総合知学会

2010

自律分散協調システム型文明のイメージと実現の課題

科学技術・生存システム研究所

神出瑞穂氏

 

神出氏が長年構想しておられた「文明の制御」が更に発展させられた。最近の朝日の天声人語で最近来日した仏経済哲学者のセルジュ・ラトーシュ氏の言葉を紹介していたが「私が成長に反対するのはいくら経済が成長しても人々を幸せにしないからだ。成長のための成長が目的化され、無駄な消費が強いられている」と言う。科学技術については、今回、神出氏が指摘したように、物質的豊かさと引き換えに環境問題や、資源の制約を顕在化した。

科学技術は人間の欲望に限りなくエスカレートし、その急速な進展に人類が適応できるか20世紀は実験の時代で功罪相中端している状況である。神出氏も同じように、マネーカルチャーにどっぷりつかった世界や無差別に応用を急ぐ科学技術の在り方に欲望を制御する仕組みを考えておられるようだ。21世紀の文明は、20世紀の実験を踏まえて、より人間の豊さに貢献するものになってほしいものである。

尚、文明や社会のように巨大なシステムを望ましい振る舞いをさせるよう制御を試みる場合は、ホメオスタシス等の自律的な制御メカニズムを採用しない限り、実現できないみたいだ。巨大な石油精製プラントのような複雑なシステムでも、ホメオスタシスを応用した簡単なフィードバック制御を沢山並べるだけで半世紀以上前から応用され円滑に制御されている。その意味で、ホメオスタシスは第一レベルのシステムと言われるが、非常に役立つ局面がある。第二レベルのシステムと言われるI.ブリゴジンの散逸構造の自己組織化は、エネルギー・物質の流入のある系では秩序が生成することが見られ、物理現象やシステム・バイオロジーなど生物の挙動の物理的な面を説明するには十分みたいである。第三レベルのシステム論と言われるオートポイエーシスについては、細胞が再生したり生物が生殖するプロセスは自己参照的な面を取り上げている。このような現象は、社会や言語、文化、経済、政治についても現れるので文明の制御には面白いヒントがあるのかもしれない。社会を調節を含めたコミュニケーションの総体と考えるので、共同体と利益社会の対比などはよく言及されるみたいだ。

August 13, 2010


トップページへ