読書録

シリアル番号 805

書名

死海文書の謎を解く

著者

ロバート・フェザー

出版社

講談社

ジャンル

歴史

発行日

2002/3/27第1刷

購入日

2006/11/1

評価

原題:The Copper Scroll Decoded by Robert Feather

鎌倉図書館蔵

バーバラ・スィーリングの「イエスのミステリー」は1947年クムラン洞窟で発見された死海文書(クムラン文書)を解読した新説で興味深く読んだ。死海文書には世界最古の旧約聖書が含まれ、ユダヤ教、キリスト教世界の宗教基盤を揺るがしかねない文書とされる。

本著はロンドン大卒の英国在住のユダヤ人冶金学者が死海文書のなかでも羊皮紙ではなく銅版に記した「銅の巻物」を解読したものである。

著者はユダヤの一神教はエジプト起源として創世記第12章に描かれたアブラハムその美貌の妻サラをみそめたファラオはアメンホテプ一世であるとして論を展開している。その子孫のアメンホテプ四世は多神教を廃して一神教とした。その時の宰相はアブラハムの子孫のヨセフである。しかしアメンホテプ四世は治世17年で死んでしまったため、ツタンカーメンの治世にエジプトは再び多神教にもどり、ユダヤの民は150年間エジプトに奴隷として幽閉されたが一神教はひそかに守ったとしている。ラメセス二世のころ 、モーゼがこのヘブライ奴隷の解放者となるのである。モーゼはエジプトの王子でシンドラーの役を果たしたというのである。

モーゼの援助で出エジプトを果たしたヘブライ人の一族が死海文書を残していずことも消えたクムラン・エッセネ派であったとする。そしてこの人々は本流のヘブライの人々とも少し教義がことなったため結局、エチオピアに落ち延び、そこで少数民族のヘブライ人となったという。DNA鑑定も後押ししているという。ちなみにイスラエルのラビの家系のY遺伝子は一般のイスラエル人とは異なり、エジプト人に近いという。

遊牧民の長だったアブラハムが重要視されるのは彼が遊牧をやめて定着することを決定したリーダーだったからだろうと、次のブロノフスキーの言葉を引用している。

「およそ一万年前、人間は氷河期を乗り越え何百万年も放浪を続けた末にようやく、一ヶ所に定住して生きていけるだけの条件を見出した。このとき、人間はきわめて重大な決断を迫られた。すなわち、遊牧の生活をやめ、村に定住するかどうかである。・・・この決断を下した人々の良心の葛藤の記録が今でも残っている。その記録とは聖書、旧約聖書である。文明化はこの決断にかかっていたと私は考える。転々と移動する生活では文明は育ち得ないことが理解できる」

Rev. November 19, 2006


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