読書録

シリアル番号 813

書名

ヘミングウェイ I 日はまた昇る

著者

アーネスト・ヘミングウェイ

出版社

新潮社

ジャンル

小説

発行日

1969/11/20発行
1995/4/25第8刷

購入日

2006/11/21

評価

鎌倉市図書館蔵

新潮世界文学43

パンプローナの牛追いの場面があるという「日はまた昇る」を読みたくて借りる。

高校生のある熱い夏休みの日に雑誌に掲載された「老人と海」を寝転がって一気に読破した経験があるがあれ以来、「誰がために鐘は鳴る」に続き彼の3つ目の小説ということになる。

「日はまた昇る」のタイトルは伝道之書の一節「世は去り世は来る 地は永遠(とこしえ)に長存(たもつ)なり 日は出(い)で日は入り またその出し処に喘ぎゆくなり」からとった。

解説にヘミングウェイの文才は母親ゆずりで姉にもその才は伝わったが、弟には伝わらなかったようだという。ヘミングウェイは小説の売り上げを全て次の作のための再投資に使って自ら体験したことを書いた。そのため読者はその報酬にあずかることになるという。

作者のコメントを表に出さず、ただ淡々とパリの街を詳細に描写し、バイヨンヌまでの汽車の旅、スペインの旅でみたコルク槲の林、バスクの荒涼とした土地、ブルゲートでの釣り、 イラチ川、ロンセスバーリェスの僧院そしてパンプローナを見たままに記述し、登場人物の行動のみを記述するだけで登場人物の心に浮かぶ感慨と心理を読者に想像させる手腕は心憎い。

去勢牛やピカドールの役割について解説がくわしく、闘牛に理解をもつようになるのは無論、ヘレス(スペイン語でシェリー)、アブサン、 アニス・デル・トロ(甘草の味のする牛のアニス酒、トロとは牛)、フンタドール、イザラというリキュール、ラム・パンチ、アグアルディエンテ(安ブランディー)、トレガというぶどう酒 など酒の銘柄にくわしくなる。

戦争で受けた傷がもとで性的不能になってパリで放埓な生活を送っていた主人公ジェイクの交友関係を詳細に追うだけのストーリーでどうして「日はまた昇る」なのか分からなかったが、パンプローナの サンフェルミン・フィエスタが終わった後、バイヨンヌにもどり、友人達と別れてひとり、主人公がサン・セバスチャンにいるとき、若き美男の闘牛士ペドロ・ロメロと駆落ちした 美貌のブレット・アシュレから一通の電報をもらいアヴィラ、エスコリアル経由でマドリッドまで彼女を救出に駆けつけることで納得。

堪能した。

2013/11再読。


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