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シリアル番号 表題 日付

271

コレステロール

98/3/21


今日では、先進国における全死亡の約25%は冠動脈心疾患に起因する。しかし血中コレステロール値をその原因とするのは間違いとわかってきた。相関関係は 複雑で、いまだわからにことだらけ。多分原因はほかにある。血中コレステロールが簡単に測定できる体制が整備されたがゆえに意味のない相関関係説が輻輳し て混乱状態にあるといってよい。コレステロール降下剤など副作用の害のほうが大きい。

1998年に 間違った知識を振りまいたNHK TVの番組で宣伝されたことと、現在わかっていることを対比すると

●コレステロールは飽和脂肪酸の一種:動物性の脂肪に多く含まれる。動脈硬化の原因となる・・・これは誤り。正しくはコレステロール (cholesterol) とは、ステロイドに分類され、その中でもステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種である。ステロールはヒドロキシ基のついた1個の六員 環に2 個の六員環と1個の五員環がつらなっている化合物。コレステロールはこのステロールの五員環に炭素4個程度の非環の尻尾の先にカルボキシル基を持つ。コレ ステロール分子自体は、動物細胞にとっては生体膜の構成物質であったり、さまざまな生命現象に関わる重要な化合物である。肝臓でスクワレンから生合成され る。スクワレンはトリテルペンに属する油脂である。コレステロールは食物由来ではなく、ほとんどは肝臓で生合成される。そして少ないながら食物由来コレス テロールのほとんどは動物性食 品に由来する。たとえば卵黄。植物性食品(亜麻仁種子やピーナッツ)には、コレステロール類似化合物のフィトステロールが含まれ、血漿中のコレステロール 量を下げるとされている。

●1985年、ノーベル賞学者のマイケル・ブラウンとジョセフ・ゴールドスタインが扉理論をだした・・・この説も現在では意味がないと否定されている

●コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)がある・・・この説も否定された。善と悪という区別はなく水に不溶なコレステロールを血漿中に 流すためにコレステロールとリポ・タンパク質がつくる複合体の球状粒子である。医者が患者に対してコレステロールの健康上の懸念が ある場合には、悪玉コレステロール(LDLコレステロール:low density lipoprotein cholesterol、いわゆるbad cholesterol)の危険性を訴える。一方、悪玉コレステロールの対極には善玉コレステロール(HDLコレステロール:high density lipoprotein cholesterol、いわゆるgood cholesterol)が存在する。この両者の違いはコレステロールを体内輸送する際における、コレステロールと複合体となったリポタンパク質の種類に よ るものであり、コレステロール分子自体の違いではない。

●コレステロールは必須脂肪酸である・・・これは完全な間違い。コレステロールはステロイドで末端にカルボキシル基をもつため脂肪酸ににている。

●コレステロールの不足分は肝臓や細胞中で作られる・・・これは正しい。コレステロールは生体内の代謝過程において主要な役割を果たしている。まず多くの動物でステ ロイド合成の出発物質となっている。また動物細胞においては、脂質二重層構造を持つ生体膜(細胞膜)の重要な構成物質である。人間では肝臓および皮膚で生 合成される。肝臓で合成されたコレステロールは脂肪酸エステル体に変換され、血液中をリポタンパク質と複合体を作って全身に輸送される。

●摂取量が増えるとまず、肝臓での製造量が押さえられる・・・これは正しい

●細胞に取り込まれすぎると、当然細胞中の製造量もとまる。そして細胞膜も扉も閉じられる。残りは血管中に残り、血管の外にあふれた悪玉コレステロールを マクロファージが食べ過ぎて死んだものが、動脈硬化の原因となる。・・・アテローム性動脈硬化は、脂質異常症や糖尿病、高血圧、喫煙、運動不足などの危険 因子により生じると考えられ、最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす原因と なる。ただし脂質降下薬(特にLDLコレステロール低下作用のあるスタチン系)は副作用の害がわかってきた。日 本の製薬会社の三共が、初めてスタチンとして知られているコレステロール降下薬群を開発したのは1976年。それらの薬剤群は、HMG-CoA還元酵素の 細胞産生を阻害することによって作用する。しかし、1987年までは、スタチンの最初の人体への使用(メルク社のメバコール)は承認されなかった。スタチ ンが細胞のコレステロールフィードバック機構を調節することは分かってはいたものの、その機序が解明されていなかったから・・・このスタチンを服用すると ウツになる副作用がでることがある

2015年になりNHKなどにより広く流布していた本コレステロール悪玉論とこれに従う医療はほぼ完全に否定された。しかしいぜんとして古い知識しかない医者がおおいので注意が必要。

●2017/7/11 慶応大の佐野元昭准教授らによるマウスの実験によれば、食べ過ぎや運動不足が原因で内臓脂肪型肥満になると、免疫細胞のT細胞が老化して免疫機能が低下 し、炎症を引き起こすオステオポンチンOsteopontinという骨の強度や免疫にかかわるたんぱく質を大量に生み出すことがわかった。これが糖尿病や 高血圧などの生活習慣病というわけだ。従来の説では内臓脂肪型肥満は血管内部にコレステロールが蓄積しているので飽和脂肪酸リッチの食事がいけないとされ た。しかしこれはコレステロールの蓄積という結果から短絡的に脂肪が悪者と想像されただけの間違った対処法である。メカニズムはもっと複雑である。内臓脂 肪型肥満にならないためには日本の医学界が推奨する糖質+カロリー制限法では全く意味が無く、糖質でエネルギーを得る方式から脂質でエネルギーを得るケト ン型エネルギーサイクルに食事変換しないと、内臓脂肪型肥満はなくならず、オステオポンチンが増えたままで、寿命は短くなる。また脂質も動物性飽和脂肪酸 がいけないのでオリーブ油にせよなども無意味な対処法である。

Book1243参照

Rev. 2017/7/12


以下、100年の過誤の歴史

1910年にドイツの化学者、アドルフ・ヴィンダウス( Adolf Windaus) はコレステロールがアテローム性動脈硬化プラーク塊の形成を促進する傾向を示す最初のヒントを発見

Rev. 2016/4/5


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