シリアル番号 | 表題 | 日付 |
271 |
コレステロール |
98/3/21 |
●コレステロールは飽和脂肪酸の一種:動物性の脂肪に多く含まれる。動脈硬化の原因となる・・・これは誤り。正しくはコレステロール (cholesterol) とは、ステロイドに分類され、その中でもステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種である。ステロールはヒドロキシ基のついた1個の六員 環に2 個の六員環と1個の五員環がつらなっている化合物。コレステロールはこのステロールの五員環に炭素4個程度の非環の尻尾の先にカルボキシル基を持つ。コレ ステロール分子自体は、動物細胞にとっては生体膜の構成物質であったり、さまざまな生命現象に関わる重要な化合物である。肝臓でスクワレンから生合成され る。スクワレンはトリテルペンに属する油脂である。コレステロールは食物由来ではなく、ほとんどは肝臓で生合成される。そして少ないながら食物由来コレス テロールのほとんどは動物性食 品に由来する。たとえば卵黄。植物性食品(亜麻仁種子やピーナッツ)には、コレステロール類似化合物のフィトステロールが含まれ、血漿中のコレステロール 量を下げるとされている。
●1985年、ノーベル賞学者のマイケル・ブラウンとジョセフ・ゴールドスタインが扉理論をだした・・・この説も現在では意味がないと否定されている
●コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)がある・・・この説も否定された。善と悪という区別はなく水に不溶なコレステロールを血漿中に 流すためにコレステロールとリポ・タンパク質がつくる複合体の球状粒子である。医者が患者に対してコレステロールの健康上の懸念が ある場合には、悪玉コレステロール(LDLコレステロール:low density lipoprotein cholesterol、いわゆるbad cholesterol)の危険性を訴える。一方、悪玉コレステロールの対極には善玉コレステロール(HDLコレステロール:high density lipoprotein cholesterol、いわゆるgood cholesterol)が存在する。この両者の違いはコレステロールを体内輸送する際における、コレステロールと複合体となったリポタンパク質の種類に よ るものであり、コレステロール分子自体の違いではない。
●コレステロールは必須脂肪酸である・・・これは完全な間違い。コレステロールはステロイドで末端にカルボキシル基をもつため脂肪酸ににている。
●コレステロールの不足分は肝臓や細胞中で作られる・・・これは正しい。コレステロールは生体内の代謝過程において主要な役割を果たしている。まず多くの動物でステ ロイド合成の出発物質となっている。また動物細胞においては、脂質二重層構造を持つ生体膜(細胞膜)の重要な構成物質である。人間では肝臓および皮膚で生 合成される。肝臓で合成されたコレステロールは脂肪酸エステル体に変換され、血液中をリポタンパク質と複合体を作って全身に輸送される。
●摂取量が増えるとまず、肝臓での製造量が押さえられる・・・これは正しい
●細胞に取り込まれすぎると、当然細胞中の製造量もとまる。そして細胞膜も扉も閉じられる。残りは血管中に残り、血管の外にあふれた悪玉コレステロールを マクロファージが食べ過ぎて死んだものが、動脈硬化の原因となる。・・・アテローム性動脈硬化は、脂質異常症や糖尿病、高血圧、喫煙、運動不足などの危険 因子により生じると考えられ、最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす原因と なる。ただし脂質降下薬(特にLDLコレステロール低下作用のあるスタチン系)は副作用の害がわかってきた。日 本の製薬会社の三共が、初めてスタチンとして知られているコレステロール降下薬群を開発したのは1976年。それらの薬剤群は、HMG-CoA還元酵素の 細胞産生を阻害することによって作用する。しかし、1987年までは、スタチンの最初の人体への使用(メルク社のメバコール)は承認されなかった。スタチ ンが細胞のコレステロールフィードバック機構を調節することは分かってはいたものの、その機序が解明されていなかったから・・・このスタチンを服用すると ウツになる副作用がでることがある
2015年になりNHKなどにより広く流布していた本コレステロール悪玉論とこれに従う医療はほぼ完全に否定された。しかしいぜんとして古い知識しかない医者がおおいので注意が必要。Book1243参照
Rev. 2016/4/5