読書録

シリアル番号 844

書名

老年について

著者

キケロー

出版社

岩波書店

ジャンル

哲学

発行日

2004/1/16第1刷
2004/6/25第4刷

購入日

2007/3/3

評価

鎌倉図書館蔵

キケロはカエサルと並ぶラテン語散文の名手であり、その完成者といわれる。その思想は当時ローマで主流だったストア哲学にローマの伝統的価値観を取り込ん だ折衷的なものとして知られる。キケロの思想を巡る歴史はそのままヨーロッパの思想史を説明することにもなるくらい後世のヨーロッパに影響を与えた。

本書は「大カトーまたは老年について」である。小スキピオとラエリウスが大カトーに質問し、大カトーがこれに答えるという問答様式で書かれている。

老人が惨めなものと思われる理由を4つ上げてそれを全て間違いだと論破することからはじめる。その4つとは

1)老年は公の活動から遠ざけられるから
2)老年は肉体を弱くするから
3)老年はほとんど全ての快楽を奪い去るから
4)老年は死から遠く離れていないから

最後に仮に我々は不死なるものになれないとしても、やはり人間はそれぞれふさわしい時に消え去るのが望ましい。自然は他のあらゆるものと同様、生き るということについても限度を持っているのだから。因みに、人生における老年は芝居における終幕のようなもの。そこでへとへとになることは避けなければな らない、とりわけ充分に味わい尽くした後ではな。

キケローはカエサルとポンペイウスの内乱ではポンペイウス側に身を投じるも、ポンペイウスがファルサロスの戦いで敗北するとカエサルにより許されることに なる。カエサル暗殺後にカエサルの後継者に座ろうとするマルクス・アントニウスに対抗するために当時は一平民だったオクタウィアヌスを政界に召喚しオクタ ウィアヌスの人気を後ろ盾に「ピリッピカ」と題する数次にわたるアントニウス弾劾演説を行う。しかしアントニウスとオクタウィアヌスの間に第二次三頭政治 が成立したことにより失脚。オクタウィアヌスがキケロを亡き者にしたいアントニウスの要求に屈したためにローマからの逃亡を図るものの、紀元前43年12 月7日、アントニウスの放った刺客により惨殺された。

本著が書かれた時期はカエサル暗殺の前だろうという。

解説にミムネルモスの詩が紹介されている。


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