”はだしの医者”

再訓練ー医療の商品化に直面する中国農村医療の現状から 

東京大学大学院客員研究員三橋かおり氏

2005年1月26日

三橋かおり氏は元国連地域開発センター研究員で専門領域はヘルスプロモーション、中国農村衛生の人材養成、中国農村衛生制度、医学史である。

”はだしの医者”は中国語で”赤足”、英語でBare footedの日本語訳である。中華人民共和国建国当初、農村の衛生状況を改善しようと党が打ち出した、”四大衛生工作方針”にしたがう制度である。治療より予防目的とする”予防為主”西洋医学と漢方をミックスした”団結中西医”を標榜する”衛生工作群集運動相結合”である。

知識を学ぶことは悪とされた文化革命の思想もあって教育は医学知識ではなくハウツーだけを教える技能教育だった。また”はだしの医者”は”不脱産”、すなわり農を離れてはいけないという制約があり、農・医兼業であった。漢方をミックスしたのも高価な西洋医学の薬が手に入らなかったためだ。”はだしの医者”は人民公社時代はそれなりに機能した。

人民公社崩壊後の生産請負制度になった1991年から2000年にかけて全国郷村医生教育計画にしたがい”はだしの医者”を再教育し、試験に合格したものを郷村医生とし不合格の者を衛生員とした。都会は健康保険制度も普及し、西洋医学の正規の教育を受けた医療が普及しつつあるが、まだまだ農村には健康保険制度もなく、郷村医生に高額の金を支払うというのが現状である。

February 6, 2005

亜細亜大学アジア研究所研究会目次へ


トップページへ