日本原子力学会・原子力安全部会

福島第一原子力発電所事故に関するセミナー 第3回

June 26, 2012

東京大学工学部11号館講堂

 

今回は第二回の1号機の詳細に引き続き、2, 3号機の事故 の詳細の説明があった。NHKが取材撮影をしていた。

2号機のプラント挙動 東電宮田浩一(一部日立の守屋氏の話も交えて)

@津波でAC DC全て失うまえに崩壊熱で発生する蒸気を使うタービン駆動ポンプ(RCIC系)を手動起動していたため、電源喪失後もRCICが3日間注水を継続してくれた。この間圧力容 器の圧は60気圧前後でほぼ安定。運転員は現場に行ってタービン駆動音を確認できなかったが、3日間動いたことは間違いない。なぜ3日も稼働したかというと いうと圧力容器の水位が主蒸気管まで上がり、水と蒸気混相流がタービンを流れたため、エンタルピー落差が増えて、3日も運転できたと推定される。この間、 二相流によるブレード破損もなかった。

A圧力容器の圧も60気圧程度に維持された。圧力容器の圧も50気圧程度に下がったため、RCIC系タービン能力も落ち、急激に圧力容器の圧が75気圧まで上がった。この時点でSRV作動による 蒸発のため、水位がTAF(Top of active fuel)に下がる。消防車からの注水のためにSRVを開けると水位はたちまちBAF(Bottom of active fuel)に達し、空焚きとなる。

B用意した消防車で水注入を始めるも3号機の爆発のため、無人で運転していた消防車の燃料切れで注入不可、メルトダウン。以上は東電が事故後行った解析計 算と点で存在する実データを突き合わせてわかったことで運転者は当時まだ幻の水位をみていてなにが生じていたかはわかっていなかった。解析からわかること は減圧してから消防車で水を注入するということでは減圧だけで水位が下がり、メルトダウンは避けられないということ。ディーゼルエンジン駆動の高圧注入車を用意しておかなければならないということ。モーター駆動は電源のケーブル故障で使えなくなる。

Cこの間、格納容器圧は5気圧まで徐々に上昇したが、サプレッションチャンバーの下半分が水没して、外からの冷却効果があったことにより、圧力上昇速度は 水のない 場合の半分以下でせいぜい4気圧まで上がった程度であった。ところがサプレッションチャンバーの下半分が水没のため、サプレッションチャンバー圧力計も水 没し、故障で圧はゼロを示す。実は圧は7.5気圧まで上昇し、格納容器トップカバーから大量のガスがもれることになった。この格納容器圧力低下と空間線量 率上昇のタイミングは一致している。サプレッションチャンバーの下半分が水没したのは津波の海水がルーバー経由でトーラス室に入たこと、タービン室とは ケーブルルート経由で水が連通し ていること、不明の破壊点からの水漏れもあったためだろうと守屋氏はいう。不明の破壊点がサプレッションチャンバーとドライウェルを連結するベント管のベ ロウではないかとただすと、計算上はそうだが、案外別のところかもしれないという。(破壊音は3号 機だとすれば2号機のトーラスやベント管には大きな損傷はないかもしれない。しかし東電は国有化された2012/6/27に1号機トーラス室の水深 5.2mの溜り水の線量は10.3Sv/hだと公表した。これは2号機のトーラス室の放射線量118mSv/hの100倍である。1号機のトーラスは漏れているのは確か。1号機のドラウェルを水棺にできなかったのが 漏れているなによりの証拠。漏れ箇所は2012/10/11内視鏡で調べて2.8mと判明。ちょうどベローの位置だ。2号機も少ないが水漏れしているのに変わりはない。内視鏡で除いてもドライウェルに水は溜まっているのが見えないのがないよりの証拠。




D3号機爆発の影響で2号機格納容器ベントは成功せず。

E仮設地震計のP波、S波解析から2号機で観測された爆発波は4号機のものと一致。したがって2号機で爆発はなかった。したがって放射性物質のもれは格納 容器頂部からと推定される。

F原子炉建屋オペレーション・フロアの線量測定でもシールド・プラグ周辺が最大の880mSv/hで漏洩パスの可能性が高い。早期のブローアウトパネルが 開放されたため水素爆発は発生しなかった。

3号機のプラント挙動 東電宮田浩一

@津波でACは失ったが、DCは生き残った、はじめRCICを使っていたが、とめたり動かしたりしていた。そうこうしているうちにバッテリーで動く高圧注水系(HPCI)が水位低で自動起動し、2日間注水を継続してくれた。

Aバッテリー上がりでHPCIが停止し、消防車で注入のため、圧力容器のSPVを開けた途端に水位が急激に下がり、メルトダウン。

B格納容器ベントはしたが、SGTS逆流はなく、2号機とおなじ格納容器トップフランジのリークが生じたと考えられる。

2号、3号機計装系の課題 東芝磯田浩一郎

2号機のサプレッションチャンバー圧検出器の水没によるご臨終が興味をひいた程度で目新しい話はなかった。

私の質問

@BWRは燃料交換走行クレーンが格納容器外にあり、格納容器トップに巨大な開口部がある。そして圧力容器と格納容器蓋の距離は至近距離である。崩壊熱が 圧力容器を赤熱したとき、放射熱が格納容器蓋を加熱し、漏れが発生しやすい構造となっている。PWRにしろBWRにしろメルトダウンしやすさは同程度であ るが、その後の封じ込め性能は圧力容器上部空間が広く、頂部に蓋フランジもないPWRが漏れにくいと言えるのかもしれない。そうなるとベントフィルターはPWRでは有効だがBWRでは疑問だということもありうる。再稼働もこういう目で検討すべ きではないかと提案した。スリーマイル島は福島と同じく、メルトダウンしたが環境汚染の度合いはけた違いであることがなによりの証拠。この発言には日立の守屋氏などがのけぞっていた。



A水位計に差圧式しか使わない理由を質問したところ、圧力容器内にスペースがないという回答。では圧力容器外にスタンドパイプを付けたらどうなのか?

B原子炉の寿命が話題になるが、いつも議論されるのは金属材料の寿命である。じつはパワーケーブルにしても信号ケーブルにしても、制御用機器にしても絶縁材 の寿命から20年で交換することが産業用プラントでは常識だが、原子力業界でそのようなことを話題にしていることを聞いたことがない。そういう観点からも 検討が必要ではないか?


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June 27, 2012

Rev. October 11, 2012


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