読書録

シリアル番号 1120

書名

海の史劇

著者

吉村昭

出版社

新潮社

ジャンル

歴史

発行日

1981/5/25発行
2011/12/10第48刷

購入日

2012/11/15

評価



新潮文庫

大学の同門、倉見から面白いから読めともらったものの4冊目。

いままで読んだ日露戦争のなかでも戦争場面は詳細を極める。日露の戦史を冷静に読み下し判断して書いているようで好ましい。

バルチック艦隊の回航の苦労が一緒に世界旅行しているように描かれる。いままで英国が邪魔してくれたというがフランスも結構いやがらせをしたし雇われたドイツの石炭船もかなり消極的だったことがわかる。三笠が出撃したのは鎮海湾だったとか、海戦の詳細は完璧である。

ポーツマスの交渉過程の詳細も目からうろこの感じでよんだ。講和後、なにも知らない市民は日比谷公園で大暴れをしたことも、情報の非公開故やむをえなかったことがわかる。全てを明らかにしたらロシアとの交渉も不利に展開しらただろうことは容易に理解できる。

戦勝記念艦観式に三笠が参加できなかったのは水兵が佐世保港で弾薬庫で盗んだアルコールを呑むために、失火して爆沈したためであることも詳細に書かれている。

ロシア革命の炎はウラジオストックの焼き討ちに発展しており、捕虜交換船も下士官の反乱が始まり、長崎警察が捕虜士官の保護を行う始末。敗軍の将を待ち受 ける苛酷な運命、満州群総司令官クロパトキンは無事であったが旅順要塞指揮官のステッセルは茶の行商人になったというし、艦隊司令長官ロジェストヴェンス キー中将は官位剥奪、死刑判決を受けのちに特赦されている。

司馬遼太郎も含め、類書がかなりいい加減なものであることがわかる。


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