読書録

シリアル番号 1099

書名

科学技術は日本を救うのか 「第4の価値」を目指して

著者

北澤宏一

出版社

株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

ジャンル

技術

発行日

2010/4/15第1刷

購入日

2012/1/4 

評価



前科学技術振興機構理事長の北澤氏が書いたもので直接氏からいただく。
2011/1/4、科学技術振興機構理事長を退任され、顧問となったばかりの北澤宏一東大名誉教授を原発事故シミュレーション研究グループの4名が訪れ、 2.5時間かけて、原発の事故解析、運転再開についての条件、廃炉にするときの代替エネルギー、化石燃料枯渇後のエネルギー問題、燃料増殖問題、廃棄物採 集処理問題などあらゆる面から自由に話しあう機会を得た。

北澤氏は大体私がもっているイメージとほとんど差がないことがわかり、楽しい時間をもてた。

電中研の木下さんが私のべき分布図と千葉工大の先生の経済物理学の研究成果を日本工学アカデミーで紹介したのがきっかけでこの会が実現した。北澤宏一氏か らなにしているのか説明せよとの御下問があったため。

科学技術振興機構としては日本政府と東電の公式発表が世界の当局からは不信の目でみられているため、マルチチャンネルの情報発信ルートが必要だろうと民間 の原発事故調査の必要ありと判断、若手が中心となって当事者ヒアリングをしていたのだそうだ。3月中旬には公表の予定だとか。菅さんや枝野さんのヒアリン グもすでに済んでいるという。オフレコと称して赤裸々な告白が沢山あつまったという。一言でいえば政府内と東電は相互不信と疑心暗鬼そのものでバラバラ だったようだ。

私のべき乗分布図をしげしげとみながら、氏はこれ前にもみたことがあると云い出した。先日スイスにいったら、彼らからこの図を見せられたと言う。私のサイ トのFukushima Meltdownに掲載していたのを使ったとしか考えられない。そして彼らがいうには日本はうらやましい。これだけの事故があったらスイスのメイ ンビジネ スの観光は壊滅し、国が立ち行かなくなる。それに日本は半分が太平洋で季節が冬だったから半分以上の降下物は太平洋におちた。スイスには原発はあり得ない と断言したそうだ。

停止中の原発運転再開の最低条件として私はメルトダウンは必ず発生するとしてベントガス浄化装置の設置とベント弁を開閉するための分散電源の用意かラプ チャーディスクが最低限必要だと指摘したところ興味深く聞いてもらった。

木下氏によれば保安院は要求していないが各社は運転再開にはベント浄化は必須と認識してひそかに検討しているようだ。だが互いに連絡しあうことなく、極秘 にことを進めているようだとのこと。私は砂充填式しか知らないが、木下氏は貯水漕をくぐらす方式をフランスで見たという。

ところで北澤宏一氏は超電導の権威だそうで、電気化学にもつよく、蓄電池は電極の寿命が短く安くはならないだろう。電力を電解で物に変えて蓄えることを考 えなくてはというので私の砂漠で太陽光からアンモニアを作りタンカーで日本に持ってくる構想を話したところ、実用化されることを楽しみにしていると言って くれた。東大は応用化学だったそうで指導教官は原子力工学科と兼任の向坊先生だった。特に希望して溶融塩炉の研究をしたが、ハステロイの腐食がはげしく、 ものにならないと放棄したと昔話をした。木下氏は即、酸素と水を絶てば腐食は止まる話をして北沢氏はなるほどと納得していた。

さて前置きが長くなったがこの本は工学系の学者がかいたものとしては経済学からの見方が明晰で腑に落ちる話がバックボーンになっている。本の最後に地球磁 気が次第に弱くなって今後750年で半分になるので宇宙線が地上に達するようになる怖さが温暖化より怖いと書いている。これを防止するには超電導コイルを 赤道上に建設しなければなどと提案している。北澤氏はスベンマルク効果も知らず、二酸化炭素温暖化説が物理学からみておかしいということまではまだ気が付いていな いようだ。


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