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517

深層水

2001/6/6

水深200メートルに達すると光が届かないので光合成が出来ず、海水中の無機塩類、窒素・リン等の栄養分は植物プランクトンによって消費されず濃度が高くなる。良い漁場となっているところはたいてい対流により深層水が湧き上がっているところである。そこでこの深層水をポンプで汲み上げて植物プランクトンを増やせば、食物連鎖を通じて漁業を振興させることができるのではと相模湾などで実験されようとしている。

アサヒビールが深層水を使ったビールを売り出し虚偽の宣伝と競争会社に訴えられている。発酵も微生物の増殖作用の有効利用なので無機塩類は栄養素となる。しかし無機塩類中のナトリウムイオンが過剰であるため、発酵助剤としての添加量は多くできないので 誇大広告であるといわれてもやむをえないであろう。

発酵助剤として大量に使うためにはナトリウムイオンを逆浸透(RO)膜分離などで除かなければならない。しかし知られているRO膜は真水を透過させるもので塩類は全て透過できない。

深層水と健康飲料として販売されている硬水は泉水または脱塩水に深層海水を少量ブレンドしてNa、Ca、Mg含有量を調整したものである。

さて膜分離は原理的にはイオン半径の違いで分離するものである。イオン半径は同じ周期なら、価数の増加とともに小さくなる。NaよりMg、Alと小さくなる。また、また第2周期(Li)の法が、Na周期(第3周期)より小さい。変わって,Naよりイオン半径が大きいのは、第4周期(K)、第5周期(Rb)である。海水組成は、Na>Mg>Ca の順である。先に述べたように、MgはNaより、小さく、Caは周期が一つ上なので、大きくなるが、イオンが 2価なので、小さくなって結局 Na=Ca の大きさとなる。したがって深層水からナトリウムイオンを除く膜を設計するにしてもリチウム、マグネシウムイオンは通過させることはできてもカルシウムや価数の低い重いイオンも除かれてしまう。原理的にそのような膜の設計は不可能では?

さて地球温暖化で海面表層の温度が上昇すると、深層水は表層に対流しなり、また北極海で冷却された海水が北大西洋の深海に滝のように流れ込むことによって駆動される海水の大循環も停止するかもしれない。そうすると魚のいる表層は無機塩類、窒素・リン等が欠乏し、漁業資源は枯渇する。

Rev. September 03, 2007


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