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経営におけるサスティナビリティ診断研究会 |
2008年4月17日、大江宏アジア大教授の紹介で中小企業基盤整備機構内会議室で開催された第4回経営におけるサスティナビリティ診断研究会に出席した。日本経営診断学会のなかの研究会である。
当日は「ドイツ・欧州環境規制調査サービス」を経営しているドイツ・ケルン在住の望月浩二氏の「ドイツ・欧州環境規制動向」の講演があった。
氏の講演で最も意外であったのは原発の発電単価は再生可能エネルギーに比べて安くないというドイツ政府の判断であった。日本では原発は最も安価な発電法で他の追従を許さないというのは常識となっている。これは非常に新鮮で早速、大江先生が事前に用意された米国のカルフォルニアではオースラ社 (Ausra Inc.)というベンチャー企業がカルフォルニアで177MWのリニア・フレスネル鏡型CSP発電プラントを560億円で建設するという記事と東芝・ウェスチングハウスが米国の電力会社から4基の1,100MW出力のPWR型原発を総額1兆4,000億円で受注したという2つの記事の数値を使って新設原発と新設再生可能エネルギーのコストを同一条件で比較をしてその通りと確認した。
リニア・フレスネル鏡
2年前のデータを元にソーラーセルはまだコストが高いと思い込んでいたが、ついでにとインターネットで調査してみると世の中の進歩は早く、サンノゼのベンチャーである マノソーラー社(Manosolar Inc.)が5年かけて基盤と電極と光反射板を兼ねるアルミ?フォイル上に銅-インジウム-セレン金属化合物のナノ粒子からなるインクを輪転機の要領でプリントして薄膜を形成し、その上に電極となる透明電気伝導性薄膜をコートするという安価な製法を開発したという記事を発見。電気性能が異なるセルを選別してマッチングさせてパネルを構成できるため、電気ロスが小さくなるというメリットがあるようである。運転温度は-40oC-+80oC、寿命も25年保証です。2007年に110円/Wでドイツ向けにドイツ国内で製造し、ドイツマーケット向けに出荷を開始したという。現時点ではこれが最も安価なソーラーセルで早速同じ基準でコスト比較した。 本法はホンダなどが研究していたがコストダウンに成功したとは聞いていない。
CGISナノ粒子型ソーラーセルの構造
下がその結果である。
原発 |
風力発電 | 金属化合物型ソーラーセル | リニア・フレスネル鏡型太陽熱発電 | 広葉樹林を使うバイオマス発電 | |
公称出力 (kW) | 1,100,000 | 1,500x10 | 3.3 | 177,000 | 2,380 |
建設単価 (1,000yen/kW) | 350 | 220 | 143 | 316 | 308 |
利用率 (%) | 70 | 22.5 | 11.4 | 32 | 88 |
(資本費+運転維持費) (yen/kWh) | 4.92 | 11.2 | 13.6 | 10.7 | 4.9 |
廃炉費 (yen/kWh) | 0.85 | 0 | 0 | 0 | 0 |
フロントエンド燃料費 (yen/kWh) | 0.68 | 0 | 0 | 0 | 8.6 |
燃料再処理、保管費用などのバックエンドコスト(yen/kWh) | 0.75 | 0 | 0 | 0 | 0 |
インフラ・コスト(yen/kWh) | 2.97 | 3.2 | 3.2 | 0 | 0 |
政府の支援コスト(yen/kWh) | 1.06 | 0 | 0 | 0 | 0 |
発電単価 (yen/kWh) | 11.23 | 14.4 | 16.8 | 10.7 | 13.5 |
リニア・フレスネル鏡型太陽熱発電は蓄熱タンクにて日照と関係なく20時間、安定した発電が可能なので、バックアップ電源などのインフラ・コストが不要である。そのため原発より安くなる。その他は原発より多少高い。しかしこの僅少差を再生可能エネルギーの参入障壁とすることは日本の将来を危ういものにする恐れがある。政策の転換が必要である。とりあえず電力会社の再生可能エネルギー購入義務枠を増して、再生可能エネルギー供給業への新規参入のチャンスを与え、技術開発のインセンティブを与えなければ 日本は世界に遅れてしまう。
この解析結果は単価計算の詳細も含めて「グローバル・ヒーティングの黙示録」に取り込ませていただいた。
ところで中小企業基盤整備機構は港区の立派な森ビル31に入居しているが、どのような役目をもった組織なのか調べてみた。ベンチャー支援やファンド事業、人材育成などもっともらしいことが書いてある。しかし実態はいかがなものであろうか。かってお雇いで自分が所有しない中小企業の経営をしたことがあるが、運転資金の手当てが必要になった。しかし自分が所有しない会社であるにも係らず経営者の私財を担保にいれなければ金は貸さないという制度であった。結局、永年取引のある市中銀行から信用されていたため無担保で借りられたから事なきを得たが、全く役立たずの制度であたことを思い出す。後期高齢者医療制度 などで貧乏な老人から保険料を天引きして生活できなくするより、ここら辺から整理して税収の不足を補ったほうがよいのではないかと思う。
Rev. April 28, 2008