福島第一のデブリ・クリーン
アップは政治的ショーに過ぎない
安倍政権は福島第一の燃料デブリを取り出す方針を護持している。廃炉出来ないと言えば、原発の命運がそのとき尽きるからという政治的理由からであろう。本
音は不可能と思っているが、再稼働するまで出来ないとは言えない。本当はどうなのか仮想的廃炉工事を検討してみよう。
まず冷却プールに残る無傷の使用済み燃料を取り出して乾式キャスクに移す操作は最優先だろう。これは通常の作業として確立しているため壊れたクレーンを再
建するだけでよい。
次は乾式キャスクをどう保管するかが問題となる。現在のコンクリート製の建物をそのまま中間貯蔵に使うのだろうが、ミサイル攻撃には脆弱だ。
一方、炉心に残る燃料はメルトダウンしてデブリとなっている。この取り出しは強い放射線のため容易ではない。チェルノブイリでは黒鉛減速炉だったため、溶
け落ちた燃料デブリは大気に露出されており、放射線を遮るものが無く、回収することはできないと石棺を作って数百年放置し、核分裂物質のガンマ線レベルが低下す
る
のを待つことにした。スリーマイル島原発はデブリが圧力容器の底を貫通しなかったため、圧力容器内部に水張りができた。水が放射線を遮蔽してくれるため、
水中で
ボルトを外し、蓋をあけ、デブリを超硬バイトを回転させて破砕し、放射線を遮蔽できる回収容器を圧力容器中に吊り下げて回収容器に収納してから釣り
上げる方式がつかえた。
しかし福島第一の2号機の事前調査で分かったことは圧力容器の底が抜けてデブリがペデスタルまで流下していて、水は溜まっていないということだ。加えて格
納容器の底部に穴が開いているため、格納容器にも水を張ることも出来ない。圧力容器内のデブリの取り出しは横方向からは全く不可能のため、スリーマイル
島と同じく上から工具を懸垂しつつ、垂直に掘り下げてフィッシング方式で回収するしかない。まず壊れた最上階の上に高い櫓を組み立てる。次に格納容器の上
にあるコンクリート製の放射線遮蔽蓋を外し、格納容器の上蓋のボルトを外し、ついで圧力容器の上蓋のボルトを外さなければならない。しかし固着してボルト
がとれないかもしれない。このときはボルトを焼き切るか、圧力容器の蓋に穴を穿つ。次に溶け落ちた汽水分離機の残骸を粉砕して粉にして回収容器に入れてと
りだす、圧力容器下部に残っている硬度が高い合金になっていると想定されるデブリを散水しながらドリルで破砕し(超高度合金があるかという問題は別)、またはレーザー照射して局部的に冷却し、そのに間欠的に水ジェットをふきかけて冷却固化するという方法を使う。下
に溜まるデブリのスラリーを放射線を遮蔽できる回収容器に収納して引き上げる。散水するのは破砕された粉末が飛び散るのを防止するためだけでなく。万一微
小領域で再臨界が生じた時、冷却して飛び散らないようにするためでもある。しかし微細な粒子が水と共に地下の地層に流れだし、基盤岩を汚染することを防止できない。
以上を内容物がなくなるまで繰り返す操作の繰り返しとなる。再臨界防止のため、散水水にはホウ素などの中性子吸収剤を溶かし込む必要があるし、原子炉建屋
の地下室にたまる排水は循環浄化しなければならない。こうして圧力容器が空になったら、圧力容器底板と制御棒駆動装置などを破砕して粉にして同じく回収容
器に収納して引き上げる。
あとは同じ操作を繰り返してペデスタルの床までクリーンアップすれば完了と思うのは浅はか。格納容器下部にはドーナツ状のサプレッション・チャンバーがあ
り、ここに流れ込んだデブリ破砕物は上から降ろす回収容器に収納する方法はない。ここで万事休すとなる。
結局、サプレッション・チャンバーを壊すより、デブリなどはサプレッション・チャンバー内に放置して、石棺を作り、崩壊熱を空気対流で冷却しつづけるとい
うチェルノブイリ方式にせざるをえないと予想される。
問題は以上の芝居を政治的理由で延々と繰り返している間、汚染排水処理も延々と継続する。その間に溜まる三重水保管タンクは際限なく増えて、いつか海への
放流をしなければならない時が来る。
早期に政治的茶番劇を排し、石棺方式に切り替え、地下水は使い物にならない凍土方式ではなく、二重地中壁で囲み、二重壁間の地下水をくみあげて浄化する方
式を放射線量が下がる数百年間続けるのが禍根を残さない正しい方法と思うのだが。
February 16, 2017
Rev. April 3, 2017