PRO/II による

ウエハラ・サイクル

温水加熱、空冷

グリーンウッド

ビジョン

屋根に設置するハイブリッド・コレクター(Hybrid Collector)で温水を作り、大気をヒートシンクにするウエハラ・サイクルを使っ てボトミング・サイクルを構築できる。

ウエハラ・サイクルは抽気のある二段膨張として効率を向上させているが、複雑な割には一段膨張に比べ大して効率は上がらないだろうとにらんだ。ほんとうに そうか確かめるのが本スタディーの目的である。

一段膨張と同じく熱源としては一般家屋の屋根に設置可能の40m2のコレクターと組み合わせることにした。冷却は空気とした。

 

フロー

アンモニアー水系の熱力学関係式PR-Modified Pang. Reidを標準装備しているPRO/IIを試設計に使う。

合成潤滑油を作動流体に混入し20年の耐用年数を確保する。アンモニアは伝熱係数が高く、理想的な作動流体だが銅系の素材がつかえないため、熱交換器はス テンレス製となろう。

 

設計諸元と出力、熱効率

集熱器の面積として40m2とし、26.84kWの熱の供給を受けるとした。

外部から供給される熱源としての温水温度:98.0-64.68oC(平均81.3oC)、 気化温度:95-59.61oC

ヒートシンクとなる大気温度:30-41.46oC(平均35.7oC) 、凝縮温度:47.09-36.21oC

空気冷却ウエハラ・サイクルのTH線図

温水循環量:38.6kgmol/h、 (694.9kg/h)

冷却空気量:270kgmol/h、 (7,817kg/h)

作動流体:6.49kgmol/h、(111.2kg/h)、アンモニア90mol%、水10mol%

抽気量:0.218kgmol/h、(3.7kg/h)、アンモニア75.65mol%、水24.35mol%

最高圧力:35atm

タービン1膨張比:34.99/20.69=1.69、タービン2膨張比:20.69/12.24=1.69

気化器熱負荷:26.84kW、面積:1.96m2、平均温度差:3.93oC、 熱交換器総括伝熱係数:3,000kcal/h/ C、圧力損失:0.007atm

コンデンサー熱負荷:24.51kW、面積:3.07m2、平均温度差:3.43oC、 熱交換器総括伝熱係数:2,000kcal/h/ C、圧力損失:0.002atm

熱交換器1熱負荷:1.16kW、面積:0.05m2、平均温度差:11.95oC、 熱交換器総括伝熱係数:3,000kcal/h/ C、圧力損失:0.001atm

熱交換器2熱負荷:2.3kW、面積:0.07m2、平均温度差:9.84oC、 熱交換器総括伝熱係数:3,000kcal/h/ C、圧力損失:0.001atm

タービン1出力:1.31kW、断熱効率:80%

タービン2出力:1.19kW、断熱効率:80%

コンデンサー・ファン消費電力:0.472kW、断熱効率:80%

作動流体ポンプ1消費電力:0.06kW、断熱効率:70%

作動流体ポンプ2消費電力:0.11kW、断熱効率:70%

温水循環ポンプ消費動力:0.015kW、断熱効率:70%

正味出力:1.843W

システム熱効率:1.843/26.84=6.87%

当初予想したとおり、システムを複雑にした割に効率向上はわずかである。 鳴り物入りではあったが日本の研究にはしばしばこのようなものが多い。

 

カルノー効率

本サイクルのカルノー効率は

h=1-TL/TH=1-(273+35.7)/(273+81.3)=12.97%

実サイクル効率6.26%はカルノー効率の

6.87/12.87=53.4%

 

建設単価

正午の最大出力1.843kWの出力となるため、別勘定の集熱器を除き1式100万円以下で製造できれば建設単価は約 543円/kWとなる。実際はどうかというと熱交換器の伝熱面積合計が5.6m2である。化学装置誌2010/1号掲載の通常の化 学プラント向けTEMA型ステンレス製熱交換器は124万円程度となる。市販されている膨張機といえば神戸製鋼のスクリュウ膨張機しかないのでこれをつか い、ポンプ 、冷水塔などの費用を入れれば250万円位になりそう。建設単価は約1,389円/Wとなる。

キャパシティー・ファクター=0.3162、ウエザー・ファクター=0.4、利用率=0.9として、1kW相当出力の年 間発電量は997kWhとなる。均等化経費率=11.98%/yとすれば発電単価は 166円/kWhとなる。


モデル化のポイント

作動流体組成はウエハラサイクルが使っている水10mol%とした。

抽気量は少くても膨張比を大きくするのには有効であった。

熱交換器は全て向流。相変化のあるところはゾーン分割する。

気化器を小さくすべく、集熱器の最大性能に達するまで温水循環量を最大化した。

コンデンサーの空気量はファン消費動力とコンデンサー面積の間の最適化問題となる。

平均温度差は3-5oCが最適のようだ。

膨張比は試行錯誤で最適化した。

クローズドループはオープンサイクルとして扱う。

エネルギー単位系は便宜上kW表示とした。


考察

大型装置なら2段サイクルのウエハラサイクルは意味を持つだろうが小型分散の家庭用では1段サイクルでないとコスト的に無理。家庭用には1段のア ンモニアー水サイクルがすぐれている。

また膨張機も神戸製鋼のスクリュウ膨張機は大きすぎ、高価すぎる。

それから最大の難関は100°Cの温水を作るハイブリッドコレクターの開発である。高温で性能が落ちない薄膜型PVに真空層のある二重ガラスをカバーすれ ば作れる。しかし相当に高価になる。

February 11, 2010

Rev. June 1, 2012 


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