読書録
シリアル番号 |
1104 |
書名
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世界を騙しつづける科学者たち
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著者
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ナオミ・オレスケス、エリック・コンウェイ
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出版社
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楽工社
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ジャンル
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環境
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発行日
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2011/12/15第1刷
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購入日
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2012/3/11
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評価
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良
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原題:Merchant of Doubt by Naomi Oreskes, Erik M. Conway
生物学者の福岡伸一が朝日の書評で推奨
いやな予感がしたため、本を手に入れる前に、Wikiで彼女の略歴と主張を読み、45分のU-tube講演をみた。彼女がいっているのは大多数の科学者のコンセンサス
に異をとなえる科学者はだれかの利益のためにしてい
るにちがいないという陰謀論だ。そして二酸化炭素の温暖化の証拠として成層圏の温度が下がり、対流圏の温度が上がったのは二酸化炭素が地表近くにとどまり
熱を閉じ
込めるためだと素人論を展開する。大気圏はよく混合されていて地表の二酸化炭素濃度と成層圏の濃度に差はない。気圧が下がるだけである。
成層圏の二酸化炭素濃度が上がれば、放射冷却がよくなり、成層圏の温度は下がるのは当たりまえ。二酸化炭素
が地表近くに熱を閉じ込めるというが、大気と二酸化炭素分子間の熱伝導を無視し、対流による熱移動を無視した簡便モデルの計算結果で、これが大衆のイメー
ジに
合うので大方の気象学者のコンセンサスになっている。しかし気象学者はミクロな物理現象は理解できないタコツボにはいって生息する生き物だ。わたしは気象
学者のコンセンサスはマスコミに理解されやすい俗論のため、支持されたと思っている。気象学者も福岡伸一も合成の誤謬を重ねるソフィストの役割を担ってい
る。
科学は政治ではよしとされるコンセンサスを持ち込んではいけないとガレリオやメンデル
の歴史が教えている。真理は一つしかなく、多数決で決するものでないからだ。彼女のよりどころはpeer-reviewed
paperの数がおおいということだけ。それも自派のみの。NIPCCには反論のpeer- reviewed
paperが沢山あります。ここらへんから彼女は科学教育をうけたが理解できていない
マスコミと同等の文系人間とわたしは感じる。カルフォルニア大(といってもサンジエゴ校)のレベルもマスコミ受けだけをねらった行為で落ちたものだ。そう
しなければ学生が集まらないのかもしれない。
いま価値観は大
きくかわりつつある。まず権威を疑えだ。かってローマ法王は権威の中心で、けしからんアラブをやっつけるための十字軍を送る力をもっていたが今は敬虔な
ブッシュを除き、だれも十字軍など頭に浮かばなくなっているではないか。二酸化炭素温暖化論もそろそろ賞味期限が切れたのではないか。
この本をすすめた分子生物学者の福岡伸一氏はDDT、タバコの害、オゾンホールが引き合いにだされたので推薦する気になったのだろう。私もこの点では合意する。しかし二
酸化炭素が温暖化の主犯とするIPCCの公式見解は数年前までにはその通りと私も信じていたが、ドイツの物理学者の論文をよんでから、懐疑派に転じた。こ
の辺は「二酸化炭素濃度は温暖化の原因になりえないとの気体分子運動 論からの説明」に譲る。
福岡氏は分子生物学者で物理は理解でき
ていないからつい陰謀論の片棒を担いでしまったのかもしれない。彼女が名指 しで非難するFred
Singerの論を読めば、シンガーこそがIPCCなどのジャンク・サイエンスとたたかった勇士であることがわかる。彼女のほうが間違っていると見える。
彼女こそが二酸化炭素に関しては権力とマスコミ側の狙撃兵なのだ。もっとも忌み嫌われる、茶坊主だ。ほぼアル・ゴアと同じ程度の認識力しかない科学史家と
いえるのではないか。
では現在の温暖化の原因はないかという
ことになるが、それは昔からくりかえしている自然現象とみるのが自然。大気中の硫黄を除去したのでエアロゾル減り、雲ができにくくなったのも後押ししてい
るかもしれない。ドイツのマックス・プランク気象学研究所もマスコミの奴隷となった
IPCCの下請けシミュレーションを喜々としてやっている、今のスパコンの能力で
は大気と二酸化炭素分子間の熱伝導をモデル化できないから、どうせいい加減なものと思っている。
とここまで本著を読みもしないで書き連ねた以上読む義務もありと思い大枚はたいて上下2冊購入した。彼女が懲りなく非難する勇者たちが多数紹介されてい
るためで、彼らを発掘し、彼らの声に耳を傾ける羅針盤として使おうと思うのである。
2冊を数時間で一瞥したのちにもこの見解は変わらなかった。むしろ彼女が限りなく非難する米中央政府に巣くって大企業のためにサイエンスの成果に疑惑を投
げかける手法はむしろ日本の電力会社がマスコミと学者を巻き込んでいった手法と全く同じだと気が付いた。彼女の情熱を日本の安全神話を作った連中の解剖に
そそいでほしいと思った。私の原子力村紳士録ー原
発メルトダウンのA、B、C級戦犯がとりあえずその代用品となれば。それにしても彼女が二酸化炭素の温暖化仮説をうのみにしたところだけが惜し
い。それが日本の原発安全神話形成に役だったと知れば彼女の正義感は疼くかもしれない。
ところでオゾンホールを見つけたシャーウッド・ローランド氏は2012/3/10に84才で死去した。
2014/6/13の朝日新聞のオピニオン欄にNYタイムスのクルーグマンのコラムが掲載された。経済学者はサイエンスは弱いから、インチキ気象学者のエ
セ理論をうのみにして人為的温暖化説を信じているのようだ。こころある気象学者が黙っているのは罪だと思う。先日も木村さんというNHKの気象の先生と話
したが、「気象モデルなんて二酸化炭素濃度を増すと寒冷化したりするんですよ。そこで海洋モデルを作って取り合いを調整して温暖化するように合わせるんで
す」という。
ナオミの場合は陰謀説だが、クルーグマンは意図的な無知とプライドが敵だと宣言する。反対じゃないかと思うのだが。
それよりオバマの戦略は怖い。シェールガスを手にしたアドバンテージをつかって中国を封殺するために石炭火力の二酸化炭素排出量を500g/kWh以下に規制することにした。
ECはそのような規制はしないとしているが、日本が集団的自衛権と交換で京都プロトコルに引っ掛かったような過ちを2度としないようにしてほしいものだ。日本がクソ真面目に京都プロトコルに忠実だったころ米国はこれを批准しなかったのだからこれでevenなのだ。
Rev. June 13, 2014