NGO「寸草心」日中環境ビジネス促進会

NGO「寸草心」日中環境ビジネス促進会代表の陸宇暉さんから北京天恒可持続発展研究所所長の陳青氏の講演会を開催するので参加しないかとリサイク ル事業をいとなむ友人の西沢氏に声がかかり、グリーンウッド氏も興味があるので一緒に参加させてもらった。会場は中央線武蔵堺駅近くの亜細亜大学だとい う。初めてのところだ。江ノ電、小田急線、南武線、武蔵線、中央線、タクシーを乗り継いで2時間半かかって到着。

陸さんは亜細亜大学の修士課程の学生さんで、指導教官は亜細亜環境問題研究会会長をしている大江宏教授だ。教授の挨拶のあと北京から着いたばかりという陳氏の講演がはじまった。パワーポイントのプレゼンテーション資料と陸さんの通訳つきである。

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亜細亜大学の会場

北京天恒可持続発展研究所所長は博士、修士、学士からなる10人の組織で政府援助なしに自活している組織とのこと。講演と質疑応答をまとめて要点を以下に整理した。

いままでは北朝鮮、ミヤンマー、雲南省、湖南省で農村に家畜、生活排泄物のメタン発酵設備を作り、炊事用のガス燃料を自給するプロジェクトの建設法 指導、資金融資の仕組み作りの指導をして成果をあげてきた。資金は中国政府の一時金支援を融資に切り替えて少ない資金を何倍にもすることを提案して成果を あげた。海外からの資金援助は米国、英国、およびトヨタ財団などがある。

メタン発酵設備は地下にレンガとセメントを使って円筒ドーム状の発酵槽を作り、ガスは水封式ガスホルダーに一時蓄えてつかっている。すべて農民が自 作可能な技術を使う。メタン発酵槽に溜まるスラッジは肥料として畑にリサイクルしている。このスラッジを発酵槽から取り出す方法として資金のない場合はバ ケツくみ出し、手動往復動ポンプ、資金のある人は電動ポンプを使っている。バケツくみ出し方式では20年や30年前は知識不足もあって酸欠事故、爆発事故 も生じたこともあったが、今はない。

メタンガスの炊事用への利用は利便性が高く、人気があり、この方式は広く普及しているが、藁、モミなどバイオマスのカマドへの利用は不便、汚い、疲 れるなどの理由で使うことが少なくなった。オシン時代は過去のものとなったようである。なぜかバイオマスはコンポスト化もされず、無駄に野焼きされている ようである。

日本の援助で中国に建設した簡易排煙脱硫は各種3つあったがいずれも排煙中の硫黄酸化物を石灰を使って石膏として固定する装置である。脱硫率70% 位に性能を落とした要求仕様であった。(タイプによっては 運転条件を変えることで98%の脱硫率を達した)どこの工場に設置するかは中国の役所がきめたことで何を基準に選んだのか、わからない。もともと硫黄含有 量の少ない石炭を使用していて排脱を必要としていない化学工場のボイラーに設置されたものもあった。したがってデモ用にわざわざ高硫黄石炭を焚いて排脱の テストをおこなったものである。

3つのプラントの成果報告会では中国中から関係技術者が大勢集められ、初めて見る排煙脱硫に興味を持ったようでもあるし、多くの技術者が装置の見学 に来たようなので充分に技術の普及には役だったと思われる。副産する石膏倉庫も作りしばらく生産したようだ。ただ石炭を低硫黄に切り替えたほうがコストが かからないため、使用されなくなったものもあったようだ。これを知った日本の新聞が日本の援助は無駄だ。折角の援助が無駄になっていると書いたため、日本 国内で問題になった。汚水処理施設をフリッピンに援助したがフィリッピン側の工事分担の下水道が完成ぜす無駄になっていると報道されたのと同じことであ る。日本の援助がちぐはぐであるのは昔からかわらない。

それではということで石炭にモミガラやワラを混ぜてタドン(炭団)を製造する技術を中国におしえたと日本の外務省の外郭研究所の方は自我自賛してお られた。そもそもタドン、豆炭、練炭は江戸時代から使われていた木炭粉末の有効利用法である。第二次大戦中盛んに使われた。低硫黄の石炭・無煙炭・木炭・ 亜炭・亜炭の一種であるコーライトなどの粉末をまぜ、布海苔汁(ふのりじる)、粘土などの粘着剤で固めたものである。

石灰粉を混ぜれば硫黄を含んだ石炭でも硫黄が無水亜硫酸石膏(CaSO3)や無水石膏(CaSO4)として固定できるので排ガスにはでてこない。た だ石灰粉の反応率は70%にも達しないといわれているので過剰に混ぜておかなばならない。モミやワラを混ぜただけではバイオマス分だけ硫黄が減る以上の脱 硫効果はない。いずれにせよ石炭よりはコストが上がるので庶民がこれを買ってつかってくれるかはサイフの中味次第だ。

中国のタドンが石灰を混入しているかはわからない。陳氏はタドンが使われている事実を知っておられたが、それがどのくらいの量かは知らなかった。

このNGOが燃料電池開発の必要性のキャンペーンをおこない、中国最大の自動車会社である上海自動車→上海第一自動車グループが立ち上がって取り組み成功した。4輪自動車だけでなく、燃料電池搭載自転車やスクーターも開発した。

風力発電に関しては国民の環境意識をたかめ、グリーン電力にプレミアム費を払うように仕向ける中央テレビの教育番組作成に協力している。そしてプレミアム費還元の仕組み作りをして準備は完了している。

今後は中国政府の「退耕還林」政策にそい、石炭のかわりに木質燃料を使ったBTG発電をすることを企画している。20万ム〜50万ム(1ヘクタール は15ムですので、ヘクタールに換算すると、1.5万ヘクタールから3.5万ヘクタール)の土地に植林し、これをサステなブルな伐採をしつつ発電する。炭 酸ガスクレジットも含め採算を確保する予定。(乞併読”広葉樹発電”)

最後に中国躍進の最新のデータが披露された。

石炭生産:16億トン/年

太陽熱利用温水器の1年間の設置面積増:1,000万m2 (使用中5,000万m2)

火力発電容量の年間増:2,000万kW

水力発電容量の年間増:8,500万kW

石炭生産が増えたのは環境からみてバッドニュース、水力発電は環境からみて判断はむずかしいが、この分、石炭消費が押さえられたので短期的にはグッ ドニュースである。石油輸入量が日本のそれを追い越したことは中国の人口を考えてもらえれば、ゆるしていただけるとおもうとのことであった。

今年の中国の石炭生産量16億トン/年 は史上最大量だという。それにしても日本海沿岸の日本の諸都市の硫黄公害の報道は最近聞かない。どういうことか訝って、排煙脱硫装置の中国での受注状況を 調べたら今年、とあるライセンサーのプロセスは台山(600MW×5)、淮陰(330MW×2)の7基受注とのことである。中国は経済力がつくにしたが い、着々と手は打っているようである。

1970年代の石油価格高騰はOPECにより人為的に作られたものだが、中国がこのまま経済成長を続ければ、一過性ではなく、本物の持続的石油価格 の高騰が近い将来に到来するかもしれないとリーンウッド氏は考えている。環境問題ともあいまって化石燃料から代替エネルギーへの転換は意外にはやく迫られ ると予感している。この根拠はキャンベル氏の予測でpdf file (615kb)の6ページを参照してください。

散会後、教授と弟子達の親睦会にも参加させてもらって、有意義な時をすごさせてもらった。なかでも信州新町の田舎にも戦前メタン発酵槽があった。し かし家畜を飼っておらず、家族のし尿だけでは生産されるガスが少量で、ランプ燃料にしか使えなかったという小林煕直アジア研究所教授のなつかしい思い出話 も披露され、勉強になった。

以上陸宇暉さんの確認を得たものです。また会の後調査したことも付け加えています。

February 23, 2004

Rev. February 25, 2004


陸宇暉さんは卒業後、KOEという環境コンサルティング会社を設立し、日中の架け橋となって活躍されている。


January 2, 2013


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