シリアル番号 | 1070 |
書名 |
開戦前夜の「グッバイ・ジャパン」 あなたはスパイだったのですか? |
著者 |
伊藤三郎 |
出版社 |
現代企画室 |
ジャンル |
歴史 |
発行日 |
2010/6/11第1刷 |
購入日 |
2010/10/9 |
評価 |
良 |
朝日新聞の記者だった友人川上より薦められる。著者も元朝日記者。
鎌倉図書館蔵
若き米国のヘラルドトリビューンの駆け出しのロシア系ユダヤ人記者ジョセフ・ニューマンがヒトラーのソ連攻撃をすっぱ抜き、逮捕直前にハワイに脱出。真珠湾攻撃2日前にハワイ脱出。開戦後ニューヨークで一気にGoodby Japanを書いた。危機一髪の脱出は偶然だったのか高度な情報を握っていたのかが著者が解き明かしたかった疑問。
川上より2才若い同じ朝日の元記者が著者。ジョセフ・ニューマンがソ連のスパイだったリヒャルト・ゾルゲ(死刑)の仲間、近衛文麿内閣嘱託の尾崎秀美(死刑)らが集めた情報をロバール・ギランの助手ブランコ・ド・ヴィケリッチ(獄中死)経由知り、スクープを物にした。これはヴィケリッチの意図的リークであった。実はブランコ・ド・ヴィケリッチはジョセフ・ニューマンの前には同じ情報を英国人のロイター記者ジェームス・コックスにも流していた。ジェームス・コックスは特高に逮捕され尋問されている間に自殺。
そもそもジョセフ・ニューマンを日本につれてきて、後ろ盾になったのは渋沢栄一の三男正雄である。渋沢正雄は樺山愛輔(あいすけ)伯爵(樺山資紀(すけのり)の子、白洲正子の父)をジョセフ・ニューマンに紹介する。 戦後処理に白洲次郎がかかわるのも偶然ではないことが分かる。
諜報プロの掟は死ぬまで守秘義務を負う。著者の疑問にはなにも答えぬままジョセフ・ニューマンは死ぬ。
リヒャルト・ゾルゲの日本観察は秀逸。
Goodby Japanが付録としてついている。一読の価値あり。天皇、軍部、財閥の三位一体による独裁。月山登山でみた八紘一宇(世界の八つの角を一つの屋根の下に集めて一つの家にする)=大東亜共栄圏がでてくる。