先端エネルギー変換工学寄付研究部門(AECE)

第11回技術フォーラム

世界のエネルギー情勢と石炭利用技術の動向

東京大学生産技術研究所コンベンションホール

2014年 2月25日

 

久しぶりに駒場の生産研にでかけ、石炭利用フォーラムを久保田先生と仲良く聞いた。何より驚いたのが何年も工事中だった下北沢の駅が地下化されていたことであった。

いろいろ面白い話があった。

JCOALの原田道昭氏

オバマ大統領が気候変動計画のアクションプランで海外の石炭火力新設には米政府の公的金融機関は融資しないと決めた。ただし、CCSあればOKとした。これはオバマの公約だから仕方がないが人為的温暖化懐疑論者としては困惑。

東大の金子祥三教授

日本のIGCC開発はナショプロだったため、責任が1本化されておらず、役所も旗をふらないので4年間もガス化炉が全く動かなかった。それが責任を1本化 した途端1発で成功だったという話。われわれ化学プラント屋からみれば当たり前のことが、日本の役所はできていないということを告白しただけのこと。ガス 化炉だって1本の圧力容器にして自立させればよいのに、わざわH型にして建屋からつりさげるなどという高コスト設計をしている。ばかばかしくて見ていられ ない。それでも成功に勢いを買って2基実プラントを建設するそうだ。でも高くなるのだろうから、せっかくの安い石炭が泣く。ガス化炉はテキサコ法でなく、 シェル法。

EPRIのD. Jeffrey Phillips氏

シェールガスの原価は6$/MMbtuなのに過剰生産で4$/MMbtuになってしまったのでほとんど掘削 はしていない。今はほとんどがシェールオイルを掘っている。というわけで少しずつ価格はあがりつつある。6$/MMbtuを越えればまた掘削がはじまるだ ろう。それまでは米国では石炭火力をやるやつはいない。したがって高価なIGCCなんてもってのほか。日本と中国がどのくらいできるか横から見させてもらう。グッドラック。

ポーランドAGH工科大のAnna Sciazko

ヨーロッパの話でこれも目の覚めるようなデータがてんこ盛りで興味深かった。ドイツの家庭用電力料金は0.268E/kWh だから29yen/kWh(110y/E)。2007年は23yen/kWh(110y/E)だったから6yen/kWhの上昇。ちなみに 0.13E/kWhだから14yen/kWh(110y/E)。2007年は11yen/kWh(110y/E)だったから3yen/kWhの上昇。ドイ ツは再生可能エネルギーでかなり高値我慢していることがわかる。我が家の昨年10月は27yen/kWhだ。原発事故前は23yen/kWhだから4yen/kWhの上昇。内、再生可能エネルギー賦課金は0.26yen/kWhで東電管内ではたいしたことはない。

釧路コールマインの松本裕之氏

興味深かった。日本では絶滅したと思った炭鉱は北海道で生き残っていた。私が現役時代に知っていた石炭の可採R/Pは400年であった。しかし松本氏はそ れが何時のまにか100年になってしまったという。ビックリしてBP統計をみると。私が引退した2000年頃で可採R/Pは200年。それが現時点で可採 R/Pは100年となっている。2020年でゼロになる減り方だ。価格が上がれば可採埋蔵量が増すので石油のような経過をたどるのだろう。当然北海道炭鉱 もフル操業になると予想される。

だからといって原子力はいまでも世界ではマイナーな資源で事故は確実に発生する。ウーム!これは来世紀は確実に再生可能エネルギーの時代になる。やはりドイツは事態を正しく認識している。

というわけで私の黙示録のマーケイティ・ナキシェノビッチ・ダイヤグラムを更に来世紀まで拡張した図-1.9グリーンウッド・ダイヤグラムは正しく未来を把握していると自信を深めました。自民党のエネルギー計画は幼稚園児以下の認識能力しかない。



グリーンウッド・ダイヤグラム


駄足

藤沢駅で購入したWedge

によると、大規模PVは九州で盛んなようだ。土地が余っているのでPVはちょうどよい投資先だったようで九電はもう受け入れきれないと悲鳴をあげているようだ。それからPVメーカーは国内の製造プラントには投資せず、中国で委託製造し自社マークをつけて売っているようだ。

久保田先生のかっての同僚の岡崎先生と立ち話し

川崎重工が液体水素タンカーを建造してオーストラリア産の輸送中発火するため生産点でした使えない褐炭を液体水素にする構想を練っているとい う。褐炭を原料にするのはいい着眼点だが液化ロスが大きいのでどうかなとおもう。

却ってネットで調べると川重はまず600億円を投じ、豪州南部のビクトリア州から17年に輸入で実証実験を始める。1回で2,500立方メート ルの水素を運べる小型船を2隻つくる。年間輸送量は計2,700トンで、燃料電池車の3万5000台分にあたる。現地で水素を液化する設備もつくる。国内 海運やガス小売会社と連携し、まず燃料電池車向けの水素の補充拠点となる水素ステーションに売る。川重によると、輸入価格は1立方メートルあたり29.8 円で、国内での流通コストを上乗せしても60円 程度。液化天然ガス(LNG)などから取り出す現在の国内品よりも半額程度で済むという。川重はロシアの企業とも調達に向けた交渉に入ったという。

千代田もハイドライド法で水素を運ぶ技術を開発したが、下の表のように変換効率ではLNGとアンモニアに勝るものはないのだ。水素液化やハライド法など効 率が悪い。日本着のLNGが高いのは原油スライドというバカげた契約のせいだ。水素にしたところで、発熱量で原油スライド制にされたら意味はない。ただ褐 炭のようにすぐ燃え出して運べないものは水素にして輸送することには意味があるかもしれない。有機ケミカルハイドライドと運べない豪州炭の組み合わせはいいかもしれない。

LNG/天然ガス:95%
電解水素/電力: 76%
水素/メタン:80%
アンモニア/メタン:81.4%
液体水素/水素:61%
アンモニア/水素:89.2%
液体アンモニア/水素:75.1%
水素/水素(非熱回収型有機ケミカルハイドライド):54.1%
水素/水素(熱回収型有機ケミカルハイドライド):72.1%

トヨタやホンダは2015年をめどに燃料電池車を1台500万円程度で販売するという。500万円じゃ物好きが買うだけで沢山は売れないなと思う。トヨタやホンダの燃料電池 は60%だなどと岡崎先生ははしゃいでいたが、市販予定の車載PEFC燃料電池の効率は44%だ。60%を達成したSOFCと混同しているのでは。しかしSOFCは運転温度1,000℃で車に乗せられる代物ではな い。大学の先生にもいい加減な人が居る。

岡崎先生は人為的温暖化説は正しいと信じている様子。電気屋は頭が固く、水素という人は大体電気屋だそうだ。

February 27, 2014

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