第11回

自由人のエネルギー勉強会

エネルギーと戦争

2014年5月4日

神田学士会館 302号室

今回は4時間も議論が継続した大変充実した会であった。

事前に作成した資料「事故賠償額を算入した原発発電原価と再生可能エネルギーに勝てるか?」をつかって説明するまえに、森永先生か ら先生の書いたドイツの脱原発事情をかいた随筆を脱原発に立ちあがった小泉元首相に届けるプロジェクトの顛末を紹 介。その過程で小泉参議院議員との面談した。そのとき「自民党は新規原発は建設しないが、事故があることは覚悟しても再稼働はするというのが党の方針」と 直接聞いた。いろいろ手を回してようやく小泉元首相に先生の随筆を直接届けることができ、ついでに「原発敗戦」も読んでもらったことを紹介。

質疑応答では「PVはグリッドパリティーを達成した」に関し質問がでた。その質問は素粒子論を専門とする宮沢弘成元東大教授からのも ので「この発電原価計算に土地代金は含まれていますか?」というものだ。原発推進派が「ためにする典型的な質問」だ。事故時の東電会長 の勝俣が「原発1基分を確保するためには東京の環状線の中をPVで敷き詰めなければならない」と主張したと同じ素人にわかりやすい質問だ。無論、都市に住 む人は自 宅の屋根に載せるから土地代は不用だ。しかし私の試算は郷里に帰郷したとき目撃した耕作放棄地にPVを設置するケースだ。そこまで試算しなかったのはこち らの落ち度だが。広葉樹発電の時、検討した山林としても原野の固定資産税1.4%を適用し。課税評価額を山地基準地価:300,000 yen/ha(30yen/m2)とすれば計算はできるけど、ほとんど小数点以下だろう。(後に添付スライ ドを改訂したが最大でも2yen/kWh程度)しかしこの質問をだした東大の学者の視野の広さにむかついてはげしく反論した。以下それを紹介する。

今日本は若者にしわ寄せしているから、いままさに田舎の人口はクラッシュ寸前である。引退した兼業の農家は昔は貸家を作って生活した。しかし非常に近い未 来に、だれも田舎の土地などほしがる人などいなくなる。借家人も居なくなる。だから先祖伝来の水田をつぶしてPVを建設する。別に優遇措置ななくとも安い 中国製のPVのおかげで死ぬまで食える。そのような時代が来ている時に、のほほんと時価の土地代金で計算するなんでばかげている。

そもそも日本が人口崩壊に向かうようになったのは何が理由か歴史をみれば明らかだ。今から1000年前、日本人は中国の文明にあこがれて唐に渡った。その なかに円仁も いたが、彼が9年間の滞在中に記録した中国の皇帝を頂点とする巨大な官僚機構はみごとなものだったし、円仁がやとった朝鮮人商人の航海技術も大したもの だった。しかるに1000年後にその中国を含むアジアは西洋にしてやられた。ようやく東は西に追いついたようにみえるが、じつはそうではない。ソニーの凋 落がその典型。日本の経済的発展は米国の技術を使わせてもらったためだし、その後、独自のものは生み出していない。だから日本の産業は米国技術が賞味期限 切れになった1990年以降だめになったのだ。国立研究所の原研は新しい原子力発電技術を生み出さなかったし、理研は小保方いじめしか能がないし、産総研 も何も世界をリードするものは生み出せていない。ことほどさように官僚機構がでしゃばる国は必ず停滞するのが分かっている。西洋が東洋に勝ったのは個人が 自発的に能動的に自由に動き回れる社会だったからだ。石油メジャーが自らの官僚組織に閉じこもってなにもせず、石油のピークアウトを招来させたのも例外で ない。しかるに米国の独 立系の石油会社の個人ジョージ・ミッチェル氏がフラクチャリング技術を開発してシェール革命を引き起こした。以来米国は再度強国に復活しつつある。中国は 官僚王国の先輩だが、一見繁栄してい るように見えるのは低廉な労賃と巨大な市場をねらって日本と米国企業が中国に技術と資金を投資したためである。まさに個をリスペクトする社会の反対の極に いる。中国の基本統治構造は 1000年前と変わっておらず、今のままでは次第に世界に見放され、ジリ貧となり、お決まりの易姓革命で崩壊するのは必然だし、崩壊せずとも社会を進化さ せることはできず、今後世界をリードすることはできない。儒教国家であった韓国の船の転覆事故をみても日本 の原発事故とたいして変わらない。このままでは日本、韓国、中国とも先はない。

宮沢弘成元東大教授になにがしたいのか聞いたところ、PVは日本を救える技術ではない、核融合しかないというのである。なぜかと聞くとPVで日本の全電力 をまかなうには国土の10%をPVでカバーしなくてはならないということのようだ。私の推算はちがう。 正午の太陽エネルギー密度を1kW/mとし。山 手線内63kmに変換率14%のソーラーセル (PV)を35.3度の角度で敷き詰めて得られる電力はジオメトリックファクタ=0.316、ウエザファクタ=0.4で計算すると時間平均出力は1GW (18W/m2)となるので事故当時の東電会長の勝俣氏が委員会で主張した数値と一致する。日本の年間総発電量10,362億kWhを発電するには6,685km (山手線の106倍)必要になる。日本の国土は38万 kmから国土の1.8%にソーラーセル(PV)や集光型太陽熱発電(CSP)を設置すれば日本の電力の100%をまかなえることになるのだ。国土の66%は山林・原野だから100%の国産エ ネルギー達成は可能なのだ。このような子供だましの夢のようなことをいう大学教授にタレこまれて日本国家の技術開発の柱にする技術音痴の文系官僚と政治家がおおきな顔をしてハンドルを 握っているかぎりやはり日本に将来はない。最近、オリンピックに水素で走る燃料電池車を走らせるとはしゃいでいる東京都の役人もいるが、これも税金の無駄使いだ。水素は資 源ではない。電気と同じ二次エネルギーだ。ようするにEVで「おもてなし」をするのと代わり映えしない。そうこうするうちにメタンを燃料にするセラミックス 燃料電池車が米国で走りだしてバカにされるだけだろう。

事故賠償金を考慮した発電単価計算では事故炉の廃炉費と通常の廃炉費は分けた。事故履歴のない炉の廃炉コストは英国の事績から建設費の3倍とした。そして 福島の事故炉の廃炉費は賠償金と一緒で20兆円とした。いずれも事故規模と 確率によって異なるからである。耐震・津波・非常用発電機・ベントフィルター等の再稼働のために安全対策費1.67兆円は該当原発総出力36.6GWから 追加単価は45.6yen/Wとなる。既設原発建設単価279yen/Wにこれを加えると325yen/Wとなる。米国やヨーロッパで建設中の新規原発建 設費370yen/Wのほうが大きい。再稼働のための安全対策を加えても、現在米国やヨーロッパで建設中の最新炉より安い。ということは再稼働のために万 里の長城を築いたようで大袈裟だが、本質的なアップグレードをしていないということになる。再稼働する原子炉の稼働率は70%に下げた。この3年間とまっ たままのため当然稼働率はさがる。

パグウォッシュ会議メンバーの理論物理学者小沼通二氏は世界の原発設置数は1970年のスリーマイル事故で成長率が鈍化し1986年のチェルノブイリ後は 完全に成長が止まったままである。このままでは世界の500基の寿命が尽きる20年後には世界から原発は消えてなくなることは明白。原発はすでにその生命に トドメをさされているわけである。私のべき分布論をいれた採算計算を待つまでもなく世界のポリシーメーカーは分かっている。日本は認識速度がおそい。

元東電顧問の富山氏は「3年も経てばすべて忘却の彼方。民意は脱原発などに興味を失った。そして孫氏は送電線まで自前で建設して北海道から風力をもってく ることを計画したが、津軽海峡のトンネル経由の直流送電はOKとして、東北電力の貧弱な送電網が耐えられず、断念した。そして意外なことに私の確率論をま つまでもなく電力経営者みずから脱原発を真剣に検討し始めた。ペイしないとようやく気がついたのである。

私は孫氏は何かをしようとしまいと、もし今年末までにRedox PowerSystemsが運転温度650°Cの都市ガスを燃料とする、25kW出力、セル単価100yen/Wの固体酸化物(SOFC)燃料電池を売りだせば、日 本政府の水素エネルギー構想 は恥をかき、人々は電力会社との契約をおしまいにしてオフグリッド電力に切り替えるだろう。そのとき、原発の本当の死亡が確認されるのであろう。

福島4号炉を建設した荒井利冶日立顧問は新潟では消防車40台を山の上に並べていつでも再稼働できると言っていたと苦笑い。

東芝病院の神経科医長の西岡昌紀医師はまだ氏が厚生省の病院の医師だったこと書いたマルコポーロ記事が原因となって1995/1/17神戸地震の真っ最中 にマルコポーロが廃刊になった。朝日記者に見解を求められたとき不本意だと語った翌朝、出勤すると病院中が大騒ぎになったいた。病院長から外に向かって発言するなといわれた のはまだ理解できるが、厚生省の役人から直接電話があり、「厚生省はあなたが暗殺されることを恐れています」と言われたのには驚いたという。

その4年前の1991年7月11日にサルマン・ラディッシュの小説「悪魔の詩」を日本語訳した筑波大学助教授の五十嵐一氏が、大学のエレベーターホールで刺殺された。治安当局が 『容疑者』を特定していた極秘報告書」によると、事件当時、東京入国管理局は筑波大学に短期留学していたバングラデシュ人学生を容疑者としてマークしてい たという。この学生は五十嵐氏の遺体発見当日の昼過ぎに成田からバングラデシュに帰国しているが、イスラーム国家との関係悪化を恐れる日本政府の意向によ り捜査は打ち切られたという。

イスラムの敵のイスラエル批判をした西岡氏をイスラムが恨むはずはない。イスラエルは世界のマスコミを抑え ているから暗殺などする必要もない。現に文芸春秋社は軍門に下った。2009//9/11のアルカイダのテロの前だから米国のCIAは関係ない。厚生省の 役人はなにを恐れたのか?五十嵐氏は政府の中東情報のコンサルタン トでもあったので「悪魔の詩」の翻 訳が理由ではないのかもしれない。

厚生省の役人の支離滅裂な言動といい、五十嵐氏のなぞといい、小保方事件といい、官僚機構は情報を秘匿し、権力を握っているので怖い。

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November 8, 2013

Rev. April 7, 2017


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