二一会平成27年度第3回研究会
仏教・禅と茶の概要
信濃千曲著 『禅と茶』 ―禅茶一味―
石川 靖雄
2015年10月23日
武蔵野プレイス
飯 島先生が入院のため石川靖雄氏が代講された。
I.仏教と禅
1.シッダッタ(釈尊)の悟り と 原始仏教
・6年にもわたる苦行によっても解脱を得ることはできないと悟る
・苦行で疲れた体を沐浴で清めたシッダッタに村娘スジャータが牛乳粥を差し出す・食事で体力を回復して、菩提樹の下で座禅して瞑想し仏教の教えの根本「縁起」を悟った
縁起 原因によって結果が起きるという因果論
「此(煩悩)があれば彼(苦)があり、此(煩悩)がなければ彼(苦)がない、此(煩悩)が生ずれば彼(苦)が生じ、此(煩悩)が滅すれば彼(苦)が滅す」
十二縁起 @無明→A行→B識→C名色→D六処→E触→F受→G愛→H取→I有→J生→K老死
(流転門)(無明があるとき行があり、行があるとき識があり‐‐生があるとき老死がある)
(還滅門)(無明滅すれば行滅す、行滅すれば識滅す‐‐‐‐生滅すれば老死滅す)
初転法輪
釈迦が初めて人々に仏教の教義(法輪)を説いたできごと。
苦行と快楽の両極端を離れた「中道」とその境地に至る実践方法「四聖諦」を説く。
四(聖)諦 迷いと。悟りの構造を、原因と結果の形で示したもの
@苦聖諦 A苦集聖諦 B苦滅聖諦 C苦滅道諦
(四苦) 人生の実態を四つの苦で示す @生 A老 B病 C死
(八苦) さらにD怨憎会苦E愛別離苦F求不得苦G五蘊盛苦⇒克服することが「解脱」
(八正道 ) @正見A正思惟B正語C正業D正命E正精進F正念G正定 =P6
五蘊
世界を構成する五つの要素。人間存在の根本。
(物質)色蘊 (精神)受蘊・想蘊・行蘊・識蘊
認識の構造 五蘊とは違った視点で精神の構成要素と外界との関係を考察(十二処)
(六入):識 眼識 耳識 鼻識 舌識 身識 意識
(六内処):根 眼根 耳根 鼻根 舌根 身根 意根
(六外処):境 色境 声境 香境 味境 触境 法境
2.シッダッタの教えの三特徴
三法印
@ 諸行無常 すべての現象作られたもの(心の働きも)は時とともに移り変わる
A 諸法無我 すべて存在しているものは因縁によって生じており、それ独自で存在しているものではない。他との関係で条件付けられている。
B 涅槃寂静 輪廻の苦を抜け出した安らぎの状態をいう。
→物事は常に変化しており(無常)、それ自体で存在し続けるものはない(無我)のにずっと有り続けると錯覚し、執着して苦を招く。この迷いから抜け出ることが肝要と教える。
3.シッダッタ最後の教え
四神足
四つの不思議な霊力。四つの自在力を得る根拠。悟りを得る実践修行法の一つ
「神」とは神通のこと。「足」とは因(よりどころ)のこと、すなわち禅定をさす。
@欲神足 A勤神足 B心神足 C観神足 = P6
4.般若心経
「般若心経」は革新的な経典。釈迦の教えの「五蘊も十二縁起も四聖諦も」無いと説く
五蘊皆空。(度一切苦厄。)−−−色即是空、空即是色。受想行識亦復如是。
無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。
無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。
(無明もなければ無明が尽きることもなく、また行から老死までのそれぞれもなく
行から老死までのそれぞれが尽きることもない。苦の四つ真理もない)
5.座禅、禅、禅宗
修行としての座禅。教えとしての禅。原始仏教は解脱の宗教であり、禅宗は悟りの宗教。禅宗は日常生活全体が修行であるととらえ、その生活の中で悟りを追及する。
禅の思想
@ 不立文字 A教外別伝 B直指人心 C見性成仏=P14
A @A禅宗の特徴。BCは心の有り方を示す。
→日常のありのままの姿の中に、仏の教えを実践する自分を自覚する。
禅宗の系図
インドの二十八祖・中国の六祖(五家分裂以前)(西天の二十八祖・東土の六祖) P18
「西天の四七、東土の二三」とも。漢字の四七は掛算二十八になる。
漢詩を作るときに文字数(五言、七言等)を調節するときの工夫。
ex. 3文字=四六時、 4文字=二十四時、 5文字=二十有四時
U.飲茶
1. 中国における飲茶
薬用起源説は 茶の薬用起源説がかなり普及しているが、唐代の官定薬学書「新修本草」に「茗」が新附品のなかで初めて独立項目となる。
飲茶が普及して、茶に若干の薬効があることから加えられたと考えられる。
三国志
呉4代皇帝孫皓(在位264〜280年)が酒の飲めない寵臣に茶を賜った記載。
詩人張載 西晋(265〜316)の詩人。「芳茶は六清に冠たり」と詠む、上流階層へ普及。
南北朝時代(439〜589年)の南朝では上流階層の日常飲物となる。
茶の変遷
茶の製法は、唐代の団茶、宋代の抹茶、明代の淹茶(煎茶)と変遷。
異民族王朝が挟まったことによる茶文化の断絶によるといわれている。
茶文化の誕生
茶文化の誕生は禅宗との関係が深い。
・禅の修行に大量の茶を用いる。
・寺院は自ら茶の栽培、採茶、製造する所となる。
・寺の催事に茶会が行われた。
唐代開元年間(713〜741年)の「封氏見聞録」に、泰山寺の降魔大師が「禅を勉強するには寝ないこと、夕餉を食べないこと、そして茶をのむこと」と教 えていた。毎日40〜50杯飲んだ。 と記載。
2. 日本の茶文化
最澄により天台宗と唐代の飲茶(団茶)の風習がもたらされる。
栄西により臨済宗と宋代の抹茶がもたらされる。
隠元により黄檗宗と明代の煎茶がもたらされる。
わび茶 わび茶、 茶 侘茶 の表記
古くから使われてきた「佗」茶は「侘」の誤字が定着したもの。
現在は、意識的な表記を除きほとんど使われない。
裏千家系の出版社・淡交社の編集方針も「侘」茶にしているとのこと。
台湾では中国産の板状に固めたプーアール茶を売っている。これは最澄がもたらした団茶と同じものではないか。ラクダの背に積んでモンゴル経由、西域に運ばれ、馬のミルクを混ぜて飲まれたチャイも同じだろう。
二一会目次へ
October 24 , 2015
トッ プページへ