読書録

シリアル番号 889

書名

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行

著者

ジム・ロジャーズ

出版社

日本経済新聞社

ジャンル

紀行文、ビジネス

発行日

2004/3/1第1刷
2006/3/28第5刷

購入日

2007/08/30

評価

原題:Investment Biker by Jim Rogers 1994

日経ビジネス文庫

ザ・ウィンザーホテル洞爺湖で購入。

著者はイェール大とオックスフォード大で歴史を学んだのち、ジョージ・ソロスとクオンタム・ファンドを設立。37才で引退し、世界中を旅して廻る。

ユーラシア大陸は東西往復、アフリカはアルジェからケープタウンまで縦に、オーストラリアはパースからメルボルンまで北岸をそして米大陸はホーン岬からアンカレッジまで縦に走行したのだ。

訪れる国毎にその国の歴史と経済に関しコメントが続く。目からウロコという感じで、一読を奨める。世界を正しく理解できるようになること請け合い。

旅はアイルランド西端のダンキンという町から始まる。アイルランドはいまだに観光事業と牧草地だけの国で鄙びたところだ。なぜならアイルランドは「国家統制主義」の被害者だからである。国家統制主義とは強力な中央集権主義政府によって経済が支配、決定されるものであり、さらに国家が社会問題のほとんど・・・健康、自然災害、貧困、職業訓練、傷ついた心の問題等々・・・・あるいはすべてを解決するのに最も適した機構であるという妄想だ。国家統制主義は共産主義や社会主義者、そして、多少ともその影響を受けた多くの民主国家にとっての20世紀の大いなる政治的な病である。

政府が担うべき機能は国防、警察、消防、航空、交通、建物の安全点検、食品検査、治水である。政府が繁栄と富を創出するのには長けていない。ソ連、 東ヨーロッパ、毛沢東の中国、アフリカ諸国のほとんど、中南米は生活必需品の価格統制をしたがゆえに、経済と産業を崩壊させてしまった。

発展途上国に対する援助も成功したためしがない。非援助国の政府が腐敗するからである。経済と産業が崩壊し混乱状態に陥った国を支援するという考えはかえってその国民を長く苦しませる。なるがままに崩壊させ、その国の人々が自力で国を立て直すのを静かに見守るのが正しい対処法であると著者はいう。 もし彼がブッシュのイラク侵攻について聞かれたら、おせっかいなことだ。米国の若者に無駄死にさせ、イラクの人々を苦しませるだけだというだろう。

ユーラシア大陸を横断して日本にたどりついて、氏は「21世紀には中国は最も資本主義的で、最も発展した、世界一豊かな国になるだろう。日本など忘れたほうがいい」と書いている。

日本が工業製品によって生きてきたのだがこのモデルは中国にとって代られるであろう。日本にもし活路があるとすれば、日本にある資本を多くの土地と資源があるシベリアに投下し、中国の労働力を使って富を生み出すということを考えることであろうという。ポール・クルーグマンも「グローバル経済を動かす愚かな人々」で地球は有限の惑星である。したがって有限の資源価格は急騰すると予想している。

また米国政府に関しても、「米国は世界最大の債務国だ。米国が問題を正すには非常な苦痛をともなう。もしこの大手術を延ばし延ばしにすれば、地獄が待っている」と。

経済学者のポール・クルーグマンが1990年に書いた「クルーグマン教授の経済学入門」は米国は債務問題を正す力も気力もなく10年はただただよっているだけだろう。2010年以降はしかしベビーブーム世代が引退して社会保障とメディケアにすごい負担をかけるようになるのでそれまでに政府の債務危機を手配しないと選択肢はなくなって本当の危機がくると言っている。

http://www.jimrogers.com/


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