読書録

シリアル番号 1279

書名

国家を喰らう官僚たち  アメリカを乗っ取る新支配階級

著者

ランド・ポール

出版社

新潮社

ジャンル

政治

発行日

2015/9/20発行

購入日

2016/06/17

評価



原題:Government Bullies by Senator Rand Paul C 2012

鎌倉図書館蔵

著者は共和党上院議員、小さな政府、財政支出削減、減税を主張、リバタリアン、ティーパーティーの支持を得ている。2016年大統領候補とされていたが、アイオアで敗れて降りる。結局、トランプが共和党の大統領候補となった。

これ読むと、「国家を喰らう官僚たち」という日本訳は誤解を生む。Government Bullies(弱いものいじめする小役人達)という原題が内容をよく表している。ここで紹介されている例はかなりぶっ飛んだ話で、役人にあいまいな根拠で権力を与えると どこまでも理不尽に増長するという例がてんこ盛り。

例は沢山あるが、大きく分けると農務省関連と環境省関連が多い。なかでも規制当局が曖昧な基準をベースに恣意的に解釈をかえることと、武装して拘束し、超高額の罰金や禁固刑に持ち込むことが特徴。

@USDA/FDA関連

●生ミルク禁止法:ペンシルバニアのアーミッシュは伝統的に熱処理しない生ミルクを飲んできたの州内消費はOKだが州を超えて生ミルクを販売することを禁じる法がある。これを州越で販売したとしていくつもの不当捜査が武装した捜査官により行われた。

●動物保護法:武装した捜査官に乗り込まれ趣味で始めたウサギ飼育の成果を販売したと動物保護法に違反の罪で重い罰金刑と業務停止命令。

●ビタミン、食品、サプリメントに対するFDAの過剰規制。

Aレイシー法関連

レイシー法は当初は違法な野生動物、魚類、植物の取引を禁止する目的で1900年に制定されたが、非常に大雑把であいまいにもかかわらず厳しい刑事罰のため、規制当局であるFWS(魚類野生生物局)の恣意的な捜査の犠牲になる人が多い。

●ホンジュラスのロブスター漁師がとったロブスターを米国に輸出した漁業関係者が投獄された

●ギブソンギター社がマレーシアの違法森林伐採のとがで材料の差抑えと、業務停止。

●オハイオ州のエリー湖で刺し網をつかってヘラチョウザメを漁獲したとレイシー法で罰金刑に処せられ、かつワシントン条約にもとづく輸出許可証の申請も禁じられた。

BEPA関連

●連邦湿地規制の湿地の定義が不明確のため、ここでも役所に恣意的会解釈が横行して関係者を苦しめている。アイダ州プリースト湖畔の住宅地を買った夫婦が このあいまいな定義に振り回された逸話が紹介されている。私もかって米国のノースカロライナへの日本の製薬メーカーの工場建設用地を調査に出向いたとき、ウィルミントン市役所でます米工兵隊にそこが湿地であるかどうかを見てもらうのが第一歩だといわれ、米工兵隊のエンジニアのジープでそこに出向いたことがある。なぜ米陸軍工兵部隊が関わるのか全く分からなかったが、法ではそうなっているらしい。

●自分の乾いた土地に汚染のない盛り土をしたところ、汚染物質をアメリカ合衆国の航行可能な水域へ放出したお言いがかりをつけられ、水質汚濁法違反に問わ れた米国市民は罰金20万ドル、懲役3年の刑になった。航行可能な水域かどうかの判定は陸軍工兵部隊のエンジアが担当するがかれらは「渡り鳥理論」を編み 出した。もし、土地に渡り鳥が訪れたらその土地は航行可能な水域に接続しているということになるのだ。



日本は武装役人は警察と自衛隊だけだが米国は農水省や環境省が武装役人をもって、市民いじめをしている。

では日本がましかというとそうでも無い。もっと巨大な不正は涼しい顔をして行われている。その最大のものは金持ち優遇策だ。そして国家予算を狙う学者たちである。

「国家を喰らう官僚たち」に適した日本政府の実例は例えば東大のロバート・ゲラーがあげた政府のハザードマップすなわちハズレマップ作成であろう。これは役人が地震対策予算配分のためにに必要なため、東大の地震研究者に金を渡して 作ってもらっているものである。東北大地震前のハザードマップには東北は入っていなかった。地震後モグラたたきでこれは修正されたが九州は危険とはされなかった。だから九州の建物の耐震設計はおそまつなものであった。このハズレマップを作っ たのは東大地震研の佐藤比呂志教授である。彼がこの仕事で2000万円を得たが責任をとっていない。政府はこのような学者に特別の研究費をだすためにモラルハザードを起こしてしまう。この学者は研究費がほしくて、立川断層を調査し たとき、コンクリートの破片を断層の証拠としたが、疑問を持った素人に間違いを指摘されて恥をかいた人物である。「人は利得によって評価基準が変わる」のということのサンプルである。このような人間をNHKが番組によんで、話させている罪は更に重い。

大体、あらゆる分野で御用学者なんてこんなものだと理解していればまちがいない。人は利得に目がくらんでいるからテレビに出たがるのは大体御用学者と思って間違いない。まともな学者はメディアにはでない。

Rev. July 1, 2016


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