坊を豚の餌にする」「これから君のこと洗わせてもらうわ」などの中傷・脅迫などを日常的に繰り返してい た挙句、終いには朝鮮総連の顧問弁護士を勤め、新潟水俣病の原告側弁護士としても活躍している、本物の「左派」「人権派」弁護士の高島章氏さえも 「SEALDsを批判した」という理由でネトウヨ認定し、誹謗中傷を行ったのだ。彼は自身のミスから高島氏に身元を特定され、上司と共に謝罪し、降格され た挙句、全国紙で実名報道されるという事態になる。こうして「ぱよぱよちーん」は日本の左翼活動家の矛盾した独善的な思想を象徴する言葉として使われるよ うになっていった。と「新潟日報」がでてきた。ケント・ギルバートは「新潟日報」は時代に適応できない左翼の巣窟といっているようだ。そういうわけで「新 潟日報」は右に舵を切り、泉田新潟県知事を切ったのかも。

亡国の集団として日教組、日弁連、ユネスコ、国連、大部分の憲法学者。個人としては司馬遼太郎、読売新聞の渡辺主筆、毎日新聞の岸井成格、ライアン・コネル、ジャパンタイムズのマーク・シュライバー、高木健一弁護士、海渡雄一弁護士、戸塚悦郎弁護士、仙谷由人。

マッカーサーの思惑は置き土産の憲法は暫定で、独立後の日本はすぐ改訂するだろうと考えていたのだろうが、彼の最大の失敗は憲法改正のハードルを高く設定しすぎたことだろう。戦争に懲りた日本人は米国依存の心地よさに安眠をむさぼりすぎた。



矢部宏治

朝日の書評に矢部 宏治の「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」が掲載された。ハンナ・アーレントの「根源的すぎる疑いは、疑う自分自身の来歴や思考システ ムをも否定しかねない。私たちは無意識に自分を守ろうと、思考の前提にしてきた情報や認識の書き換えを拒むのだ」を引用して憲法9条護持にこだわることを いさめているとある。

孫崎享氏の「戦後史の正体」や沖縄基地ガイド本をすでにプロデュース・執筆した、矢部宏治さんの新刊とある。

この矢部 宏治の「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」に対する アマゾンの書評を見た。読者のコメントは227件もある。殆どに目を通して印象深いものを一部抜き書きした。

コメントー1
憲法9条、日米原子力協定、日米地位協定、日米合同委員会、砂川裁判と統治行為論が肝で同根とある。これが日本の無制限の軍事占領を容認 し、原発を保持し続ける義務付けになっている。「脱原発」などと言っても、「アメリカの了承がないと、日本の意向だけでは絶対にやめられない」取り決めに なっているのだ。しかも恐ろしいことに、詳細は省略するけど、この取り決めは何と協定終了後においても、ほぼ全ての条項が「引き続き効力を有する」という 仕掛けになっているのである…。鳩山首相の失脚も辺野古もオスプレイも、これらの文脈の中で一切が理解できる。敗戦の事実のうちに日本政府は占領軍の全権 に従った。それを解消して主権を取り戻す起動力を失ったまま、占領体制が時間とともに強固に固定されてきた。そうなった構造的要因は、天皇制(→官僚支 配)という民主主義の枠外の権力システムが厳然として継続していることによる。官僚たちは、Integrityが無いがために(人格的統一の欠如。強いも のにペコペコし、弱い者に横柄に振舞う。この場合は、他国人に従って自国人を守ろうとしないこと)、アメリカ政府のJapan Handlerといわれる人々から、心から軽蔑にされている。だから、交渉では100%あるいは120%サービスして、国益を犠牲にする。フィリピンや韓 国の人々は国内から米国軍基地を撤去して真の独立を達成したが、世界中で日本だけが占領体制を維持しているという指摘は、あまりにも甚だしい現実な。鳩山 元首相の理念を馬鹿にし、菅首相のやる気をこき下ろし、小沢一郎元党首や鉢呂元経産相を重箱の隅で意図的に引き下ろした官僚たちの手口に、この国が闇の勢 力の支配のもとにあることを実感した。憲法9条2項が、ヤーヌス神のようなアメリカ軍に、守られると同時に攻撃される機能を背負っていることが冷厳な事実 として説得力を持っている。米軍機がいざというとき日本の原発を攻撃する訓練をしていることも論理の必然。

コメントー2:
ここ数年で加速的に明らかになってきた「戦後体制」の実態を、分かり易くかつ実証的に述べられた、説得力のある好著。
重要なこと3点
1,「統治行為論」という不正常な考え方を許していること
・「国連憲章 敵国条項」の解決が図られていないこと
2,アメリカ合衆国との条約群(含密約)が「日本国憲法」を含む日本の国内法より上位に位置することが法的に確定していること
官僚たちが忠誠を誓っていたのは、「安保法体系」であること
・米軍および米兵に事実上の「治外法権」をあたえるためにつくられた三つの裏マニュアル
・最高裁の「部外秘資料」 1952年9月
・検察の「実務資料」   1972年3月
・外務省の「日米地位協定の考え方」 1973年4月
3,天皇が米軍に対し沖縄を半永久的に占領しておいてくれと頼んだという事実
・21世紀になった今も沖縄の現状は、基本的に天皇が希望した状態のままになっているという事実
・1950年の「口頭メッセージ」は、昭和天皇が日本政府だけでなく、マッカーサー(GHQ)も飛び越えて、直接ダレス国務長官にコンタクトしたものだったこと

ではどうすればいいのか。
何も難しいことじゃない。「当たり前」のこと、真っ当な道を進めばいい。
現実的には、正常な共和主義者が議会で多数派になる
・憲法を改定し、国家元首は直接選挙により選ばれた大統領とする
・大統領選挙に共和主義者が連続的に勝利する
・その本当の民意・数の力により「正常な社会体制」が当然とるべき政策を実行する
これらのことが間断なく実現されなくてはならない。

「正常な社会体制」の4つの条件
1,正常な政治を行うには独立国でなくてはならないこと
・外国軍が駐留している国は独立国ではない
・自国の安全保障は大統領制のもと、自国民が担うのは当然である

2,「過ちを認めに断つこと
・天皇制官僚主義と決別すること

3,「戦争を望む社会」にならないこと
・国際金融資本 軍産複合体とその仲間の企業群と距離を置いた経済政策を行う
・これは非常に難しいが

4.「我が亡き後に洪水は来たれ」の究極の形である原子力発電という欠陥科学技術と
・核防衛政策という妄想を即時にやめること
・真に現実的であれば納得されよう

憲法改定の面から言えば、
・天皇条項及び9条2項の同時削除、これに賛同することが「大同」である。

コメントー3:
この本の重大な欠陥は侵略国家中国について、一言もないところだ。米軍を追い出したフィリピンはどうなったか?基地問題は、安全保障の問題だ。それなのに中 国軍の話が一度も出てこない。今現在、ベトナムの海で、フィリピンの海で、尖閣の海で、侵入を繰り返している中国。チベットで虐殺を繰り返す中国。東トル キスタンの核実験で20万人を殺した中国。(これについてBBCの有名な番組で世界中の人は知っている。しかし、なぜか日本では放送されなかった。)アジ アで、侵略、略奪、虐殺、を繰り返しているのは中国。その中国について一言も話をしていないのは。なぜでか?今まで中国は、モンゴルで大虐殺をやり、大躍 進と文化大革命で7000万人を殺し、今現在も、チベットでウイグルで、虐殺を繰り返しています。もし中国軍が沖縄に上陸したら、沖縄県民皆殺しは簡単に できます。今は米軍がいるからそれができないが、これも時間の問題です。この本は必死になって基地をなくすことを考えているが、ほっといても米軍は出てい く。
ジョセフ ナイが言った。「中国のミサイルの性能が上がった。沖縄を確実に捉える。米軍を安全なグアムへ退避すべき」
2014年12月2日 米上下両院の軍事委員会は米軍移転に予算を付けた。グアムへの移転は加速する。沖縄問題とは米軍がいなくなったとき、どうやって沖 縄を、侵略国家中国から守るか、ということなのだ。日米安保もアメリカから破棄することもある。あれは冷戦時代のものだし、いまや中国共産党と、アメリカ の企業は、13億の中国人を食い物にすることで完全に一致している。

コメントー4:
2012年6月27日に改正された原子力基本法第二条第二項。「前項(=原子力利用)の安全の確保については、(略)わが国の安全保障に資することを目的 として、行なうものとする」とある。これは、原発の安全性に関する議論が、最高裁の憲法判断の枠外に移行することを意味する。(原発の設計許可や安全性審 査については、本書で紹介される「裁量行為論」「第三者行為論」も参照のこと。)

コメントー5:
法治国家と称しながら、その実、官僚が法を作っている日本は、官治国家に他ならない。この事実を公開された文書から明らかにしてゆく。

コメントー6:
嫌韓本と同じジャンルの被害者ファンタジー本

コメントー7:
これは「なぜそれまではなかなかできそうに見えていた政治家たちが、首相の座についたとたん無能化するのか」といった疑問にも答えを与えてくれる。

コメントー8:
なぜあの娘が学習院をやめてICUに行くのかもよくわかるすごい本。真の売国奴は天皇だというやばい。

コメントー9:
この本はそうした絶望的な「事実」すなわち日本を規定する「システム」を深く抉り出しています。そしてこの絶望を共有すること、から我々は始めねばならないと著者は訴えている気がします。

コメントー10:
まず日本人を規定している「システム」の「構造」を理解すること例えば、最近の原発再稼働差し止め請求を認めた裁判官が「すでに」その審議途上で電力会社からの圧力で事実上「罷免」されていた
というニュースは、原発村、安保村がいかに「良好」に機能しているかを如実に示しています。

コメントー11:
利権や国内政治の力動で解説してきた対象を国内法に優先する「条約」の下で説明する試みはユニークかつ説得力を持つ。一方で基地問題に比べて原発問題は明らかにハードエビデンスに欠ける。
「うらんかな」で後付した条約モデルの過適用ではないか?この論で反原発に諦めムードが漂わないことを願う。安保だけの本にしとけばよかったのに。

コメントー12:
書く阿呆に読む阿呆 (5秒で分かる答えに、1冊費やす著者と読者)

コメントー13:
これは憲法の本だ。矢部氏は憲法9条を金科玉条のごとく崇め奉る戦後左翼リベラルの考えについて、一定の評価を見せつつも「それは 戦術論でしか無い」。今 やその時期ではないと述べている。日本は憲法9条を盾にアメリカの再軍備要求に抵抗するべきだという「戦術」はもう通用しないのだ。日本の安全保障政策を めぐるムラ社会的な発想は保守派や外務省の日米安保村にあるだけではない。日本には「絶対護憲主義」を掲げるリベラルの護憲ムラがあり、保守の安保ムラが あるということである。そして、両者は巨大な壁で隔てられている事がわかる。それが日本人の手で国の形を決めさせない要因である、とこの本は後半で力説す る。日本にとって必要なのは、個別的自衛権肯定、次に外国軍基地を否定し、外国軍が駐留するなら自国軍の基地の共同使用であるべきというような国際社会並 みの駐留条件としていくべきである、と述べている。さらに、日本の安全保障政策を縛っている根源は国連憲章の敵国条項(国連憲章107条)であるとし、そ の敵国条項を死文化させるには、同じく枢軸国のドイツが行ってきたように、近隣諸国との和解を行動で示すことで実現せよ、と具体的に解く。この点で、矢部 氏は安倍晋三の復古的な歴史観を否定し、未来志向でアジア諸国における日本の位置を確保する政治家の出現に期待している。この本は「リベラル派が大きく変 わらなければならない」という決断を迫るマニフェストである。その理由は日米安保や日米地位協定といった二国間協定だけのために、日本がアメリカの属国に なっている理由はないという点にある。日米安保条約も日米地位協定も、大西洋憲章からながれるアングロアメリカンの戦後秩序構想から発する、ダレスの描 いた壮大なグランドデザインの一部にすぎなかった。このダレスの仕掛けた罠から抜け出すには、憲法を変えるしか無い。憲法を変えてもそれで全てうまくいく わけではないが、ドイツの戦後の歩みに学ぶならば、それ以外にこの隘路から抜け出す方法はない。だから、これはリベラル派に「大きな決断」を求めていると も言えるのだ。土井たか子に代表された護憲派は今や絶滅しつつある。そこで、リベラル派が変われるか。ここが正面から問われる時代になった。彼らのどれだ けが、この「右45度旋回」 を決断し、自主憲法論の議論を対米従属派の改憲論とたたかわせるか分からない。しかし、少なくとも安倍政権が改憲を日程に載せた時に、従来の護憲派がバー ジョンアップして論戦なければ、「より悪」改憲が現実のものとなって、日本は永久に米国の軛のもとに置かれるだろう。だから、これまでの安全保障論や国家 戦略論が不十分であったのは、今回の矢部氏の国連憲章における日本の位置づけという問題を含めて、全体を俯瞰的に眺める事ができない議論ばかりが横行して いていたためであることも分かった。世界秩序はその設計者の意図を理解しなければならないのであって、日米安保の場合は、米国の国務長官であり、ロック フェラー財閥の弁護士であるダレスの意図を根源までさかのぼって解きほぐしていくということが必要不可欠なのだ。ただ統治行為論があるから憲法の文字面だ け変えても問題は解決しない。統治行為論こそ日本的な対米従属の戦後レジームのコアであり、判例法理や違憲審査によるそれの消滅なしにはいくら改憲しても 現状は変わらない

私の感想は本書の長所はその歴史認識力にあるが欠陥は提案の部分にある。最近南沙諸島への中国の執 着からみえてきた中国の脅威への配慮がないところだ。実力も備えずフィリピンのように安保条約を破棄して米国の笠からでても、勃興に酔っている隣国の脅威 からは自由にはならず、憲法9条を変えたところで、自衛はできない。

米国の凋落と中国の勃興で国際力学の均衡点がずれた。強大な米国が前提だった9条を修正して、ア ライアンスは継続するにしてもいずれ日本は実力をつけて米国から自立して、領土を自力で守ることになろう。あるいは万が一トランプが大統領になれば米国の 方から安保改定を突き付けられるかもしれない。結果として現在の5兆円超の国防予算を3倍にする必要があり、国家の収支をどうとるなど問題山積。

日米安保協定、日米原子力協定、日米地位協定を終わらせ、日米合同委員会に隷属する 天皇制の名のもとにある官僚支配という民主主義の枠外の権力システムを無力化できるので米国の威をかる官僚の不協力もなくなり、脱原発は容易になるだろう が、重い国防予算でソ連のように国家崩壊になるリスクの方が高いのでは。

パリ協定のように人為的温暖化説のようにできないことを法で強制して禁酒法と同じような権力を振るう、官僚の出現にも注意する必要があろう。



川北稔


配達された学士会報920号に阪大名誉教授川北稔氏の「近代世界システムの課題」という講演録があったので目を通した。「一国史観」を離れ、「国民国家の枠を超えた」歴史の見方というやつです。

まずイマニュエル・・ウォーラステインの「近代世界システム」を挙げている。
16世に資源不足に直面したヨーロッパが大規模な分業システムを構築して今がある。このシステムには中華帝国のような政治的統合はなく、主権国家の並立する分業体制だが、資源提供する周辺と中核たる西ヨーロッパにより構成されるシステムである。

ケネス・ポメランツの「大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成」は18世紀までは西ヨーロッパも中国も同程度の経済発展で生活水準も同程度 であった。ところがイギリスを中心とする西ヨーロッパにアメリカ大陸というほぼ無限の資源が「棚ぼた」式に転がり込んだために大躍進が生じたというもの。 しかし21世紀の日本、中国などアジアのぼっ興の原因を説明していない。新たなる資源が発見されたわけではない。理由は不明のままであると川北稔氏はい う。

私の考えはアジアは新しい技術を開発したわけでもない。日本は欧米の技術をコピーして列強に追いついたが、軍事暴走を制御できず自滅。中国のぼっ興は日欧米が安い労働力という資源を手に入れるために市 場と技術とマネジメントを提供したためだ。しかしその安い労働力はすぐ枯渇してしまった。中国は先進国と同じように教育によって技術・マネジメントなどの知識産業の担い手を育てて今後の持続的発展に移行できるのだろうか。そして中国もかっての日本と同じく、己のぼっ 興の花見酒に酔って軍事的膨張の野心を持ち始めたように見えるのも気がかりだ。そんなことをすれば己の製造業の市場を失うだけなのだが。ジャック・アタリの「21世紀の歴史」によれば技術やマネジメントの 進化はそれを担当するクリエーター階級の育成によって可能となるという。しかしクリエーター階級の育成は今のところ米国しか成功していない。膨大な遺伝子 プールを有する中国は遺伝子資源の供給元には成りえる。でもそれを教育し、その成果を刈り取るのは米国ということになるのでは?



橘玲

橘玲の「言ってはいけない 残酷すぎる事実」

トランプ現象で白人中流層の崩壊が明らかになったように、アメリカ政府の教育政策にもかかわらず知識社会で成功できるのが限られたひとだけ。この不都合な 事実は、「教育、教育、教育」を政策目標に掲げて颯爽と登場したイギリスのブレア政権でも証明された。どれほど教育に予算を注ぎ込んでも、若者の失業率は まったく改善しなかった

もしも知能が遺伝し、馬鹿な親からは馬鹿な子供が生まれるなら、努力は無駄になって「教育」が成立しなくなる。しかし、行動遺伝学では、論理的推論能力の 遺伝率 68%。一般知能(AI)の遺伝率 77% である。先進国は税金を教育に注入するが無駄である。雇用対策も無駄。グローバル化で先進国だけが損 した。

これはリベラルの立場からはとうてい受け入れることのできない主張だが、だからといってそれが科学によって裏づけられている。

企業の本音は、優秀な若手社員を厚遇して人件費だけ高く不要な中高年をリストラすることだ。しかしその一方で、希少性を持たない若者は「非正規」という身 分で差別され、高校中退などで学校教育からドロップアウトした若者(先進国に共通するが、その多くは男性だ)は貧困層に落ちていく。

日本では幸いなことに、こうした社会の分断がテロや暴動として噴出することはない。だが欧米社会と同じように、知能の格差による「見えない内戦」は確実に始まっているのだ。

美貌格差もその一つ。

欧米や日本のような先進国の経済が製造業から知識産業へと移行したことでクローズアップされたのが知能に関わる遺伝子の差。

市場は、いろんな知能を平等に扱うわけではない。身体運動的知能や音楽的知能は、衆に抜きんでて優れていないと誰も評価してくれない。それに対して言語的 知能や、論理数学的知能は、他人よりちょっとすぐれているだけで労働市場で高く評価される。市場経済は、そのなかの特定の知能だけを高く評価する。

しかし幸いなことに、いまでは市場の機能を使ってそこそこ平等な社会ができることがわかっている。「比較優位」の理論。自由貿易が将来的には世界全体の厚 生を最大化する。しかし、単純労働が国外に流出していく、その結果として、二割の富裕層(クリエィティブクラス)と八割の貧困層に二極化していく。

残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、たった2行に要約できる。伽藍を捨ててバザールに向かえ。
恐竜の尻尾の中に頭を探せ。



興梠 一郎

興梠 一郎「中国 目覚めた民衆―習近平体制と日中関係のゆくえ」。著者は本書は外務省の元調査員で、現在東京外国語大学の教授

日本にとっては中国とは今も昔もチャカポコチャカポコ昼夜兼行のスウェットショップで低賃金労働に勤しむ「ほとんど奴隷」なのであって、日本は連中に組み立てさせる材料 を輸出し、出来た半製品を輸入しては、それを仕上げて日本で消費し、アメリカに輸出することでお金を稼いでいる。中国は日本にとっては「世界最大の工場」 なんかでは全くない。「世界最大の下請け工場」に過ぎないのである。

中国は、多民族国家であり、それを中国共産党という一党独裁政権が武力を背景に管理している国家であり、その有様は、中国3000年の歴史の中で繰り返された帝国の攻防や盛衰と極めて類似している。

また、それ故に、カリスマ的な指導者の単純明快なプロパガンダーが、不満を持つ多様な民の共通認識となった時、既成概念を破壊する「文化大革命」のような異常事態が起こる可能性が高い。

習金平政権が、このような目覚めた多様な民の不満を少しでも解消し、また、中国共産党幹部の汚職等を抑止し、中国の多様性をある程度許容するような政策を実施できなかった場合は、また、大きな変革が起こるかも。

中国が抱える深刻な問題点とは何か。一番は「地方政府に地上げ利益以外、ほとんど財源らしい財源がない」ということに尽きる。中国の地方政府には財源がな い。だから連中は八方手を尽くして地上げに邁進する。そしてGDPを如何に在任中に引き上げるかが地方官僚の出世の基準なので、「後は野となれ山となれ」 と地方の官僚は猛烈な勢いで都市計画の大風呂敷を広げ住む住民のいないマンション、ニュータウンを乱造し、テナントのこない巨大ショッピングモールを量産 し、移転してくる企業のいない工業団地を全土で作り続けているのである。あとがどうなろうがGDPの数値は建設が進行中である限り大きくなる。GDPが大 きくなれば、それは官僚の手柄となり彼らは出世していくのだ。そういえばバブル期の日本のGDPもやたらに大きかった。バブルは破裂するまではバブルかど うかわからないという。中国はいわば国をあげてアルファリゾートトマム、シーガイア、ハウステンボスをあちこちに作っているようなものなのだ。

二番目は格差の問題だ。中国の格差は凄まじい。強烈な富を蓄積し海外に子弟はもちろん愛人まで逃亡させる連中がいる一方で、地の底を這うような貧乏暮らし をしている国民が8億人以上いるという。平均所得は低くジャマイカよりも下でタイよりちょっと上という程度だ。だから中国の貧乏な国民の間には不満が鬱積 している。ちょっとつつけばすぐ暴動が起きる。その数はいまや膨大な数に上るという。これにウイグル族やチベット族の少数民族の差別に対する怒りのデモが 加わる。いまや中国共産党の一党独裁は風前の灯で、興梠教授は「もう中国共産党の一党独裁の維持は無理」みたいに書いている。



柄谷行人

哲学者の柄谷行人は朝日の2016/6/14の憲法を考える特集で戦後憲法は明治憲法の血統は引いておらず、徳川の国制にあるとしている。パックス・トク ガワーナと言われる軍事力の放棄で後醍醐天皇が14世紀にはじめた王政復古による戦乱の世を終わらせた。これが9条の先行形態。もひとつ徳川は天皇を丁重 にまつりあげて政治から切り離してしまった。これが憲法1条。明治で列強に対抗するために、徳川流をやめ、西洋流の仕組みにしたがうまくゆかず結局、戦後 徳川体制にもどった。これは日本人の無意識下にある。したがって保守党が幾ら憲法改定の発議をしても改定案は国民投票で否決されてしまう。そこで改訂でき ないならと、集団的自衛権も憲法違反ではないとOKと解釈し、日本は米軍の指揮下にはいって米艦船を護衛するという仕掛けを作った。今のところ、政府は中 国公船が尖閣を取り囲む場面しかマスコミに公開しないが、実は佐世保から米軍が攻撃型の強襲上陸艦を尖閣周辺を遊弋させると、中国公船は姿を消すというこ とを繰り返しているようだ。日本政府は米軍の動きを国民に見せると国民は安心して憲法改正の緊迫性がにないと思われるのがおやで一切リークしない。もし中国が尖閣に上陸すれば、国民はただちに9条を改訂することに同意するだろうが時すでに尖閣は中国の物になっているおそれあり。

ユヴァル・ノア・ハラリ

武蔵境にでかけた縁で見つけたYanis VaroufakisのCapitalism will eat democracy -- unless we speak up | というUtubeは良かったが、2016/9/11に翻訳がでたYuval Noah Harariの「サピエンス全史」の農業の誕生は奇想天外だ。そもそも、初期の農民は健康状態や栄養状況のどれをとっても、狩猟採集生活者よりも劣悪な状 況だった。出土した骨からもその差は歴然としている。狩猟採集民は一日わずか数時間の労働で十分な食料を手にすることが出来た。自然の様々な食材を手にで きたので、単一、または少ない種類の作物に依存していた初期農耕民のように、飢饉に見舞われることも稀で、栄養のバランスもとれていた。ではなぜ、人類は 農耕という生活様式を選んだのか。様々な状況や説が書かれているが、この本は小麦が人類を奴隷化したという話だ。農業革命で人口の増加が始まると、複雑な 教義や体系をもった社会や宗教が生まれる。第一部で説かれた認知革命により虚構を生みだす力がそれを可能にした。虚構による社会秩序と文化は、見ず知らず の多くの人々を束ね、協力させる事を可能にした。法人や株式会社、貨幣、法律、国家、帝国など、これら全てが虚構の上に成立している。しかし、ここにも負 の側面がある。虚構は想像上のヒエラルキーと差別を生み出す。またキリスト教や民主主義、自由主義経済から共産主義まで、人類は様々な脱出不可能な虚構の 牢獄をも生み出した。これら想像上の秩序は私たちの心の中に存在しているが、巧みに物質世界にも織り込まれており、私たちの欲望までも支配している。そし て、この想像上の秩序は「共同主観」により支えられているために、一度に多数の人間の意識を変えなければ、変化を起こすことはできない。

4,000円にもなるので手に入れず、Utubeで代替。

Prof. Yuval Harari - The Rise of Data Religion

Yuval Noah Harari - A Brief History of Humankind 2016/01/0

Yuval Noah Harari on the myths we need to survive Filmed at the Royal Geographical Society on 23rd September 2015.

Yuval Harari: "Techno-Religions and Silicon

Rev. September 9, 2016

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