ソーラーセル駆動氷蓄熱空調

森永プロジェクトではソーラーコレクターと温水ダムを組み合わせ、夏季に蓄熱し、冬季暖房に利用する構想を検討している。この案を実用化するポイントは熱損失を抑制するために温水ダムを巨大化してダム表面とダム容積の比を小さくすることである。

日本では暖房用の温水の需要より、冷房用の冷水の需要の方がおおきいし、冷水のカロリー当たりの価値も高い。そこで発想を転換して氷として蓄熱し季節を越えて小型氷タンクに貯蔵したらペイするのではというアイディアがひらめいた。昔懐かしい氷室の再登場というわけである。

原発の夜間余剰電力を売るために電力会社は夜間電力料金を安くしている。この制度を利用して中規模の氷蓄熱はホテルやビルには普及しているがまだ家庭用にまでは普及していない。

しかしここでは化石燃料を使わずにソーラーセルで製氷するという特徴がある。そのフィージビリティーを概算で検討してみた。

現時点ではソーラーセルの発電単価は74yen/kWhであるのでとてもペイしないようにみえるがそうでもない。小口電力単価は24yen/kWhであるとしよう。ソーラーセルの直流電力で365日連続で製氷機を動かして空調する建物のある敷地内に設置する氷タンク内に コイルを設置する。このコイルの中でフレオンを蒸発させて水を凍らせる。そして夏期のX日間にタンク内に溜め込んだ氷を溶かした冷水を冷房する居室に送って冷房するというスキームを考えよう。仮に熱損失がないとすれば、夏季のX日分の空調を小口電力の1円で発生できる冷却能力と等しい冷却能力を1年、すなわち365日かけてソーラーセルの発電単価で発生するとすれば次 の方程式が成立する。

(1/24)/X=(1/74)/365

故に夏季に空調用に使える氷の日数Xは

X=365*(24/74)=118日

となる。 これはソーラーセルは高価だが、小さなセルで一年かけてゆっくり氷を溜め込めば、安い小口電力単価で夏季に冷房すると同じ電力費で冷房できるということを意味している。小型製氷機の設備償却費は夏季だけ動かす在来型の空調機より稼働率が高いため、設備の償却コストは小さい。

7、8、9月の3ヶ月冷房が必要としても90日である。従って氷タンクの熱損失は蓄熱量の100*(118-90)/118=24%に押さえればよいことになる。

問題は各家庭の敷地内に設置する氷タンクの償却費である。冷房面積19m2とすれば冷房能力は2.8kWである。1 kWh(kW・h) = 860.0 kcal であるから、90日間、8時間冷房する時間は720hである。従って蓄冷の総量Qは

Q=2.8*720*860=1,734,000kcal

蓄熱量は氷の溶解熱は80 kcal/kgであるから必要な氷の量は

Q/80kcal/kg/1,000kg/ton=21.7ton

となる。1辺3m正方、設置面積9m2深さ2.4mの 氷タンクが必要になる。空調する部屋の約半分の大きさである。熱損失24%の保冷材厚さはまだ計算していないが可能であろう。

戸建住宅では無理だろうが、集合住宅で屋上にソーラーセルを設置し、地下等に氷タンクを設置すれば、環境にやさしい、空調設備を備えることができる。 土地価格の高い都市では無理だが、空間コストの低廉な地方のホテルなどには可能性があるかもしれない。キーは安価な氷タンクをどう作りこむかであろう。

July 20, 2007

Rev. April 7, 2008


トップページへ