シリアル番号 | 表題 | 日付 |
972 |
登山の熱効率 |
2005/07/17 |
万歩計をつけて1日1万歩歩いても平地をあるくのと坂をのぼるのとでは必要エネルギーに大差がでると友人のまえじま氏が指摘して下記計算を送ってきた。
●v=1044[m/h]=0.29[m/s]の速度で水平運動するエネルギ−はE1=(1/2)*m*v2=(1/2)*(70)*(0.29)2=2.9435[J]
毎秒この運動エネルギーが消費されて補ってやらねばならぬと仮定すると1時間当たりではE1=10.6[kJ]
●質量70kgの人が、標高差300m、斜面距離1044m(勾配17度)を1時間で登ったとすると、位置エネルギ−は E2=m*g*h=(70)*(9.8)*(300)=205800[J]=205.8[kJ]
●水平運動と位置のエネルギーを合計した全体のエネルギ−は E1+E2=10.6+205.8=216.4[kJ]=51.8[Kcal/h]
運動エネルギ−が4.9%、標高差を稼ぐ位置エネルギ−が95.1%との計算結果になる。
むろんこれは生物学的効率は考慮してない。そこでまえじま氏は科学技術庁資源調査会編:四訂・食品成分表(1997)pp432-433[表II-12]に出ているデ−タから各種運動に対しての70kg男性の1時間当たりエネルギ-消費量を計算してみた。
日常生活活動と運動の種類 |
Es[kcal/kg-min] |
E[kcal/h]@70kg男 |
睡眠 | 0.017 | 71.4 |
自動車の運転 | 0.029 | 121.8 |
机上事務 | 0.03 | 126 |
ゆっくりとした歩行(買物、散歩) | 0.046 | 193.2 |
サイクリング(時速10km) | 0.08 | 336 |
ハイキング(平地) | 0.073 | 306.6 |
ハイキング(山地) | 0.1 | 420 |
ジョギング(120m/分) | 0.126 | 529.2 |
登山(登り) | 0.161 | 676.2 |
登山(下り) | 0.108 | 453.6 |
水泳(平泳ぎ、流す) | 0.197 | 827.4 |
水泳(クロ−ル) | 0.374 | 1570.8 |
登山(登り) の生物学的熱効率を計算すると、(51.8)/(676.2)=0.0766すなわち7.7%と蒸気機関にも劣る。
サイクリングは二足歩行を回転運動に変えるので効率が上がる。ハイキング(平地)
で306.6[Kcal/h]、時速4[km]とすると、1Kmあたり、(306.6)/(4)=76.7[Kcal/Km]、これに対してサイクリング(時速10km)は336[Kcal/h]、1Kmあたり33.6[Kcal/Km]で歩行の半分以下のエネルギ−で移動できる事が分かる。
ところで上の表は角田朋司著「百名山登頂ドクターの 山歩き健康法」の動作強度=エネルギー消費と同じものと思える。
さてこのまえじまモデルをグリーンウッド氏が改良したグリーンウッドモデルは登山と巡礼のエネルギー考察に紹介する。