読書録

シリアル番号 1268

書名

STAP細胞 残された謎

著者

佐藤貴彦(たかひこ)

出版社

株式会社パレード

ジャンル

サイエンス

発行日

2015/12/7第1刷

購入日

2016/03/01

評価



西岡氏から読めと勧められた。

小保方関連のドタバタ劇には嫌気がさしていて買うつもりはなかったが、友人のKが買って読んだのでと貸してくれた。

非常に公正に公開情報を整理し、登場人物の説明のどこに矛盾があるか時系列上に整理し、だれの発言が真実を語っているか、杜撰なのか、おのずからわかる書き方で非常に説得力ある内容であった。高名な登場人物はそれぞれ、かなり面目を失うハメになっている。  

理研内部のひがみ、ねたみ、足の引っ張り合いなどをみていると大奥のようなところだ。こういうドロドロとしたものが澱のように溜まっている様をみて、若いころ、研究者の道にすすまなかった判断を多とした。

NHKスペシャルの「不正の深層」では小保方氏の冷蔵庫からES細胞がみつかったとされ、小保方さんが中国人留学生が作ったES細胞を盗んでSTAB細胞 と称したと視聴者が思い込むように作られていた。わたしは盗んだとまでは思わなかったが、コンタミでもしたのかと思っていた。これは理研内部の密告者が敷 いたそう思わせるように仕組んだシナリオのようで、この本は事実は違うということを明確にしている。

若山照彦氏は緑色蛍光タンパク質(GFP)を18番目の染色体に挿入したマウスを小保方氏に渡したが、帰ってきたSTAB細胞には15番目の染色体に GFPがはいっていた。ということで小保方氏のに疑惑の目がそそがれる。犯人はどうも理研の実験マウスの管理がでたらめだったようだ。結局、若山氏は15 番目の染色体にGFPがはいったマウスを小保方さんに渡していたことが判明する。

その後、NHKが絡んでアクロシンGFPがからんできて事件は複雑な展開をみせる。理研の遠藤高帆上級研究員は公開されているSTAB細胞の遺伝子配列を しらべてアクロシンGFPという遺伝子が組み込まれているのを発見。若山氏はアクロシンGFPという遺伝子が組み込まれているマウスからES細胞を作って いたのだ。こうして笹井氏の自殺に発展するのだ。

自殺した笹井氏や竹市氏ら上層部が小保方氏を寵愛したため嫉妬した理研ないし若山研の研究員が多数いるところへ桂勲氏を委員長とする調査には悪意ある偏向 したデータが持ち込まれたため調査委員会の結論は偏向したものになって、証拠保全もされず、真実はわからなくなっている。そしてSTAB細胞はなかったと 結論されたが、その後、外国でSTAB細胞はあるという論文が受理されている。

日本の研究現場での不正は多数あるが、それらは不問にされ、早稲田大で雑な基礎教育をうけた小保方氏だけを魔女狩りした日本社会の異常な事件であったことがわかる。

さて緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)はオワンクラゲ (Aequorea victoria) がもつ分子量約27 kDaの蛍光タンパク質で1960年代に下村脩によって発見・分離精製された。下村はこの発見で、2008年にノーベル化学賞を受賞。GFPは励起光を当 てると単体でも蛍光発光(フォトルミネセンス)する。GFPはリアルタイム、かつ、その場で(in situ:細胞破壊の必要がない)検出でき、他のタンパク質との融合タンパク質としても機能を発揮する(GFPタグ)ことから、特に細胞内のシグナル伝達 などに関与するタンパク質の細胞内局在を明らかにするツールとして、生物研究には必須アイテムとなっている。


Rev. June 17, 2016


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