チップ産業の栄枯盛衰

日本の弱電メーカーがTV、パソコン、携帯電話などの最終組み立て工場を中国に移転させてもチップなど精密な部品を中国に売れるし、そのチップ製造のマ ザーマシンである半導体露光装置も売れるので、問題ないと思っていたのだが、中国のファーウェイが韓国や台湾の後を追っ て、携帯電話のチップセットの製造も始めたそうだ。それも2倍速で。こうなるともう日本から部品輸出もできない。

素子の製造技術は基本的には顕微鏡をつかった印刷技術だ。西洋の勃興はグーテンベルク印刷技術に起因するとされている。従って日本も台湾、韓国、中国も所 詮、コピー文化でテークオフしたに過ぎないということになる。

かってはキャノンやニコンが半導体露光装置を作っていた。しかし、いまではオランダのALSMがエキシマレーザーの紫外光源や、液浸露光技術、蛍石や石英 レンズなどの技術でニコン、キャノン、東京エレクトロン、アプライドマテリアルズを抜き去ってしまった。おごれるもの久しからず。日本はすでにチップどこ ろかマザーマシン提供産業からも脱落しているのだ。

中国の携帯電話メーカーのファーウェイも 台湾のファウンドリーに見習ってALSMから半導体露光装置を買い、回路設計を英国や米国から買えば、チップはす ぐ作れわけだ。

彼らが日本と同じく、イギリスのARMや米国のクアルコムに回路設計を依存しているのが多少慰めになるだけだ。日本は回路設計ははじめから手も出なかっ た。もし中国がロジックの回路設計をはじめたら、日本はもう立つ瀬がない。

だから東芝は錯乱してハードディスクがNAND素子に世代交代する時期にNAND素子を切り売りしながら、核分裂の熱で湯を沸かして蒸気を作り発電する ジェームスワットの時代の技術に逃げ込んだのか?同じく錯乱した安倍政権はアベノミックスの一環としてインフラのセールスに没頭している。電柱の地中化などのような国内のインフラ なら閉鎖的循環サイクルを構築できてGDPを拡大できる。しかし外国の新幹線を売り込むようなインフラ・プロジェクトは相手国の労働者をつかうわけだから、日本のGDPは殆ど増えない し、投資効率も低い。それに米国のプロジェクト遂行は基本的にはオープンだ。よほど管理能力がなければ東芝のように破綻する。したがって安倍政権のインフラビジネ スは日本を東芝化して終わる宿命にある。

2世、3世の政治家や企業経営者はなぜ米国や英国でARMやクアルコムが芽を出すのか考えてほしいものだ。やる気のある優秀な1世を育て、引き寄せるチャ ンスのある国にしなければ、アジア大陸の東のはずれの小さな島に過ぎなくなる。

February 6, 2017
Rev. Feburuary 21, 2017


トップページへ