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1160

メカニズム・デザイン理論

2007/10/18

2007年のノーベル経済学賞は米ミネソタ大学のレオニード・ハーウィッツ名誉教授(90)、米プリンストン高等研究所のエリック・マスキン教授(56)、米シカゴ大学のロジャー・マイヤーソン教授(56)の3人。

アダム・スミス以来の経済学では、市場で個人や企業が自己の利益を最大化するよう競争すると、社会の利益も最大化するという考え方が基本になっている。しかし現実は情報の非対称性のためそうはならない。メカニズム・デザイン理論では完全な自由競争もなく、情報の格差も存在する現実社会で、どのような条件が必要かをゲーム理論 や情報の非対称性理論を基礎に分析している。

人間は状況に応じて不利益になるのを避けるために正直なことを言わないでおく傾向がある。現実の経済でいくつもの取引や交渉をするときにこのようなことがあまりにも頻繁にまかり通るとなれば深刻なことが起きる。メカニズムデザイン理論では、取引に参加する人たちができるだけ正確な情報をもとに取引できるようにするための工夫を生み出している。取引に参加する人々が最も納得がいくように価格つまりモノの値段が決まるにはどのような条件が必要かを探るための知恵と工夫、これがメカニズムデザイン理論のポイント。

メカニズムデザインとはあえて日本語に訳すと「制度設計」となる。

この理論は英国での電波割り当てオークションなどに応用されている。

しかし、市場のメカニズムが機能しないときの制度設計をいくらよくしても腐敗、情報隠匿、官製談合の主導など、政府が機能しない時どうしたらよいのか?政府機構デザイン理論が待たれる。

浜岡原発の運転差し止め訴訟のように高度に技術的な問題に関しては設計情報が公開されていないという情報非対称性のために原告側は危険であるという理由を立証することができない。便宜的に被告側に先に自己弁護させて、その論点をつくことしかできない。これでは被告側が 巧妙に自らの弱点に触れなければ、原告側は気がつかないという落とし穴に落ちる。今回、被告側は上下動に言及することなく、水平動だけで制御棒の挿入性が損なわれることはないという説明しかしていない。そうすると原告側は燃料集合体が 上下動で外れる可能性を指摘して被告側に反論させることに気がつかなかった。やむをえず原告側は被告がM8.5しか考えていない。M9もあるのではないかと、マグニチュード論争しかできなかった。この点は学会の大権威の一言でつぶされてしまった。残念なことに震源距離の妥当性の論争もしていない。

Rev. October 29, 2007


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