洋室とベッドの薦め

 

久しぶりにWakwakの山仲間と飲んだ。そこで近況話になった。郷里を同じくする、同じ年の仲間がいまだに毎日敷き布団を日に乾すという生活を送っているのを知 り、はるか昔、子供のころそのような生活をしていたことを懐かしく思い出した。日のにおいのする布団で寝る心地よさも思い出した。私などは新婚当初から板 の間にベッドというスタイルで生活してきたため、そのような日本の古い習慣は完全に忘却の彼方になっていたのである。50年ぶりに思い出してそういうとき もあったと再認識したのである。

ベッドはマットレスであるから当然敷布団などない。だから日に乾すことはできない。シーツを洗 うだけである。そもそも共稼ぎだから乾すなどという悠長な時間などない。友人3人は専業主婦を従えて王侯貴族のようにふるまってきたのだろう。彼らは湿っ た布団にもぐりこむなどかわいそうだという。カビが生えているのではないかとひどいことをいう。西洋は空気が乾いているからいいが、日本ではベッドを使っ たとしても布団は湿ってしまうはずだという。全くの誤解だ。そもそも鉄のスプリングがはいったマットレスなど湿気を吸い蓄える木綿綿などない。海岸に近い から窓を開けて布団を乾すなんてことはよほどの無風の日しか不可能だ。潮風が付着してかえってべとべとになる。ちなみに晴天無風の日に400軒ある町内を 双眼鏡もって布団乾ししている家を数えて回ったら4軒だけであった。たったの1%である。妻は横浜に住んで子育てしていたころ、畳の部屋の子 供の敷布団は乾かしたというがほんの一時期だ。

さすが50歳になって腰痛になってからスプリング入りのマットレスは捨てて、代わりにそこにべニア板を敷き、布団をつかうようになった。こうするとクラ シックな木綿綿なら湿気を吸ってどうしようもなくなる。そこで帝人のポリエステル綿入りの布団を使っている。多分繊維が太いのだろう。鉄のスプリングのように湿気で弾力性を失うこともない。毎日24時間窓を閉め切って、空調が作る人工気候 のなかで生活しているから、湿度は低い。床下の土間全面にプラスチックシートを敷きコンンクリートで固めたから、地中の湿気が上がってこづ、いつ も家の中の湿度は低い。わざわざ湿度調整の水を蒸発させているくらいなのだ。でもさすが朝起きたときだけ空調機を止め、窓をあけて朝食の時間は換気しつつ日 光を直接布団に当て脱臭と滅菌をする。それだけでポリエステル綿入りの布団はからからに乾く。夜、風呂上りでこのフカフカの布団に横たわり、空調機の自然風モードの潮騒のような複雑に変化するやさしい疑似人工風を聞いていればたちどころに深い眠りに落ちること請け合いだ。

そもそも専業主婦に奴隷がするような布団乾しを押し付けて一生をおくるなどということ自体が人間の尊厳を傷つけるような気がして気分が悪くなる。これは偏見であろうか?

September 4, 2012

Rev. September 6, 2012


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