第8回
自由人のエネルギー勉強会
原子力の運命
2012年11月11日
学士会館
プログラム
あいさつ 森永晴彦元ミュンヘン工科大退任正教授
反原発主張の整合性 富山朔太郎 元電総研所長、元東電顧問、物性物理
日本のエネルギー問題を考える 荒井利治 日立製作所OB、元GE日立社長
BWRの問題点と対策 青木一三 元千代田化工取締役
反原発主張の整合性ー富山朔太郎
ムラはどの社会でも現れるものであるがしばしば、情報流通の阻害要因になって議会制民主主義の敵になる。ただ敵と認められて、国家研究全て
が悪とされることも弊害である。情報流通の阻害要因になっているのは核兵器への色気というものである。
日本の技術のガラパゴス化の指摘がはやりであるが、それだけではまずいのであって、逆に日本の技術の強みはなんであるかの確認がなされていない。いまのま
までは原子力業界は人材の欠乏に陥るだろう。JR東海がリニア新幹線に突っ走っているのは丹那断層のリスクを考えてのことかもしれない。
分散発電系は本質的に電力の敵となるわけで電力からの攻撃もそれゆえである。
日本のエネルギー問題を考えるー荒井利治
総花的な見解で原子力村に居た人の困惑が伝わる。
BWRの問題点と対策ー青木一三
BWRの構造的欠陥を
説明した。荒井氏からは何の反論もなかった。出版予定の本がでたら教えてくれという人が散見された。
コーヒーブレーク
教養番組 人はなぜ自由に言葉を繰れるのか? 武田堯(ぎょ
う) 元東北大教授、元素粒子
武田堯氏は素粒子論は卒業して脳科学に転向され「脳は物理学をいかに創るのか」という本を書いているが、今回は新著「脳はいかにして言語を生み出すか」の
紹介であった。
宇宙のダークエ
ネルギーとダークマターは96%に達するが我々の深層心理での脳の活動も同じく95%だという。ネズミ、サル、ネコの脳に電極を差し込み、脳の関連部
位が逐次興奮するパターンを記録。そのネズミが寝ている時、同じパターンが10倍の速度で繰り返される。10倍と早い。意識に上がらない無意識活動は脳の
各所で並行して行われる。意識に上るのは微妙な差で意識
の中枢に拾われたときのみ。意識は逐次処理のため意識に乗らなかったものはそのままバックグランドで並列処理が継続される。
帰りの電車のなかで、深層心理での脳の活動も同じく95%という説は暗黙知と
おなじもので、日本が原発で失敗したのは指導層(中曽根、石川一郎、郷古潔、橋本清之助、正力など主として文系)に暗黙知がないからではないかとの
私の持論を説明したところ、「その通り、ただし日本の文系と理系の差は小さい。むしろ指数関数を理解できるか否かで線を引いたらよいのではないか」と指摘
された。この説ならフランスのリーダー選定基準が正しいということになる。
後日談
会場に居たノンフィクション作家山岡淳一郎氏から聞きたかった話だとコメントをいただき、氏の著書「原発と権力」をいただいた。ひも解くと、森永先生の恩師嵯峨根遼吉、本会にも出席され
た、伏見康治、そして歴史上の中曽根、石川一郎、郷古潔、橋本清之助、正力などキーパーソンの名前がびっしり。東電はGE、関電はウェスチングハウスそし
て正力はコルダーホール型黒鉛ガス炉と混戦になる様が活写されている。
同じく会場に居た東芝林間病院の神経内科医長西岡昌紀氏から後日Will
11月号が送られてきた。西岡氏の「ここがへんだよ、ホルミシス論争」が掲載されていた。さっそく読ませてもらう。ホルミシス論者は低レベルの線量照射の
あと酵素SOD,GPXが増えるのはこのましいという。これは放射線を怪獣とし、観測された善玉物質がウルトラマンとすれば、ウルトラマンが見えたのだか
ら放射線は善と増す言い張るようなものだと指摘してわかりやすかった。酵素SOD,GPXは体が放射線からうけたストレスから体を防衛するためにつくられ
たもので、もともと放射線がなければ作る必要もなかったものだと説明する。人為的温暖化説も二酸化炭素が温暖化させたというが、温暖化したから二酸化炭素
が増えたともいえるわけで。どちらも我田引水論のように見える。ゾウリムシは単細胞生物で、人間は多細胞生物だ。多細胞は細胞がむやみに増殖しないよう制
御されている。ゾウリムシのように放射線で活性化したらかえってガン化してしまうだろう。その論の展開が鮮やかで、明解。感心した。おかげでもやもやしたものがなくなりすっきりした。
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November 14, 2012
Rev. November 22, 2012