日本原子力学会・原子力安全部会

福島第一原子力発電所事故に関するセミナー 第4回

June 26, 2012

東京大学工学部11号館講堂

 

第3回セミナーの概要 中部電力松井務

4号機の使用済み燃料プールを中心に 東電宮田浩一

今までに各種事故報告に入っていなかった情報は下記の通り。
@3号機から4号機へのガスの逆流はSGTS(Standby gas treatment)非常用ガス処理系のダンパーはカウンターウエイト付きでなかったため電源喪失時閉まらず、(1-3号機はカウンターウェイトつき)共 用スタック経由で4号機に逆流したため。これは多段放射能除去フィルターの放射能を測定して確認した。着火点は4回ダクト内と推定されダクトは粉々になっ ていた。
Aリアクター・ウエルの水がプールに流れ込んで、水位は上がった。
B岸壁近くの乾式貯蔵キャスク保管建屋に津波が流入し、たが空気の流れの阻害はなく、放射線強度の上昇もなかった。

論点整理 阿部清治
 

使用済み燃料プールの水位が下がると高放射線でアクセスが困難
水位が燃料有効長の半分になれば熔解する
メルトダウンが開始してしまうとポジティブフィードバックがかかった状態でとまらない。
隣接炉の相互影響
ベントスタックの共用
航空機・テロ対策

福島第一の教訓を反映した今後の安全確保の考え方 日立GEニュークリアエナジー(株)守屋公三郎

@3号機で発生した水素は800kg。これは3号機と4号機を吹き飛ばした。

A津波から建屋の浸水をまもることは実質上困難。したがって電源板など重要機器の浸水防止は高所に移設する必要がある。(とはいえポンプモーターは不可能)
B直流電源の分散配置と可搬バッテリーの準備
C隔離弁のロジック、FA, FO, Failure as isなど
D注水・冷却系の多様化格納容器防護の多様化(頂部冷却の追加)
E2号機のベント失敗は格納容器上部がもれたため、サプレッションチャンバーの圧がラプチャーディスク作動圧に達しなかったため。

討論における私の質問

過去3回、私がでしゃばって提案した多重化だけでなく、要素の多様化、分散配置、浸水のない場所への設置などおおむね採用されていて、うれしく思う。ただひとつだけ採用さ れていなかったのが外付けベント・フィルターである。スリーマイル島事故と今回の事故を比較するとメルトダウンしたのは同じ。しかし環境汚染は6桁の差が あった。これはスリーマイル島事故は洗浄されたキセノンだけがベントされたがセシウムは洗浄されて環境には放散されなかった。しかし福島は制御棒や核計装 などの貫通部経由メルトスルーしたため、汚染されたガスが洗浄されないまでてきた。だから外付けのフィルターが必要ではないか。

日立の守屋氏の回答は今回は洗浄されないガスが格納容器トップ・フランジが加熱されたため漏れた。しかし改造としてはこの上蓋の上に水を満たせば冷却でき るので生ガスがもれることはない。ベント時は設計上はサプレッションチャンバーで洗浄したガスをベントするのだから外付けのフィルターは必要ないと断言し た。

ところが1号機と3号機のベント時に同期して環境の放射線強度はピンと跳ね上がっていることが記録されている。これはサプレッションチャンバーの水が沸 点になってしまえばセシウムのスクラッビング能力は激減して役に立たないからではないか。水素ガス中のセシウム微粒子が水に懸濁されるようになるには水中 をバブルアップする水素ガスの気泡内面のガス境膜を通過して水の表面に達する必要がある。そのためには水素ガス中の水蒸気が水で冷却されて気泡の内側の水 の表面で凝縮しなければならない。非常に高温でスーパーヒートした水素ガスが沸点にある水の中をバブルアップしたときはスーパーヒートした水素ガスが露点にまで冷却されるのは水の蒸発潜熱で冷却されるわけだから水素 ガス中のセシウム微粒子など水の表面に移動して接触して水中に懸濁する可能性はほとんどない。すなわちただサプレッションチャンバーの中をバブルアップし てそのまま出てくるだけではないか。この汚染されたガスを環境にベントすれば福島と同じ汚染を発生させるのではないか?要するに深層防御になっていない。 看板に偽りがあるようにみえる。

フランスのPWRですら古いものは格納容器に砂を充填した外付けフィルターを付けていると新聞で写真をみたことがある。水スクラッビング装置もフランスで 見たことがある人もいる。水温が沸点になって吸収効率が低下するから砂吸着にしているのではないかとも思える。ここらへんの実験もせずに外付け砂フィル ターは不要というのは論理的矛盾ではないか?

だからフランスのPWRの外付けフィルターは水スクラッビングではなく、砂吸 着にしているのではないか?ここらへんの実験もせずに外付け砂フィルターは不要というのはどういうことか?

日本原子力学会・原子力安全部会へ

August 10, 2012

Rev. August 11, 2012


トッ プページへ