電動バイクの駆動系についての考察

電動バイクの駆動系には通常永久磁石式同期電動機を使うため、モーターと後輪はベルトドライブで連結されている。モーターは回転子が永久磁石で、周りに回転磁界を作るコイルが固定されている形式である。

これに対し、ダイレクトドライブ(DD)という形式はシャフトに回転磁界を作るコイルを固定し、周りに回転する永久磁石を置き、これに車輪を直接付ける方式である。アウタロータ構造とも呼ばれる。日本R&Dの坂下善行氏の話ではDDは電気自動車には採用されているが、バイクの場合は下記理由で市販のガソリンエンジンバイクを改造するだけのベルトドライブ方式を採用しているそうである。

(1)変速機構なしで、段差を越えるなどのトルクを確保するにはモータを大きくしなければならず、重量が増し、バネ下重量が重くなり、操縦安定性、乗心地に悪影響を与える。

(2)モータ自身の耐振性能も要求される。

(3)バイクのサスペンションブ、レーキ、ホイールも新規に開発しなければならない。

坂下善行氏は新素材が出てくればDDが当たり前になるだろうという。例えば永久磁石のアルニコ磁石→サマリウムコバルト磁石→ネオジウム鉄磁石は大体20年周期で世に出てきており、ネオジ磁石も実用化して大体20年になるので、そろそろ次世代磁石が登場してもおかしくないそうである。

そういえばパソコンのハードディスクのボイスコイル・モーターはイットリウムやスカンジウムなどの希土類で作られた永久磁石を使っているという。一般のフェライト磁石より強力だそうである。電動車にも使われるようになるのだろうか。

鉄芯素材も、従来のケイ素鋼板の積層と異なる燒結系のものも出始めているし、鉄鋼メーカもケイ素鋼板の性能の向上、コストの低減に力を入れているそうである。特に国内鉄鋼メーカは高張力鋼板や電磁鋼板のような付加価値の高い素材に照準を絞っているので、こちらについても期待されるとのこと。

グリーンウッド氏は新素材が出なくとも、小型DDを2輪駆動バイクに使ったら、バネ下重量が増さずに済み、かつ付加価値が増してかえって売れるかもしれないとも思う。カーブを曲がる時の前輪・後輪の回転差がでないように、ヒンジは両輪の中間に置くことになるのだろうか?

またバネ下重量を増さないためにディスクブレーキのディスクのようなものに磁石をつけて、回転磁界を発生させるデバイスはディスクブレーキのブレーキパッドのように作り、これを車体の方に固定する。こうするとリニアモーターの原理のように駆動力がディスクに発生する。路面によって車輪が上下動を繰り返すと磁場がダンパーのように働いてくれるのではという面白いことも生じる。通常のモーターでは容易な永久磁石とコイルの間隔を狭く保持することが困難になるので新規な機構を開発する必要があるだろう。

電動バイクという新しい概念の車がでてくるとデザインが落ち着くまでいろいろなアイディアが試されるのであろう。米国の”ジンジャー”など少し奇抜すぎるが、新しい発想を試すには専門家が縦の組織にこもっていては難しいのではないか。プロジェクト組織で取り組まねば前にすすまないであろう。コストはどうしても始めはかかるが練れてくれば下がるものである。

December 30, 2002

Rev. January 8, 2003


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