第6回

自由人のエネルギー勉強会

2011年10月30日

学士会館302号室

いつものように元電総研所長、元東電顧問の富山朔太郎氏の司会で進行

(1)森永先生のあいさつ。先生の愛弟子の 山本義隆氏の近著「福島の原発事故をめぐってー いくつか学び考えたこと」は先生の意見を代弁してくれている、興味のある方は是非一読をと紹介される。

(2)いわき明星大学の化学系教授佐藤健二氏より森永先生貸与の大学周辺の環境線量測定結果の報告があった。核種に関してはヨウ素134、テルル134 (半減期42分)が検出されたことがある。これはその後も臨界が継続しているためなのか?

(3)元理研主任研究員の野崎正氏より汚染された土1億m3を1ヶ所に集め、半径1,200mの遮水層を作った上に半球状(設置角 度30度)の土盛りと し、放射線遮蔽の防水層で覆い、植林するという案が最も安価で安全という提案があった。元前田建設のダム建設専門家山室則之氏はコスト的にも妥当な方策で あろうというコメントがあった。

(4)元原研でトリチウムを扱った田中吉左右氏からは放射能の社会教育の大切さの話があった

(5)元放射医学研究所、東大教授の佐々木康人氏からは1,000Svという確定的影響のでる線量は論外だがそれより低線量の確率的影響の範囲での長期的 影響はしきい値がないという理解で対応しなければいけないとの解説があった。佐々木康人氏はICRPドクトリンの信奉者のようである。

(6)太鷹正元大使からは杉原千畝氏の秘話とNHK放映の原爆投下を日本陸軍が予知していたことの秘話を紹介してもらった。杉原千畝氏は外務省からの訓命 に反して、大 量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人(実際には2,500人)にのぼるユダヤ系難民を救ったとされ、海外では、「日本のシンドラー」などと 呼ばれることがある。しかし氏の 本質は外務省でロシアスペシャリストとして訓練された関東軍の情報将校でもあり、諜報が本職である。小野寺信大佐(太鷹正元大使の義父)や小 野打寛(おのうち・ひろし)中佐の下でドイツ軍のソ連侵攻時期を探るためにポーランド軍の諜報機関と親しくしている間に ポーランド軍の将校の亡命の支援を頼ま れる。しかし将校達がカチンの森で大量に処刑されてしまい、要請はユダヤ人難民の亡命要請へと変わる。ドイツ軍が追撃してくる西方に退路を探すのは問題外 だった。そして、トルコ政府までもがビザ発給を拒否するようになった。こうして、トルコ経由直接パレスチナに向かうルートも閉ざされた。もはや逃げ道は、 シベリア鉄道を経て極東に向かうルートしか難民たちには残されていなかった。難民たち が、カウナスの日本領事館に殺到したのには、こうした背景があった。

当時日本政府は日本が最終目的地でなければ通過ビサを発給 してもよいとしていた。この制約下で杉原氏が動いた背景にはここでもう一人の重要人物の登場がキーとなる。ズヴァルテンディクは、有名なオランダ企業 「フィリップス」社のリトアニア支社長 だったが、1940年(昭和15年)5月、バルト諸国担当のオランダ大使 L・P・デ・デッケルの要請を受けて、カウナス領事に就任していた。祖国を蹂躙したナチスを強く憎んでいたズヴァルテンディクは、グットヴィルトらの国外 脱出に協力を約束し、6月末、グットヴィルトは、ワルシャワ大学出身の弁護士でユダヤ難民たちのリーダー格だった、ゾラフ・バルハフティクに対して、この 件について相談した。ズヴァルテンディク領事は、「在カウナス・オランダ領事は、本状によって、南米スリナム、キュラソーを初めとするオランダ領への入国 はビザを必要とせずと認む」と仏語で書き込んでくれた。ズヴァルテンディクによる手書きのビザは、途中でタイプに替わり、難民全員の数を調達できないと考 えたバルハフティクらは、大胆にもオランダ領事印と領事のサインの付いたタイプ文書のスタンプを作り、その「偽キュラソー・ビザ」を杉原のいた日本公使館 に持ち込ん だのである。杉原千畝氏はこの要請にこたえたわけで、なにも本省の訓令に背いてトランジットビサを発 給したわけではない。当時の日本政府はナチの民族浄化に賛同していたわけではないし、戦後も同じ心情であった。戦後、外務省が杉原氏に退職を勧告したのは 大方の想像のようにこのビサ発給をとがめられたわけではなく、軍事諜報が不要となったからであると考えた方が筋が通る。
原爆投下を日本陸軍が予知していたことに関しても諜報部門の責任者だった小野寺信大佐は関係している。この秘話に関しての教訓は諜報機関がいくら情報を集 めても企画本部がこれを認識して立案しないかぎり全く無駄になるということ。企画本部の認識能力が大切となることがわかる。

(7)グリーンウッド氏から英国が製造 業を失ってからしたことを紹介。

(8)森永先生からはドイツ事情。福島原発事故の原因の一つに「公的ウソ」が多いことに気が付く。ヨーロッパ人もむろんウソをつかないことはないのだが、 日本と比べウソは少ない。これは宗教が影響しているのではないかと。ギリシア人にも公的ウソは多く、EU参加時の粉飾報告書が今回の混乱の原因になっていると指摘。

(9)元前田建設のダム建設専門家山室則之氏からはマレーシア事情が紹介された。マレーシアではマレー人、中国人、インド人、バングラデシュと階層があ る。マレー人が一 番怠け者で一番威張っている。最下層のバングラデシュが一番熱心に働く。一人のバングラデシュ人にコンクリートミキサーの運転手の資格を与えたのだが、マ レー人に別の仕事を命令されたバングラデシュ人運転手がそちらの仕事を優先したため、ミキサー車のなかのコンクリートが固まってしまい修理に30万円か かった。

(10)太鷹正氏からはなぜ日本の自動車メーカーが洪水のあるタイに進出したのかという質問がでた。これは日本メーカーがリスクというものに鈍感になって いてよく考えもせず、安い賃金に誘われて漫然とタイに進出したもので、原子力村と同じ思考能力欠如によるものであるというのが大方の会場の意見であった。

コーヒーブレーク

新聞報道などでは東電は4号炉のプールの補強工事をしたので大丈夫とされていると理解していたが、2011年10月25日カナダの原子力学者ゴードン・エ ドワーズ(Gordon Edwards)博士はアメリカ合衆国原子力規制委員会(US Nuclear Regulatory Agency)の技術研究(US NRC NUREG-1738)などを引用して第三者の検証を受けるべきだと主張している。信用ガタ落ちの保安院がOKすればよしとする制度上の 要件を満たしているのだろうが、万一プールの底が抜ければ、崩壊熱は向こう3年間はジルコニウム被覆を破壊するに十分なため、これが破壊されて核分裂生成 物が大気中に放出され、チェルノブイリを超える惨事のリスクは否定できない。そして首都圏が居住不能になるという悪夢は払底できていない。この炉を事業本 部長として直接設計・建設に携わった当事者である日立製作所の日立製作所名誉顧問荒井利治氏、鹿島建設元副社長の梅田健次郎氏に直接意見をもとめたとこ ろ、第三者機関の検証はやるべきだと合意された。よろしくお願いしますという。しかしよく考えてみれば、すべての原子炉の使用済み燃料プールは同じリスク を抱えているわけで、政府が停止中の原発の再稼働の条件にしているストレステストなどは茶番劇に過ぎないといえるのではないか?論理的に考えれば中空にコ ンクリート構造物で維持されているプールを地震で構造物が壊れても水漏れのない新設の地下のプールに移設し、格納容器ベント用の砂フィルター追加工事をし なければ運転再開としないという厳しい条件が必要と思う。この国ではインチキ儀式で国民を欺くという政治が1,000年続いてきて、また繰り返かえされて いるのだ。

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October 31, 2011

rev. November 6, 2011


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