PRO/II による

アンモニアー水

ランキン・サイクル

温水加熱、空冷

グリーンウッド

ビジョン

屋根に設置するハイブリッド・コレクター(Hybrid Collector)で温水を作れば、大気をヒートシンクにす るボトミング・サイクルを構築できる。

一般に発電装置は大型化によってコストダウンを図る技術体系である。海洋温度差発電はこの線上にある。しかしPVは自動車や家庭用空調機のように多量生産 によってコストダウンを図る技術体系 である。いずれの体系も最終的に到達する構成部材の重量当たり単価がほぼ同じになる。そこで多量生産する熱サイクルのサイズもPVにあわせるべく一般家屋 の屋根に設置可能の集熱器の面積として40m2とした。

 

フロー

温水と大気と小さな温度差で熱交換をしてエクセルギーロスを小さくできる水ーアンモニア系バイナリーの作動流体を採用す ることにした。そしてアンモニアー水系の熱力学関係式PR-Modified Pang. Reidを標準装備しているPRO/IIを試設計に使う。

アンモニアだけを気化器に送るカリーナ・サイクルはヒートソースでのエクセルギーロスがある。ヒートソースに水とアンモニア混合物を送って気化させるラン キン・サイクルとする。ウエハラ・サイクルはこれを二段膨張として効率を向上させているが、複雑すぎて小型化には不向きである。したがって一段膨張とす る。

動力回収は小型で安い容積型の膨張機を採用するものとする。たとえば家庭用空調機の斜板式、スクロール式、ベーン式などの圧縮機を逆用する。または集合住 宅向け の大型なら神戸製鋼のMSEGスクリュー・エキスパンダーなどがつかえる。熱交換機は完全向流方式となるため、縦型とする。

合成潤滑油を作動流体に混入し20年の耐用年数を確保する。アンモニアは伝熱係数が高く、理想的な作動流体だが銅系の素材がつかえないため、熱交換器はス テンレス製となろう。

 

設計諸元と出力、熱効率

集熱器の面積として40m2とし、26.84kWの熱の供給を受けるとした。

外部から供給される熱源としての温水温度:98-64.7oC(平均81.3oC)、 気化温度:95-59.8oC

ヒートシンクとなる大気温度:30-42.41oC(平均36.2oC) 、凝縮温度:47.57-36.21oC

空気冷却のランキン・サイクルのTH線図

温水循環量:38.6kgmol/h、 (694.9kg/h)

冷却空気量:250kgmol/h、 (7,238kg/h)

作動流体:7.45kgmol/h、 (127.9kg/h)、アンモニア86mol%、水14mol%(コンデンサーと気化器のバランスで決まる濃度)

最高圧力:32.6atm

膨張比:32.59/11.6=2.8

気化器熱負荷:26.84kW、面積:2.0m2、平均温度差:3.85oC、 熱交換器総括伝熱係数:3,000kcal/h/ C、圧力損失:0.007atm

コンデンサー熱負荷:24.6kW、面積:2.96m2、平均温度差:3.57oC、 熱交換器総括伝熱係数:2,000kcal/h/ C、圧力損失:0.002atm

熱交換器熱負荷:3.95kW、面積:0.12m2、平均温度差:9.78oC、 熱交換器総括伝熱係数:3,000kcal/h/ C、圧力損失:0.001atm

タービン出力:2.42kW、断熱効率:80%

コンデンサー・ファン消費電力:0.437kW、断熱効率:80%

作動流体ポンプ消費電力:0.172kW、断熱効率:70%

温水循環ポンプ消費動力:0.015kW、断熱効率:70%

正味出力:1.796W

システム熱効率:1.796/26.84=6.69%

 

カルノー効率

本サイクルのカルノー効率は

h=1-TL/TH=1-(273+36.2)/(273+81.3)=12.72%

実サイクル効率6.26%はカルノー効率の

6.69/12.72=53%

 

建設単価

正午の最大出力1.8kWの出力となるため、別勘定の集熱器を除き1式100万円以下で製造できれば建設単価は約555 円/kWとなる。実際はどうかというと熱交換器の伝熱面積合計が5.6m2である。化学装置誌2010/1号掲載の通常の化学プラ ント向けTEMA型ステンレス製熱交換器は124万円程度となる。市販されている膨張機といえば神戸製鋼のスクリュウ膨張機しかないのでこれをつかい、ポ ンプ 、冷水塔などの費用を入れれば250万円位になりそう。建設単価は約1,389円/Wとなる。

キャパシティー・ファクター=0.3162、ウエザー・ファクター=0.4、利用率=0.9として、1kW相当出力の年 間発電量は997kWhとなる。均等化経費率=11.98%/yとすれば発電単価は 166円/kWhとなる。

 

モデル化のポイント

作動流体組成は30oCの空気冷却のため、凝縮圧力を下げて膨張比を確保するため水を増やして 14mol%とした。

熱交換器は全て向流。相変化のあるところはゾーン分割する。

気化器を小さくすべく、集熱器の最大性能に達するまで温水循環量を最大化した。

コンデンサーの空気量はファン消費動力とコンデンサー面積の間の最適化問題となる。

平均温度差は1oCにすることも可能だが3-5oCが最適のようだ。

膨張比は試行錯誤で最適化した。

クローズドループはオープンサイクルとして扱う。

エネルギー単位系は便宜上kW表示とした。


考察

家庭用には1段のア ンモニアー水サイクルが大型装置むけ2段サイクルのウエハラサイクルより優れている。

また膨張機も神戸製鋼のスクリュウ膨張機は大きすぎ、高価すぎる。コストを家庭用空調機なみに下げるには発電機一体型の容積型の膨張機を開発し、大量生産 しなければならないと。これは変速発電機とし整流器で直流にしてから交流に再変換すればよい。しかし需要がなければ巨額の費用のかかる開発をする会社はな い。

それから最大の難関は100°Cの温水を作るハイブリッドコレクターの開発である。高温で性能が落ちない薄膜型PVに真空層のある二重ガラスをカバーすれ ば作れる。しかし相当に高価になる。

February 2, 2010

Rev. June 1, 2012


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