環境法典を施行する国

持続可能な未来をめざすスェーデン

亜細亜大学大江宏教授 (本研究会主催者)

第4回 研究会

亜細亜大学アジア研究所

2004年12月1日

スエーデンは環境関連の法規を各省横断的に取りまとめて1本にし、これを環境法典として公布している。実情を現地を訪問・視察・勉強する関西弁護士連合会中心の視察旅行に参加した報告である。スカンジナビア政府観光局によれば

項目 単位 スエーデン 日本
人口 万人 900 12,767
面積 万km2 45 38
GDP 億US$ 2,403 39,944
一人当たりGDP 万US$ 2.7 3.1
税金・年金等の国民負担率 % 75.5 38.4
消費税率 % 25 5
環境税導入年 西暦 1991 ?
耕地、森林、その他 % 6, 62, 32 12, 66, 22
石油・石炭、天然ガス、水力、原子力、その他 % 35, 1, 13, 34, 17 71, 12, 3, 13, 1
炭酸ガス排出量 t-CO2/人・年 5.3 9.1
人間開発指数/女性参画指数 世界順位 2/3 9/44

日本と比較してスエーデンの顕著な差は国民負担率75.5%、消費税25%という高い負担率と低い化石燃料依存率である。

低い化石燃料依存率を達成するために風力など17%は世界一を誇っているが、原子力依存度が34%と高い。

森林面積は62%と日本と互角であるが、その95%が伐採後の再生二次林で林業が高度に発達している。スエーデンには急斜面の山が少なく、森林機械が利用しやすいためと考えられる。80年サイクルの伐採方針としているが、トナカイ放牧を業としているサーメ族はトナカイ が樹齢100年以上の木に生えるコケを主食としているため、80年サイクルの伐採には不満を持 っているという。

日本の森林のうち40%が人工林である。

水力の比率が高いが人口に比し、広大な土地があるために可能となっている。というわけでダムを作らない河川を4本ももっている。これは日本の1本(四万十川)より多い。

さて高い国民負担率に不平が出ないのはその徴税権と使用権が完全に地方に委譲されていることにであるようだ。それぞれの責任と権限は:

国家レベル:外交、国防、年金、大学等高等教育

県レベル:健康保険、医療、中等教育

コミューン(市町村)レベル:国家、県担当以外の全て、すなわち地域インフラ、住宅供給(住宅用の土地の70%はコミューンの所有という)、初等教育等

ストックホルムーウーメオ間の高速鉄道用建設に関しては野鳥保護団体が環境憲章を楯に法廷闘争しているという。

December 3, 2004

Rev. April 9, 2009

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