ホートンによれば地球表面の有効温度Teは 太陽光放射と赤外放射の平衡で求められます。
4pa2sTe4=pa2(1-A)F/R2
ここでステファン・ボルツマン定数s=2p5k4/(15c2h3)=5.67x10-8 W/(m2K4)
太陽からの距離R=1(天文単位)における地球の半径a
全球平均反射率(アルベド)A=0.3
太陽フラックス(太陽定数)F=1,369 W/m2 or J/sm2
から
Te=((1-A)F/4s)1/4=(0.7*1369/(4*5.67)1/4*102=255K=-18°C
この有効温度Teとは地表放射の平均温度とみなせます。
<太陽光放射>
太陽光放射は人工衛星ACRIM(Active cavity Radiometer Irradiance Monitor)が測定した太陽定数測定値はほぼ11年周期的で変動します。これは黒点周期と一致しております。そして太陽定数(太陽フラックス )F=1,369W/m2とされています。地球の表面積は断面積の4倍ですから地球表面積当たりの太陽光放射は342W/m2と なります。
一方、太陽を黒体とすれば太陽表面での太陽放射BlSunは次ぎのプランク関数 で表現されます。
BlSun=(2hc2/l5)(1/(e(hc/lkT)-1))
ここでプランク定数h=6.626x10-34 Js
光速c=3x108m/s
ボルツマン定数k=1.38x10-23 J/K
自然対数の底e=2.718281
波長
2hc2=1.193x10-16 Jm2/s
hc/k=1.44x10-2 mK
黒体温度T=5,780K
太陽放射BlSunと 地球軌道での太陽光放射Blsunshineの 関係は次式が成立します。
Blsunshine=BlSun(RSun2/REarth's orbit2)=BlSun(1/2152)
ここでRSunは太陽の半径
REarth's orbitは地球軌道半径
太陽実効温度T=5,780Kでの地球軌道上での太陽光放射Blsunshineをl =0.0000001m-0.000003m(0.1-3mm)の範囲で描くと下図の紺色の曲線になりま す。オゾンや水蒸気が一部の波長帯を吸収しますので地表に到達する放射はピンク色のようになります。地表に到達しなくとも大気は加熱されるわけです。
太陽光放 射スペクトル分布Blsunshineと透過光 (ピンク色)
全方向太陽光放射πBsunshineは プランク関数を波長0.1-3mmに渡りエクセルで区分積分します。
πBsunshine=π∫Blsunshine dl
全波長に渡る全方向太陽光放射pBsunshineは 次ぎのステファン・ボルツマンの式で表示できます。πBsunshine= sT4(1/2152) (J/m2s or W/m2)
ここで
地球表面基準=地球断面基準/4
区分積分した結果をまとめますと下表のようになり ます。
バンド | 吸収ガス | 地球断面基準 (W/m2) | 地球表面基準 (W/m2) | 比率(%) |
紫外線(UV) | オゾン | 76 | 19.0 | 5.5 |
可視光他 | - | 1,133 | 283.3 | 82.8 |
赤外線(IR) | 水蒸気 | 160 | 40.0 | 11.7 |
pBsunshine | - | 1,369 | 342.3 | 100 |
受熱量の 内訳 紫外域(UV)、可視光域、赤外域(IR)の比率
IPCCと気象庁は太陽放射の変動幅は
0.1W/m2(0.03%、地表の受熱は342W/m2)だから温暖化の説明にはならず温室効果ガスが原因だとしています。確か
に可視光の変動幅は
0.1%です。しかし紫外線の変動幅は6-8%、紫外線より短波
長放射は紫外線の2倍以上、UVはオゾンを破壊する時、発熱します。太陽のフレアから流れ出る太
陽風は大気を加熱します。かてて加えて強い太陽の磁気シールドは15%程度宇宙線を遮ぎり、スベンスマルク効果で雲が消えて晴れ、アルベドが減少するなど
して気候変動の主因となっ
ています。こうして歴史上の小氷期は太陽放射の変化と説明できるのです。現在の地球モデルはこれらを正確に記述しているとは言えないもので
す。
2,000年以降は太陽活動が低下したため、入熱が不足してハイエイタス(hiatus 地
球全体の気温上昇の停滞状態)と呼ばれている現象を示し、15年間温暖化は停止したのですがIPCCモデルは2000年までの温暖化を温室ガスで説明するモデルを作成してしまったため、2,000年以降の寒冷
化を説明できない
で海洋の熱吸収説を持ち出してつじつま合わせをしています。
IPCC は完全に無視していますが、1930-1940年代も温暖化していたのです。私が生まれるまえですから覚えているはずもありません。まだ人口衛星で測定は していませんでしたが気温は高かった。下図のようなICECAPの JosephD’Aleoの1905-2000年 にわたる回帰分析では黒点活動と気温は1930-1940年代もそして1970-2000年の温暖化とも一致します。
<大気が透明としたときの地球放射>
さて地表に達した太陽光放射は地表を暖めます。暖め られた地表はプランク関数に従う黒体放射スペクトル分布BλEarth(J/m3s or W/m3)となります。
スペクトル分布を波長2mmから100mmに渡ってプランク関数をエ ク セルで区分積分すると全方向地球放射BEarthが得られます。
πBEarth=π∫BλEarth dλ (J/m2s or W/m2)
全波長に渡る全方向地球放射πBEarthは プランク関数を全波長にわたり積分したステファン・ボルツマンの式でも表示できます。
πBEarth=sTe4 (J/m2s or W/m2)
BλEarthをλ=0.000002m(2mm)から 0.00003m (30mm) まで地球放射面温度T=325K(紺色), 300K(ピンク), 275K(黄色), 250K(空色), 220K(紫色)についてプロットすると下図の地球放射のスペクトル分布BlEarthのようになりま す。
<地球大気は窒素と酸素だけならなる透明ガスとし、地 球の有効温度Te(地表放射の平均温度)を255oKとし、地表は黒体とすれば地球放射スペクトル分布は下 図の褐色の曲線になります。
大気が透明としたときの地球放射スペクトル分布
<大 気に グレーガスを含む地球放射>
下図は1970年に打ち上げら れた気象観測衛星ニンバス4号がサハラ砂 漠上空、地中海上空、南極上空で測定した地球放射スペクトル分布です。横軸の目盛りは波数 (cm-1)で0.0025cm (25mm)から 0.00067cm(6.7mm)の範囲です。 それぞれのグレーガスはそのガスが到達できる高度で宇宙に向けて放射していることが見て取れます。
対流圏の高度は緯度によって異なりますが平均14kmです。実測値を整理 してInternational Civil Aviation Organization (ICAO)では高度、気圧、気温のモデル式を次のような指数関数で表示しております。
P=P0((T0-L*H)/T0)g0M/(R*L)
ここで地表の気圧 P0=101.3 (kPa)
地表の温度 T0=288.15 (K)
高度 H (m)
ガス定数 R=8.31432 (J/K/mol)
地表における重力の加速度 g0=9.80665 (m/s2)
地表の大気の平均分子量 M=0.0289644 (kg/mol)
対流圏の鉛直方向の温度勾配で気温減率 (Temperature Laps Rate) L
H<11kmではL=0.0065 (K/m)
20km>H>11kmではL=0 (K/m)
g0M/(R*L)=5.25588
この式で高 度15km まで計算した気圧と気温は下図のようになります。ピンクが温度、 紺色は気圧です。成層圏では温度勾配が逆になります。
<ニンバスの観測値にならい地表とそれぞれのグレーガス(赤外放射吸収ガス)の 平均放射温度を地表(288K)、水蒸気(270K)、オゾン(250K)、メタン(250K)、炭酸ガス(216K)の 温度で放射する時の合成スペクトル分布Bl Earthを下図の褐色の曲線で示しました。
地球放射のスペクトル分布BlEarth
この地球放射の茶色の線で囲まれる領域をエクセルで区分積分した結果は下表のようになります。
平均放射温度(°K) |
地球表面基準 (W/m2) | 比率(%) | |
大気の窓を通過する地表放射 | 288 | 94.8 | 39.5 |
水蒸気 | 270 | 119.8 | 50.0 |
二酸化炭素 | 216 | 18.1 | 7.5 |
メタン | 250 | 2.7 | 1.1 |
オゾン | 250 | 4.4 | 1.8 |
pBEarth= sTe4 (Te=255K) | 255 | 239.7 | 100 |
地球放射の比率
有効温度Te=255°K=-18°Cと地表の温度288K(15oC) と比較して33oCも低いことを大気物理学では大気のグリーンハウス効果と呼んでいます。これは地球は昼夜を平均すれば平均放射温 度-18°Cで輝いているということを意味します。
直接地表から宇宙に放射されています。そしてメタン、オゾンがその 上層で2.9%、炭酸ガスは最上層で7.5%の放熱を担ってお ります。 真鍋博士は米国 気象庁勤務のとき、対流圏の二酸化炭素濃 度も増えると二酸化炭素分子の数が増えると宇宙への放熱量が増えて成層圏の温度がさ がってしまう。そこで対流圏の温度が高温側にシフトすると考えました。 すなわち温暖化すると考えて「鉛直1次元放射対流モデル」を作成しIPCCのモデルの原型となりました。1)
Gerhard
GerlichはIPCCモデルは二酸化炭素と大気との熱伝導を無視していると批判しています。2)
実際にはモデル化しているようですが、地球は巨大で、分子は小さく数値計算もでるではどだいもデル化には無理があります。
IPCCは黙っていますが1930-1940年代も温暖化していたのです。そのときはまだ第二次大戦のまえ で二酸化炭素 の放出は低レベルだったのです。ICECAPの JosephD’Aleoによる1905-2000年の二酸化炭素濃度と気温の相関関係を回帰分析しますと下図のように1970-2000年はほぼ一致し ていますが、 1930-1940年代の相関は相当弱いのです。人為的温暖化説はかなり分が悪い ことが分かります。
<海洋の熱塩循環流の振動による海洋
の蓄熱と放
熱>
ではなぜ1970-2000年まで温暖化したかといえば、一つには太陽放射の増加、そしてなによりも
太西洋数十年規模振動AMO+太平洋十年規模振動PDOなどの熱塩循環流thermohaline
circulationの振動により海洋に蓄熱されていた熱が急激に放出されたためか、
グリーンランド周辺の微妙な水温の振動が海洋の対流に影響を与え、
地球全体のアルベドの振動現象へと波及してゆくためとも考えられます。このような1975年からの温暖化を二酸化炭素による人為的温暖化と混同したのかも
しれません。もう少し観察していればどちらが正しいかわかるでしょう。
ICECAPの Joseph D’Aleoによる1905
-2000年の太西洋数十年規模振動Atlantic Multidecadal Oscillation AMO+太平洋十年規模振動Pacific
Decadal Oscillation PDOの変動と気温の回帰分析によれば1930-1940年の温暖化と1970-
2000年までの温暖化と一致し、下図のように一番強い相関を示します。
Factor | Years | Correlation (Pearson Coefficient) | Correlation Strength (R-squared) |
Carbon Dioxide | 1895-2007 | 0.66 | 0.43 |
Total Solar Irradiance | 1900-2004 | 0.76 | 0.57 |
Ocean Warming Index (PDO and AMO) | 1900-2007 | 0.92 | 0.85 |
Carbon Dioxide Last Decade (hiatus) | 1998-2007 | -0.14 | 0.02 |