日本原子力学会・原子力安全部会

福島第一原子力発電所事故に関するセミナー

第2回 1号機に係る問題

May 8, 2012

東京大学工学部11号館講堂

 

高校の同期会でNHKのディレクターやった男ヒマラヤに 登った男の話を聞いただけで、酒も飲まず、竹橋のKKRホテルから本郷の11号館まで徒歩30分で駆けつけた。2月に木枯らしが吹いていたコンドルの銅像 は青々としたイチョウの茂みに囲まれていた。3分遅れだったが、最後の資料をもらえた。(資料は学会のHPでダウンロードできるようにするといってい たが未確認)

東電宮田浩一

4つ新しい情報が得られた。

@1号炉のRPVの圧が急激に下がったのは中性子計測のためのsource range monitor/ intermediate range monitor(SRM/IRM)のドライチュイーブおよびTIPのドライチューブが炉心温度が727Cに上がった時点で破損し、そこから水蒸気と水素が 格納容器に抜けたという見解(元パブコック日立で圧力容器設計者の田中三彦氏は東電の運転員から2−3号機で聞こえた逃がし弁の作動時のサプレッションチャ ンバーの水撃音が一号機では聞こえなかったことを聞き、地震による一次水の喪失で圧力容器の圧が抜けてSR弁が作動しなかった可能性に言及。これと核計装の破損は 符合する)

A1号炉のベントはまず原子炉建屋2FのMO弁のハンドルを回して開けた。次にこれとシリーズ結合しているトーラス上部のAO弁を開けに向かったが、トー ラス内部の希ガスの放射線量が100mSvに達したので開けることができなかった。結局可搬式コンプレッサーと小型発電機をつないで計装用空気を送り込み トーラス上部のAO弁を開けて初めてベントできた

B消防車からの注水は復水補給系(MUWC)⇒Core Cooling System(CCS)⇒原子炉停止時冷却系(SHC)経由だった

C1号機非常用ガス処理系(SGTS)の逆流はなかった。(4号機は逆流)なぜなら、もしあったならフィルタで微粒子は除去されたから、広域汚染はなかっ たはず。

DIC周りの設計のお粗末さや初動の対応が弁解の余地のないものであったが、海水取水ポンプが壊れてしまったため、メルトダウンに至るのは不可避であっ た。

が新しいもの。

日立ニュークリア守屋公三郎

2度目のため、今後の改良に関する考察が多かった。

@格納容器からのもれは格納容器蓋のガスケットからが最大だろうと。温度計は400°Cが上限だが、実際には600-700°Cになっていただとうとのこ と。

Aベントした時、線量が急激に上昇し徐々にさがるのは希ガスによるもので次第に減少して尾を引くのがセシウムなどの微粒子が沈着したため

BICの蒸気管と凝縮水戻り管につけた隔離弁はこれら配管の破断を検出して閉じるというロジックであったが、直流電圧ゼロで同じ信号が出るというのは予期 していなかった。

関電浦田茂

ストレステストについての説明。イベントツリーを使った確定論的解析を試みているようだが少し気が抜けたような雰囲気で聞いた。


質疑応答

早速私は手を挙げ、部外者とことわって、人間系が何らかの救出操作しようにも可搬式発電機を用意しても途中のスイッチやケーブルが故障すれば電源損失でプ ラント情報がわからなくなる。これがわからねばどう操作すべきかも判断できない。電源損失でも圧力、温度、水位を直接知ることができるような直動式計器を 中央操作室に設置することと、コア冷却専用のシステムには電源で動くMO弁とは別の原理でたとえば空圧で開閉できる弁をバックアップに用意しなければ再稼 動など怖くてできないのではないかと質問した。

日立の守屋公三明氏は現場計器がなくとも冷却できなくなった時間さえわかっていれば、メルトダウンまでの時間は予めわかっているのだから強制的に水注入操 作にはいればよいと回答。これは私もシミュレータ作って確認していますから納得。

MO弁と異なる原理の弁の追加については阿倍清冶部会長がそれだけ複雑にして良いものかどうかもよく検討する必要ありと首をかしげていました。この態度は 私は不満です。複雑にするのが問題ならMOをAOに変え、手動で計装用空気をボンベから送り込んで開けるという方式にすれば簡単ではないか。問題は多分大 改造になり、時間がかかるからやりたくないという意思の表れと見える。これは安全部会のすることではない。表向きガス抜きをして推進させるという部会では ないのか?

その他、若手からの質問としては民間事故調査報告などは政治家がどうしたということしか書いてなく、技術的な資料はほとんどなく、学ぶものがない。この学 会がそのようなデータベースを作らないのかという質問がでた。部会長はごにょごにょ言葉をにごしていました。これが学会や教育者の態度か?

三菱重工系の人がIC系の配管破断検出ロジックの組み方がつたないからバッテリー上がりと配管破断を混同したのではないかと厳しい指摘をしていた。

この他、沢山の質問があったが、関西弁が多く、PWR系のエンジ二アはBWR系のお粗末さに迷惑だったという雰囲気であった。

さて会がはねてから日立の守屋公三郎氏に下記3項目確認した。

格納容器貫通配管は原則として内外にそれぞれ1個のMO隔離弁を持つ、ただし例外があって、水注入系は内側の弁は逆止弁としている。この考えにしたがえば ICの凝縮水戻りラインは逆止弁でよいのではないかと質問すると。かれもそう思う。しかしGEのエンジニアは悩んだ末MO弁をえらんだのだろうという。こ の設計は日本では敦賀しかないので敦賀を再稼動しなければ記憶から抹殺される。

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May 9, 2012

Rev. August 15, 2012


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