読書録

シリアル番号 1073

書名

擬似科学入門

著者

池内了

出版社

岩波書店

ジャンル

サイエンス

発行日

2008/4/22第1刷
2008/7/15第4刷

購入日

2010/11/13

評価

岩波新書

T.H.よりいただく。

著者は3種あるという。

第一種擬似科学

科学哲学者のカール・ポパーは科学が有すべき要件として「反証可能である」ことを第一とした。こうやれば仮説や法則が成立していないと証明できる方法の提案がなければならない。つまりいかなる手段(実験や観測)によっても間違っていることを示す方法がない仮説は科学ではない。

擬似科学は反証できないから科学ではない。擬似科学を主張する人は立証責任を負わず、批判する人が反証しなければならないと言い張る。

たとえば気象学者の二酸化炭素温暖化説などもこれに類することではないかと思う。これはバートランド・ラッセルのティー・ポットの喩え話のようになかなか反証が難しいから信仰といわざるをえないのだが、日本はその反証努力もせずにIPCCの説に感染したのはいささか安直すぎるような気がする。

擬似科学には心理学で説明できるものが多い。たとえば

「認知的節約(経済性)の原理」:限られた情報から欠けた部分を経験や先入観や単純な類推によって補い、効率よく事態を処理しようとする心理のこと。

「認知的保守性(一貫性)の原理」:すでに持っているスキーマを保ち、維持しようとする傾向で、反証を無視して無理に自分の描像にあわせてしまう心理。

「主観的確証の原理」:どちらともつかない証拠だけでなく明らかな反証であっても、自分の予期を積極的に支持していると勝手に解釈する心理的傾向。

第二種擬似科学

マイナスイオン、クラスター水、ポリフェノールなど科学の用語をつかってインチキ商品を売る商売にでてくるもの

第三種擬似科学

気候変動や環境など複雑系で要素還元主義で解決できないものを科学的根拠なしと断定したり、不可知論に逃げ込む手口。

予防的処置原則とは未来の予測が不完全である場合、安全サイドに立ってあらかじめ手を打っておくという考え方で、もし二酸化炭素が気候変動の原因かもしれないなら、あらかじめ手を打っておくほうが賢い。たとえば効率をあげて炭化水素燃料消費を減らすことは二酸化炭素放出を減らし、かつピークアウトまでの時間を長く出来るのでよい。とはいえ遺伝学の生半可な知識から犯罪者やハンセン病患者を遺伝的に劣ったものとして予防的に隔離したり、断種したり、迫害したりしたことがある。予防的処置原則が擬似科学化してしまったといえよう。二酸化炭素の回収・隔離などはこの範疇に入るのではないか。

擬似科学化しない秘訣は謙虚であること。


トップ ページヘ