読書録

シリアル番号 723

書名

石の扉 フリーメーソンで読み解く歴史

著者

加治将一

出版社

新潮社

ジャンル

歴史

発行日

2004/7/15発行

購入日

2005/11/25

評価

鎌倉図書館蔵

フリーメーソンをオカルトと混同するようなデタラメな本が多いなかで本書 は比較的まともなものと感じた。ただ本書でも著者の推察や仮説が多い。

日本では戦前にナチスの影響で弾圧されため未だにフリーメーソンのイメージは良くなく、またキリスト教的色彩があるため、会員は多くはないが、ロータリークラブ、プロバスクラブ、インターアクトクラブ、ライオンズクラブ、ボーイスカウトの原型のようなものだと理解すれば手っ取り早く理解できる。現存会員は本人が望まなければ会員であることは公表されず、ロッジという集会場で行われる毎月一回の会合の儀式をバラシたり、会員仲間だけに通ずる握手の仕方を会員外に教えてはいけないという規則があるため、秘密結社とされるが、陰謀を企てている組織ではなく、むしろ社会のためになろうという人々の集まりである。基本 教義は兄弟愛(brotherly love)、救済(philanthropy)、真実(truth) である。自由、平等、友愛、慈善、博愛、ノブレース・オブリージ精神を実践する団体のためである。非政治団体を標榜している。非宗教団体だが仏教徒でもよいが信仰心がなければメンバーに推挙されない。

元来 「特権を得た石工」の集まりだったものが、ゴシック建築が衰退して不要となって「実務的メーソン」(operative)が衰退し、非石工の「思索的メーソン」(speculative)の集まりに変化しているころ、イングランドと闘っていたスコットランドにフランス王フィリップ四世と教皇クレメンスによって潰されたテンプル騎士団の面々が落ち延びてスコットランドの独立に貢献する。このようにしてスコットランドのフリーメーソンにテンプル騎士団の影響が残った。

儀式が秘密にされるのは、独裁ということに対しては反対するフリーメーソンリーの思想がわかる儀式としてバチカンの法王の帽子とヨーロッパの王様の王冠を模した帽子を踏みつぶすことなどがあるからということもあるようだ が、秘密の儀式を共有するということそのものがメンバーに独特の世界観を植え付けるため必要とされるようである。

米国は国を作ったワシントン以下の政治家の殆どがフリーメーソンであったため今でも政治家、軍人、官僚、銀行家、弁護士、会計会社、ビジネスマン、スポーツマン、芸術家、文学者、映画産業の中心人物がフリーメーソンである。社会の上澄みの20%はメンバーという。メンバーになることがその職業にとってメリットがあるためである。世界に400万人のメンバーがいる。しかし日本人のメンバーは300人である。

日本にも沢山のロッジ(Masonic Lodge)があるが、かなりは米軍基地周辺にある。日本グランド・ロッジは旧海軍の親善組織であった水交社の跡地を戦後にロッジメンバーの浄財で買い取ったもので東京タワーの下にある東京メソニックセンターにある。

政治家:ジョージ・ワシントン、ベンジャミン・フランクリンの一ドル札、リンカーン、ウイリアム・マッキンリー、セオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルト、 ハリー・トルーマン、リンドン・ジョンソン、ジェラルド・フォード、ボブ・ドール、鳩山一郎、藤山一郎

官僚:アリソン大使、ハル

UN、WTO、WHO、IMF、EU、ASEAN、IEAなど国際機関の官僚にもメーソンがおおい。

企業創業者:メロン銀行のアンドリュー・メロン、自動車メーカーのヘンリー・フォードとウォルター・クライスラーとアンドレ・シトロエン、ヒルトンホテルのヒルトン氏、ジレット剃刀のジレット氏、ケンタッキーフライドチキンのサンダース氏、リプトンティーのリプトン氏、ダウケミカルのダウ氏、スタンフォード大のスタンフォード氏、 アラビア石油の山下太郎氏、ヤナセ自動車の梁瀬長太郎氏、帝国ホテルの犬丸徹三氏などがメンバーだった。

伊藤博文や井上馨ら倒幕の志士をサポートしたスコットランド出身のトーマス・グラバーが坂本竜馬の亀山社中をダミーにして薩長に武器を売ったのは有名であり、岩崎が三菱財閥となる過程でグラバー商会が果たした功績大。トーマス・グラバーはジャーディン・マセソン商会と取引していたなどの事実やグラバー邸にメーソンのマークのある石柱があったことからトーマス・グラバーがメーソンではなかったかと著者は推察している。しかしhttp://www.nfs.nias.ac.jp/page001.htmlによれれば

The Nagasaki Masonic Lodge was inaugurated at No. 50 Oura on October 5, 1885. The founding members were all British, but during the following years, men of various nationalities and religions became members and participated in regular meetings and social events. The lodge moved to a new building at No. 47 Oura in June 1887. The Freemasons contributed to the Nagasaki community until disbanding in the early Showa Period due to a lack of members. Today, the graves of several former Freemasons can be found in Nagasaki's international cemeteries, and the stone gate of the former lodge is preserved in Glover Garden.

とあるので、明治時代のものということになり、著者が推察するトーマス・グラバーとフリーメーソンの関係は証明できない。

軍人:日本に開国をせまったペリー提督、マッカーサー元帥、リッジウェー

会社のロゴでメーソンマークを使っている例:イースタン航空の東がそれ、プジョーの右手を天に突き出したライオン、フォートナム・メーソンの二人の男性の足

作家:トルストイ(非会員なるもシンパ)、ベートーヴェンの「第九」の一節、「喜びの歌」の詩を書いたドイツの代表的詩人シラー、コナン・ドイル、キプリング、マーク・トウェイン、アレクス・ヘイリー、ジョナサン・スィフト、ウォルター・スコット、エドワード・ギボン、カサノバ

音楽家:モーツアルト、ハイドン、リスト、シベリウス、ルイ・アームストロング、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ナット・キング・コール

映画産業:ワーナー・ブラザーズ、MGM、ウォルト・ディズニー、コロンビア・ピクチャーズ(現ソニー)の自由の女神像 となっている自由の女神像はフランスのフリーメーソンが米国に贈ったもの、セシルBデミル、ウィリアム・ワイラー、ジョン・ヒューストン、ジョン・ウェイン、クラーク・ゲーブル、ピーター・セラーズ

その他有名人:シャガール、コルト銃のサミュエル・コルト、リンドバーグ、デビー・クロケット、ペニシリンのフレミング、宇宙飛行士のジョン・グレン、アームストロング、ライオンズ・クラブ創設者メルビン・ジョーンズ


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